ナタリー PowerPush - アナログフィッシュ

伊坂幸太郎も推薦 結成12年ベストアルバム

バンドをやるのは恋愛と同じで、いいときも悪いときもある

──もう結成から12年なんですが、ここまでやってきたことへの感慨ってあるのでは?

下岡 うん、「よくやったな」とは思うけど……こないだ「もう少しでデビュー10周年だね」という話になって。それは結構ビックリしましたね(笑)。でも全然、長いとは思わないけど……ねえ?

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佐々木 うん。いや、でも、まだいけそうな気はしてますね。12年って考えると、今33歳だから人生の3分の1はこのバンドやってんだなって思いますけど。まだ、これといった結果も残せてないので、まだまだやりたいですね!という気持ちです。

斉藤 俺が入ってからも10年ぐらいか(笑)。でも面白いですね、ずっと。自分のドラムが変わっていくことも、この2人とやれてることも、すごく面白いです。まだまだ「これができる」とか「あれもやりたい」とかありますし。去年からはアコースティックでやりだしたり、そういう見せ方ができるようになったのは、すごく新しいですしね。

──そうですね。アナログフィッシュは今でも作品ごとに毎回モードが違うし、しかも必死に前に進んでる感じがあって(笑)、その時々で常にビビッドなバンドだと思うんですよ。だから「まだまだ」というのは、すごくわかります。

下岡 ああ、それは一番いいじゃないですか。最近バンドの状態が、ほんとに良くて……みんなに「アナログフィッシュやるの好きだよ」っていう感じが、すごくあるんです。メジャー前夜のときもそういう状態ってあったんですけど、それはずっと出てるもんじゃないんですよ。恋愛と同じで、いいときもあれば、悪いときもあるし。でもキャリアがあって、また今そういう時期に入ったとすれば、とっても誇らしいなと思って。「12年もやってるけど、またそういう感じなんだな」と。今のところ自分たちでは、落ち着いてく感じはしてないし。だから……変なバンドだなと思うし(笑)、それが楽しい。俺たちはたぶん長距離ランナーなんですよ、資質が。

健太郎ファンに恨まれるんじゃないかと思ってビクビクしてる

──実は今回の曲の並びを見て、ちょっと危惧してたんですよ。下岡くんの楽曲の割合がかなり多くて、ベストのほうなんて、頭の6曲目まで下岡くん作品ですよね?

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下岡 うん。だから健太郎ファンに恨まれるんじゃないかと思ってビクビクしてんだけど(笑)。「夜道とか気をつけないと」って(笑)。

──それについて佐々木くんはどう思ってるのかなと心配してたんです。でも選曲には意見したりして、携わっていたんですね。

佐々木 ああ……葛藤がないと言ったらウソになりますけど。でもそれも今は楽しめてる感じはしますね。楽しめてるというか、「荒野」をもっと聴いてほしいから、僕もこうしたわけで。だからこれも話し合って、ちゃんと納得して、という感じですね。

──そうですか。でも葛藤がなくはない、ですか?

佐々木 (笑)。でもほんとにベストヒット盤みたいなのは、さっきも話にあったとおり、もっとあとに出せばいい気がしてるので。

──なるほど。そのときは佐々木くんの曲が?

下岡 ズラリと(笑)。だから俺がベスト盤を他人に任せたかったのは、俺と健太郎の曲数がどうこうとかで悩みたくなかったんですよね。俺と健太郎の力関係はあるようで、別にないというか、全然同じだからさ。俺たちが2人で話すと、だいたい譲り合ったり、やり合ったりするけど、それだといつもと同じものができるなって気がしたんです。だから……本当にベストヒットを出せたら、そのときにそういうベスト盤を出したいですね(笑)。

特別寄稿 伊坂幸太郎 推薦コメント

アナログフィッシュは、まさに美しい魚が広々とした海を旅するかのような雄大さと、尖った魚が水中を鋭く突っ切るような疾走感と、両方を備えていて、ギタリストが歌う曲もあれば、ベーシストが歌う曲もある。ポップだけれど不穏さもあって、ハモッてるから飽きが来ないし、「日本のビートルズ」という枕詞をどうしても口にしたくなるのを、僕はいつもこらえている。「『日本のビートルズ』という定番の表現を言いたかっただけなんでしょ」などと笑われて、信じてもらえないかもしれないから。でも、ほかに何といえばいいんだろう。たとえば、アナログフィッシュが海外のバンドであったとしたら(違うけど)、たぶん、「やっぱり世界にはすごいバンドがいるもんだな」と感動するはずだ。

音楽には好みがあるから、もちろんぴんと来ない人もいるかもしれない。けれど、これほどクオリティが高くて、暗い世界の中で無理やり希望を照らすような(しかも、白けることなく!)音楽を鳴らしているバンドは、きっとたくさんの人にとって、大事なものになるはずで、だから、「こんな風に、暑苦しく推薦すればするほど、人は冷めていくのではないか」と心配になりながらも、推薦せずにはいられない。

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ベストアルバム 「ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE.ANALOGFISH:THE BEST AND HIBIYA YAON LIVE.」

  • 「ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE.ANALOGFISH:THE BEST AND HIBIYA YAON LIVE.」/ Amazon.co.jp
  • 2012年3月7日発売 3000円(税込)felicity PECF-1039
DISC1
  1. 荒野
  2. Light Bright(New mix)
  3. 確率の夜、可能性の朝(Feat.前野健太)
  4. 曖昧なハートビート
  5. 最後のfuture
  6. PARADOX(New mix)
  7. ガールフレンド
  8. アンセム
  9. Living in the City
  10. ナイトライダー2
  11. Hello
  12. のどかないなかのしずかなもぐら
  13. バタフライ
  14. Na Na Na(new)
  15. Hybrid
DISC2
  1. TEXAS
  2. SAVANNA
  3. LOW
  4. ロックンロール
  5. TOWN
  6. UNKNOWN
  7. No Way
  8. 平行
  9. 戦争がおきた
  10. 風の中さ
  11. PHASE
  12. Fine
アナログフィッシュ

ボーカリスト2人を擁するロックバンド。1999年に佐々木健太郎(Vo, B)と下岡晃(Vo, G)がデモテープ作りを始めたのをきっかけに結成される。2001年よりサポートドラマーを迎えて都内でライブ活動開始。2002年に斉藤州一郎(Dr, Vo)が加入し、3人編成となる。2003年にアルバム「世界は幻」とミニアルバム「日曜日の夜みたいだ」を発表。これが好評を得て、2004年6月に2作を1枚にまとめたアルバム「アナログフィッシュ」をリリースする。その後もクオリティの高い作品を連発。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする夏フェスにも多数出演してきたが、2008年3月にドラムの斉藤が病気を理由にバンドを脱退。同年7月、総勢7名のゲストドラマーを迎えたアルバム「Fish My Life」をリリースした。2009年10月に新木場STUDIO COASTで開催した結成10周年ライブ「10×10×10」で、斉藤が再びバンドに復帰。2011年9月には最新アルバム「荒野/On the Wild Side」をリリースしている。