大阪発ammo(アモ)がメジャーデビュー、CDにこだわり続けてきたスリーピースバンドの魅力に迫る (2/2)

「寝た振りの君へ」が変えてくれた

──CDにこだわり続けた結果、メジャーデビューのチャンスまでつかみました。メジャーデビューはもともと目指していたものだったんですか?

岡本 そこは明確に目指していました。バンドによっては、メジャーに不信感を持っていたりするかもしれないですけど。俺たちはわりと最初から、メジャーデビューして、タイアップで新曲を書き下ろして……みたいなことをイメージしていました。むしろ、「いつデビューできるんだろう」とずっと思っていましたね。だから、メジャーデビューの話が来たときは素直にうれしかったです。

北出 僕もすごくうれしかったですね。ずっとammoを好きでいてくれるお客さん、親や地元の友達に「よかったね」と言ってもらえて、もっとがんばろうと思いました。

川原 もちろんうれしかったですけど、まだあまり実感がないので。ここからかなと思っています。

ammo

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──メジャーデビューEP「re:想-EP」は新曲が5曲入ったCDで、同時に新曲1曲とインディーズ時代の代表曲が入った配信限定EP「re:奏-EP」もリリースされるんですよね。この出し方も個性的だなと思いました。

岡本 最近になって少し気持ちが変わって「配信もありかな」と思っているときに、レーベル側から「こういう形だったら面白いんじゃない?」という提案をしていただいて。新譜はCDオンリーで、昔の曲はサブスクって、あまりないパターンだし「面白そうだからやりましょう」ということになりました。

──「re:奏-EP」のほうは、4曲を再レコーディングしているということで。バンドの歴史の中で重要な曲をピックアップしたんですか?

岡本 そうですね。「re:奏-EP」には昔からライブでやってきた曲が入ってるんです。やっぱりライブを年間100本以上やっていると、自然と昔の曲がグレードアップされていくんです。そうやって変わってきた部分を反映して、今の俺たちで改めてレコーディングしました。

──4曲目の「寝た振りの君へ」は1stシングルの表題曲で、YouTubeで400万回以上再生されています。ammoにとってひとつのターニングポイントと言える1曲になったんじゃないでしょうか。

岡本 まさにそうですね。この曲がなかったら今の俺たちはないと言ってもいいくらい大事な曲です。改めてレコーディングしてみて、やっぱりいい曲だなあと思いました。「4年前の俺すごい!」って(笑)。曲ができたときも「この曲はキてるな」とめっちゃ自信があったんですよ。初めてライブで披露した日も覚えていますし、そのときのお客さんの反応もすごくよくて。

川原 バンドの環境を変えてくれた曲ですね。本当にこの曲のおかげですし、改めていい曲だと思います。

歌詞を読んでほしい、そのためには

──両EP共通の新曲「何℃でも」は、メジャーの1曲目にしては歌詞に生々しい物語が描かれていて、攻めているなあという印象でした。

岡本 (笑)。せっかくメジャーですし、これくらいパンチがないと記憶に残らないかな?と思って。

──「派手になった髪と化粧 水になった恋人よ名が増えても」など、細かいシチュエーションを想像してしまいます。歌詞から作っていったんですか?

岡本 いや、最初はメロですね。メロがよくないと、歌詞がよくても意味がないと思っているので。歌詞は、フックになる文章を思いついたら、そこにどんどん色付けしながら書いていくんです。「何℃でも」は「派手になった髪と化粧」と、2番の「派手に散った愛の結晶」という2つのフレーズが面白いなと思って、そこから広げていきました。物語を細かく作り込んでいるわけではないんですけど……こういう言葉遊びを入れたい、この韻を入れたい、じゃあその言葉をつなげるためにはどうしたらいいか?というふうに考えていく感じです。

──なるほど。最初は「愛してますから」の部分が後半は「愛知ってますから」になっていたり、歌詞を読んで初めて気付く表現も多くて面白いですね。

岡本 同じ言葉はなるべく使いたくないんですよね。そういうところは、やっぱりCDオンリーでやってきた影響が大きいかなと思います。ちゃんと歌詞カードを読んでほしいからこそ、言葉遊びをたくさん入れるようになりました。

──歌詞の内容はリアルで切ないラブストーリーでありつつ、楽曲はストレートな8ビートロックで。あえてギャップを意識してそうしたんですか?

岡本 いや、意図的ではないです。リズムアレンジに関しては2人に任せているので、自然とそうなったんだと思います。いつも僕がデモを作って、それを2人に渡してアレンジしてもらって、最後に3人でスタジオで合わせて仕上げていくんです。

──そうなんですね。どういうテンポにするかは川原さんと北出さんのジャッジなんですか?

川原 だいたいは優星が送ってくれた弾き語りのままですけど、変えたほうがいいと思ったら変えますね。優星もそれで大丈夫だと言ってくれるので。「何℃でも」は、優星の弾き語りを聴いて「これしかねえ」と思ってアレンジしました。

北出 ドラムに関してもおおまかなところは創馬が作ってくれるので、僕はそれをもう少し細かく詰めていく感じです。僕のやりたいようにアレンジを加えて、それをそのまま使うか使わないかは、最終的に3人でスタジオで合わせて決めます。

北出大洋(Dr)

北出大洋(Dr)

岡本 2人が考えたドラムとベースに合わせて、最終的にギターのストロークを変えたり、メロや歌の節を調整したりすることもあります。でも、結果的にそれで毎回デモよりも絶対よくなっているので、信じて任せています。

──バンド内にアレンジャーがいるわけですね。ちなみに、歌詞はデモの段階でできているんですか?

