じゃあ、あなたが作ればいいじゃないですか

──「曇り空で」っていう抽象的なディレクションだけで、この曲が作れるのってちょっとすごいことですよね。そもそも「曇り空」って音楽用語じゃないし（笑）。

atsuko　でも発注っていつもそんな感じですよ。「痛い感じの曲で」とか。で「痛い感じ……ですか？」となり（笑）。

KATSU　「DNAを揺さぶる感じで」「魂を鼓舞する感じで」とかね（笑）。

──「シドニア」制作時に、まさにそういう発注を受けたって言ってましたもんね。

atsuko　「『鼓舞』ってどんな漢字書くんだっけ？」って、まずは辞書を引くところから作詞作曲を始めてみました（笑）。でも「曇り空」とか「魂を鼓舞」くらいの指示のほうが作りやすいんですよ。これまでそういう方と仕事をしたことはないんですけど、もし「Aメロの16小節はこんな感じで……」みたいに細かく指定する方とご一緒したら「じゃあ、あなたが作ればいいじゃないですか」って言っちゃうと思うし（笑）。

あえて「ケッ！」っと言われたい

──「Different colors」は「KINGS」、ひいては「K」関連楽曲の系譜にあるものの、確実に“新しさ”をたたえている。で、その“新しさ”を担保している最たるものの1つにatsukoさんの書いた詞があると思ってるんです。

atsuko　日本語としても英語としてもおかしい詞なんですけどね。マジメに語学を研究なさってる方には「ケッ！」って言われかねない（笑）。

──初っぱなから「安息 is どっか向こう」「Heaven is そんなのあんの？」ですもんね（笑）。ただ文法的にはNGかもしれないんだけど、英語に明るくない日本人リスナーであればこそ、逆に深く理解できるというか。歌詞カードを読めば確実に意味や寓意は伝わるんだけど、実際に曲を聴くと耳慣れない語順で言葉が並ぶからすごく新鮮で面白いんですよ。

atsuko　「なんて言ってんだろう？」「けどなんかカッコいいからまあいいか」みたいな（笑）。そういう受け取られ方をしてほしいなあっていう気持ちはあります。「K」って戦ってるシーンの映像がなんか美しいんですよね。生傷絶えないバトルというのではなく、踊っているようにバトルを魅せるのが「K」なので。そういうスタイリッシュさを出したかったから、日本語で熱く歌うんじゃなくて、こうなってしまったって感じですね。あとあえて「ケッ！」っと言われたかったというか。優等生的に「がんばれ」「戦え」とは歌いたくなかった。そういうストレートなメッセージは聴いている人の中に残らないと思うから。

ビジネス度外視で作ってます

──その“聴いている人”についても聞かせてください。お2人は6月から全国ツアーを回ってますけど、もう「Different colors」は……。

KATSU　初日（6月7日）の香川からやってます。

──ライブのお客さんの反応ってどうですか？

atsuko　香川のライブのときが本当に初披露。まだラジオなんかでもオンエアしてない状態で演奏したんですけど、けっこうな盛り上がりを見せてくれましたね。

──それもそれで面白いことだと思います。というのも、お話を伺っていると「Different colors」って「K」のために捧げた曲のような気がするので。まさに「『K』っぽさ」を追究した曲なのかなって。

KATSU　そうですね。ある意味、ビジネス度外視で「K」のために作ってますから。

──「ビジネス度外視」？

KATSU　「K」の原作と脚本を手がけているGoRAっていう作家集団のメンバーの中には前から知り合いだった方もいて。彼らがチームを作って「K」の企画を立ち上げて、制作を進めていく中で、GoRAから提案したわけではないのに「テーマソングはangelaに」って話になったらしいんです。そうしたら、その方がすごく喜んでくれて。そういうのってやっぱりうれしいじゃないですか。だから「K」については「GoRAの愛にちゃんと応えなきゃ」「愛をもって接していきたいな」っていう思いが強いんですよね。実際「ムリムリ、打ち込みじゃ愛に応えられないから、この音も生で」って感じで、とにかく楽器の録音にはこだわって。正直、レコーディングに関しては赤字なんですよ（笑）。