アナログフィッシュの1年8カ月ぶりのニューアルバム「Fish My Life」が、7月16日にリリースされる。ご存知の通り、アナログフィッシュは今年3月に斉藤州一郎(Dr)が病気のため脱退。「Fish My Life」は佐々木健太郎(Vo,B)と下岡晃(Vo,G)の2人体制での再スタート後、初のアルバムとなる。サポートミュージシャンとして、彼らの敬愛するさまざまなバンドから7人ものドラマーが参加した。
今回のアルバムは、メンバー脱退というアクシデントを乗り越えた彼らの前向きな意志と、未来への強い希望を感じさせるポジティブな作品に仕上がっている。この作品が出来上がるまで、彼らがたどった道筋はどんなものだったのか。佐々木と下岡に語ってもらった。
取材・文/伊藤雅代
あいつのドラムが好きだから、なかなか言い出せなかった
——前のアルバム、「ROCK IS HARMONY」がリリースされたのが2006年11月。その後のアナログフィッシュはライブ活動が中心だったんですか?
佐々木 そうですね。3人でずっとライブと、曲づくりをやってました。
——最初に斉藤さんの体調がすぐれなくなってきたのはいつごろでしたか?
下岡 去年の夏ですね。毎年やってる「ナツフィッシュ」っていうライブイベントがあるんですけど、その前後ぐらいでした。リハーサルに出られなかったり曲づくりができなかったり、そういう状態が続いて。
——そこから、今年の2月に斉藤さんが初めてライブを休んでしまうまでの状況ってどんな風だったんですか。
下岡 最初はまだ、なんとかやれそうだって感じでお互い努力しながら、だましだましやってきてたんですよ。でも、それもだんだん難しくなってきて…。
佐々木 それで最終的に州から、ちょっと休ませてくださいみたいな話がありました。
下岡 僕らのほうからバンドを離れることを提案するっていう手もあったんだけど、僕らは本当にあいつのドラムが好きで、あいつとやりたいからなかなか言い出せなかったんです。そうこうしてるうちに今年の2月の磔磔ライブで、初めてライブに穴を開けることになって「ああ、これはもうダメか」って思いましたね。
——今回は脱退という結論になったわけですけど、たとえば斉藤さんだけ活動休止するという選択肢ではなく、一度辞めるという結論に至った理由は何ですか?
下岡 休止という形にしてお互いに縛られるよりは、はっきり脱退としたほうがお互いのこれからにとっていいような気がしたんですよ。
佐々木 州を活動休止という状態にして、戻らなきゃとか早く治さなきゃって思わせるのも嫌だったし、俺たちもそれだと本当に好きに動けないし。あいつと違う人とやるんだったら、縛られずにやったほうが絶対うまく動けると思ったんです。
下岡 脱退しても復帰できるんだし、言葉が違うだけで変わらないんだから、はっきりさせたほうがいいと思うんですよ。それで今回は「脱退」という形を取りました。
誰も誰かの代わりじゃない
——斉藤さんのドラムって、アナログフィッシュにとっては単なるドラマー以上の存在感がありますよね。だから脱退した後、他の人とやっていくのは相当大変だったと思うんですけど、不安はありましたか?
下岡 いや、すごく困りましたよ。脱退を決めるまでは2人とも鉄の意志でやってたけど、「その後どうするか」というのがなかなか決まりませんでした。最初のうちは州のようなドラムを叩ける人、州の代わりになる人を求めていたから全然進まなくて。そこから全然違う形でやっていくんだって決めるまで、かなり時間がかかりましたね。
——それで結局、今回のアルバムは曲ごとに違うドラマーをゲストに迎えるというスタイルになったわけですが、このアイディアはどこから出てきたんですか?
下岡 アルバムを作ることになって、誰にドラムを叩いてもらうか?って話になったとき、僕らのスタッフから「いろんな人と1曲ずつやってみたら」っていうアイディアが出たんですよ。それがすごく面白そうだったので、やってみることにしました。
——1人に頼むのではなくて7人に頼んだことで、アルバムの世界がすごく広がった印象がありますね。
下岡 そうですね。州が抜けた穴を埋めよう、という雰囲気にならずに作れましたし。
佐々木 7人いることで、誰も誰かの代わりじゃないっていう作品にできましたね。
CD収録曲
- 才能(Intro)
- ダンスホール
- PARADOX
- Clap Your Hands!
- Sayonara 90's
- ほら
- 無力のマーチ
- いずる
- Lover
ゲスト参加アーティスト
亀井亨(GRAPEVINE)
藤田勇(MO'SOME TONEBENDER)
川崎“フィリポ”裕利(髭(HiGE))
佐藤“コテイスイ”康一(髭(HiGE))
菊住守代司(キャプテンストライダム)
玉田豊夢
森信行
木村ひさし
ライブスケジュール
ナツフィッシュ・マイ・ライフ2days
- ナツフィッシュ・マイ・ライフ
~opening ceremony~ - 2008年8月7日(木)新宿red cloth
opening guest:sister jet
前売り / 3300円(ドリンク代別途必要) - ナツフィッシュ・マイ・ライフ
~after the gold rush~ - 2008年8月24日(日)渋谷CLUB QUATTRO
前売り / 3300円(ドリンク代別途必要)
プロフィール
アナログフィッシュ
ボーカリスト2人を擁するロックバンド。1999年に佐々木健太郎(Vo,B)と下岡晃(Vo,G)がデモテープ作りを始めたのをきっかけに結成される。2001年からはサポートドラマーを迎えて都内でライブ活動開始。2002年に斉藤州一郎(Dr,Vo)が加入し、3人編成となる。2003年にアルバム「世界は幻」とミニアルバム「日曜日の夜みたいだ」を発表。これが好評を得て、2004年6月に2作を1枚にまとめたアルバム「アナログフィッシュ」でメジャーデビューを果たす。その後もクオリティの高い作品を連発。「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする夏フェスにも多数出演してきたが、2008年3月にドラムの斉藤が病気を理由にバンドを脱退。現在は佐々木と下岡の2人にサポートドラマーを迎えて、精力的な活動を続けている。