岡本 歌詞は最初の段階で完成させておきたいので、全部作ってから送ります。

川原 でも、アレンジするときは歌詞について何も意識していないです。マジでフィーリングっす(笑)。この歌詞でこのメロディだからこういうビート……みたいなことは全然考えていなくて、自分が気持ちいいように作ってます。送られてきた弾き語りにドラムをつけるんだったらこれしかないだろう、と作業を進めて、何回も聴きながら自分で気持ち悪いところを直して。引っかかるところがなくなったら「これでお願い!」って。

──まさにアレンジャーの仕事ですね。それで作曲者とは齟齬がないのがすごい。

岡本 そうなんですよね。今までずっとこのやり方でやってきて、この作り方以外やったことはないので、もうわかり合えている部分が大きいのかな。

──そういう作り方だから、歌詞の内容と曲自体のノリに面白いギャップができてるのかもしれないですね。作曲者が全部作っていると、「これはちょっと悲しい歌だから……」みたいな、その人の気持ちが楽曲の仕上がりにそのまま反映されることになりそうですし。ammoの作り方だからこそ、起こり得る化学反応があるのかもしれませんね。

岡本 ああ、絶対それはありますね。作曲者がデモで全部のパートを作り込むバンドも多いですけど、俺らは違うので。そこはammoの魅力の1つだと思います。

岡本優星(Vo, G)

岡本優星(Vo, G)

「re:想-EP」が迎えるハッピーエンド

──アレンジ面でいうと、「ブルースを抱きしめて」はローファイヒップホップをギターロックで表現したようなムードの曲ですが、このアイデアは岡本さんが作ったデモの時点であったんですか?

岡本 そうですね。いわゆるバンドっぽいタイトなビートではなくて、ちょっと揺れるようなノリの曲にしたかったんです。歌い方もヒップホップとまでは言わないですけど、ほかのロックテイストの曲とは少し違う感じで。これまでもこういうノリの曲を何曲か作ってきていますし、やりたいジャンルは常にたくさんあるんです。これもその中の1つですね。

──「ちょっと思っただけ」(2022年10月発売「我々の諸々」収録曲)や「不気味ちゃん」(2022年1月発売「灰汁とAct EP」収録曲)などですね。そういうアイデアが岡本さんから来て、どうアレンジしていったんですか?

川原 「ブルースを抱きしめて」のリズムアレンジは、けっこう大洋にお願いしたかな。

川原創馬(B, Cho)

川原創馬(B, Cho)

北出 普段は創馬が打ち込みで作ってくれたものに俺がアレンジを加えていくんですけど、この曲はスタジオで実際にドラムを叩きながら、相談して作っていきました。R&B系のジャンルの音楽をいろいろ聴いてフィルの入れ方とかを勉強して、うまく落とし込めたと思います。

──そして、「re:想-EP」の最後に「やまない愛はある」というラブソングが入っています。岡本さんが書く歌詞は失恋系が多いので、ここまで温かいハッピーエンドなのは珍しいですよね。

岡本 自分の性格的にも、経験的にも、別れの曲のほうが多くなっちゃいますね。でも、「やまない愛はある」はメジャーデビューが決まって一発目に書いた曲だったので、誰が聴いても幸せな気持ちになれるような曲にしたいと思ったんです。これまでハッピーな曲は少なかったので、逆に溜まっていたものがあったのか、わりとすんなり書けましたね。みんなに聴いてもらって広がってほしい1曲です。

──このタイミングだから書けた1曲なんですね。

岡本 そうですね。まあ、前の4曲はしっかり失恋系なので、ちょっと情緒不安定ですけど(笑)。終わりよければ……というか、この曲があることで、ちゃんと作品としてカチッと締まったなと思います。

──メジャーデビューを果たして、これからどんなバンドになっていきたいですか?

岡本 いろいろ想像はしていますけど、それを超えるぐらいammoの音楽が広がっていってほしいですね。せっかくメジャーデビューできたわけですし、志は大きく持って、自分も想像できないところまで行きたい。今は勉強の日々なので、周りの期待にも応えられるようにがんばりたいと思います。

川原 まずは曲が広がっていってほしいです。たくさんの人に自分たちの曲を聴いてもらいつつ、どれだけ小さい会場でも大きい会場でも変わらずに、ライブハウスでやってきたことをそのままやり続けていきたい。それまで僕らの音楽やライブハウスの文化とかを知らなかった人にも届いて、実際にライブハウスに来てもらえたら最高だなと。

北出 それ最高だと思う。だからこそバンドとしての芯は変わらず、どんどん進化して、大きくなっていきたいです。

ammo

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ライブ情報

ammo 単発単独公演 “reALITY”

  • 2024年3月3日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

ammo re:sou EP Release Tour「THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR」

  • 2024年3月23日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2024年3月27日(水)石川県 vanvanV4
  • 2024年4月1日(月)福岡県 BEAT STATION
  • 2024年4月9日(火)東京都 Spotify O-Crest
  • 2024年4月13日(土)香川県 DIME
  • 2024年4月14日(日)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2024年4月18日(木)宮城県 enn 2nd
  • 2024年4月21日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2024年4月25日(木)大阪府 LIVEHOUSE BRONZE

プロフィール

ammo(アモ)

岡本優星(Vo, G)、川原創馬(B, Cho)、北出大洋(Dr)からなる大阪発のスリーピースバンド。ライブハウスを中心に活動を重ね、2020年4月に1stシングル「寝た振りの君へ」を、11月に1stフルアルバム「会うは別れの始め」をリリースした。2024年1月にTOY'S FACTORYよりメジャーデビューEP「re:想-EP」、配信限定EP「re:奏-EP」を発表。3月には東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で単独公演「reALITY」を行い、3月から4月にかけて全国ツアー「ammo re:sou EP Release Tour『THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR』」を実施する。