ナタリー PowerPush - アナログフィッシュ

伊坂幸太郎も推薦 結成12年ベストアルバム

言ってることは案外ずっと変わってないんだな

──こうして今の曲と昔の曲が共存してることは、自分たちではどう感じます?

佐々木 あ、でも「昔の曲も、並びとかで全然聴こえ方が違ってくるんだな」って。それはすごく思いましたね。

下岡 俺はね、「言ってることは案外ずっと変わってないんだな」って思って、それはちょっとビックリした。自分ではもっといろいろやってきたつもりだったから。まあバンドサウンドはそれなりに変わってきてるけど、言ってることは俺も健太郎もほんと変わんねえんだな、と(笑)。もちろん「のどかないなかの(しずかなもぐら)」みたいなことは今言ってないけど。でも……そういう人なんだなと思ったな。

──自分たちが、ですか。佐々木くんのことはどう思います?

下岡 健ちゃんはすごく変わってきてます。僕は歌詞で曲作るし、健太郎はメロディでずっと曲作ってるから、そこがまず違うし。それは昔から思ってたことだけど、でも俺、2006年の「ROCK IS HARMONY」以降、ほんとに健太郎がすごい大人になってきてるように、勝手に見えてて。前は「健ちゃんはポップロックみたいなところでやるのかな?」と思ってたんだけど、すごい声を武器にして、歌うことを磨いて表現しはじめたから……それが意外で、途中でビックリしたのを思い出したな(笑)。

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佐々木 確かにそうですね。だんだんやってくうちに、結構ソウルな、マーヴィン・ゲイとか、そういうものを聴きだして。そういうことがデカいと思いますね。

──元々ソウルフルな人ではあると思いますけどね。じゃあ佐々木くんは、下岡くんの作品についてどう感じます?

佐々木 やればやるほど言葉の強さがどんどん増してるっていう感じはしますね。でもバンドのことを思うと、1回、州が離れちゃったりとか、メジャーから離れたりとか、結構シリアスな状況のときもあって、そこで「また2人でやろうぜ」ってなった時期もあったりして。そういうのが曲にも詞にも表れてると思うんですけど。

下岡 ……ど、どうなんですか? そうなんですかね?(笑)

外に出してないだけで、昔からストレートな部分は持ってた

──斉藤くんは、2人の歌の変化についてはどう思います?

斉藤 いろんな可能性があったと思うんです。「こういうほうに自分はやっていけばいいかもしれない」という方向がたくさんあったと思うんですけど、それが長年やってく中で、だんだん自分の感じをつかんできてて。それは僕のドラムもそうなんですけど、自分にちょうどいい、やっててムリがない道が、自然と見えてきている過程なんじゃないですかね?

──僕らファンは「下岡くんがこんなストレートな言葉を歌うようになるなんて」という感じがやっぱりあるんですけど。

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斉藤 ああ……でも、昔からそうだったんですけどね。外には出してないというか、レコーディングされない曲では、そういう部分も晃は持ってたし。「そういうのもいいよ」って言っても、本人が「ヤダ」っていうか。そんな感じだったよね?

下岡 うん……「うん」っていうか(笑)。

斉藤 そういう感じなんです(笑)。それを今の形で、自分のいいところを見つけてやってるから、僕らもヘンな感じがしないというか。すごく自然だと思いますよ。健太は昔っからなんにも変わってないですね。まず声に、ビックリするぐらい包容力がある。すげえ!って思うぐらいのね。このバンドに初めて誘われたとき、アコースティックライブを観に行ったらあまりにもいいから「いやあ、俺が入らないほうがいいんじゃないの?」って言ったぐらいなんですよ。でも「どうしても一緒にやりたい」って頑なに言うから、入ったんですけど(笑)。でも持ってるものは最初っから変わんないけど、見せ方は変わってるかもしんないですね。周りから言われて変わったところはあるかもしれないです。「髪を切れ」とか「痩せろ」とか。

佐々木 ああ(笑)。髪は肩ぐらいまであったときがありましたね。

ブラックホールみたいな行き詰まりを感じたこともあった

──さっきちょっと話に出ましたが、2008年から翌年の秋まで、斉藤くんが病気のために脱退した時期がありましたよね。やはりあれがバンド存続の上では、一番大変だったんじゃないですか?

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下岡 いや、それは違うかな。周りから見たら大変だったかもしんないけど。でも俺はそのときの(サポートメンバーを含めた)4人でバンドサウンド作るぞ!って感じで、前向きにやってた。ただ、州が戻ってきたときに、あまりにもそれがアナログフィッシュだったから「ああ、これはやっぱりすごいんだな」って思ったけど。そのときは大変だとは思ってなかった。

佐々木 そうですね。州がいなくなったときも、それなりに2人で楽しんでたし。ちょっと行き詰まったときもありましたけどね。今考えると「そうでもなかったな」って。

下岡 そうだね……ああ! でも行き詰まったことあったね! 今いきなり思い出した。一瞬ガーッて、ブラックホールみたいなのに(笑)……全く見えん!って感じに、突然なったことあったね。

──ほんとに、よく戻ってきてくれましたよね。

斉藤 ね? 2人がほんと、そのまんま変わらず、同じ関係でやっててくれましたからね。まあ、いろんな局面はあったにせよ、音楽をやってるとか、曲を作るとか、それを続けててくれたから、僕は戻れたわけです。

ベストアルバム 「ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE.ANALOGFISH:THE BEST AND HIBIYA YAON LIVE.」

  • 「ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE.ANALOGFISH:THE BEST AND HIBIYA YAON LIVE.」/ Amazon.co.jp
  • 2012年3月7日発売 3000円(税込)felicity PECF-1039
DISC1
  1. 荒野
  2. Light Bright(New mix)
  3. 確率の夜、可能性の朝(Feat.前野健太)
  4. 曖昧なハートビート
  5. 最後のfuture
  6. PARADOX(New mix)
  7. ガールフレンド
  8. アンセム
  9. Living in the City
  10. ナイトライダー2
  11. Hello
  12. のどかないなかのしずかなもぐら
  13. バタフライ
  14. Na Na Na(new)
  15. Hybrid
DISC2
  1. TEXAS
  2. SAVANNA
  3. LOW
  4. ロックンロール
  5. TOWN
  6. UNKNOWN
  7. No Way
  8. 平行
  9. 戦争がおきた
  10. 風の中さ
  11. PHASE
  12. Fine
アナログフィッシュ

ボーカリスト2人を擁するロックバンド。1999年に佐々木健太郎(Vo, B)と下岡晃(Vo, G)がデモテープ作りを始めたのをきっかけに結成される。2001年よりサポートドラマーを迎えて都内でライブ活動開始。2002年に斉藤州一郎(Dr, Vo)が加入し、3人編成となる。2003年にアルバム「世界は幻」とミニアルバム「日曜日の夜みたいだ」を発表。これが好評を得て、2004年6月に2作を1枚にまとめたアルバム「アナログフィッシュ」をリリースする。その後もクオリティの高い作品を連発。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする夏フェスにも多数出演してきたが、2008年3月にドラムの斉藤が病気を理由にバンドを脱退。同年7月、総勢7名のゲストドラマーを迎えたアルバム「Fish My Life」をリリースした。2009年10月に新木場STUDIO COASTで開催した結成10周年ライブ「10×10×10」で、斉藤が再びバンドに復帰。2011年9月には最新アルバム「荒野/On the Wild Side」をリリースしている。