大阪発のロックバンド・ammo(アモ)がTOY'S FACTORYよりメジャーデビューEP「re:想-EP」、配信限定EP「re:奏-EP」を同時リリースした。
楽曲の配信を一切しないまま、ライブハウスをメインに活動を続け、昨年11月に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)を満員にしたammo。飛ぶ鳥を落とす勢いでバンドシーンを駆け上がる彼らがメジャーデビューを果たした。
CDオンリーでリリースされる「re:想-EP」には最新のammoを堪能できる新曲5曲、初の配信限定作品「re:奏-EP」には新曲1曲と、ミュージックビデオの再生数が400万回を突破している「寝た振りの君へ」を含むインディーズ時代の代表曲の再録バージョンが収録されている。
岡本優星(Vo, G)が作るフック満載の歌詞とメロディ、スリーピースならではの力強いサウンド、ギターロックの枠にとらわれない変幻自在のアレンジ。王道と独創性の両方を兼ね備えたammoのロックはどのように作られてきたのか。結成から現在までの道のり、未来の野望まで、岡本、川原創馬(B, Cho)、北出大洋(Dr)の3人に話を聞いた。
取材・文 / 後藤寛子撮影 / 後藤壮太郎
絶対にバンドをやりたいと思っていたのは俺だけ
──まずは結成のいきさつから伺いたいんですが、岡本さんと川原さんが同級生だったそうですね。
岡本優星(Vo, G) もともと同じ高校の軽音部に入っていて。そのときは違うメンバーとそれぞれコピーバンドを組んでいたんですけど、高校を卒業してからオリジナルバンドを組もうと思って、俺が創馬に声をかけました。
──高校を卒業してバンドを続けるかどうかは1つの岐路だと思いますけど、岡本さんとしてはプロを目指すくらいの気持ちでやりたかったんですか?
岡本 高校のときからずっとバンドで食ってきたいと思っていて、オリジナル曲を作りたくて作曲の勉強もしていましたね。
──川原さんも同じ気持ちで?
川原創馬(B, Cho) 優星はバンドに対する熱量がすごくあったんですけど、僕は大学に進学してたのもあって、そこまでは(笑)。
岡本 絶対にバンドをやりたいと思っていたのは俺だけでした。
川原 でも、僕もバンドを続けたいと思っていたので「大学に行きながらでもよかったら」ということで始めました。意識が変わったきっかけとして、インディーズレーベル(Orange Owl Records)に声をかけてもらったのは大きかったです。自分たちの音源が世の中に出るんだなと思うと、もっとしっかりやっていかないといけないと思って。
──北出さんは2022年加入ですが、それまでもammoをサポートをするなど交流はあったんですよね。
北出大洋(Dr) そうですね。前に僕が入っていたバンドでammoと対バンしたことがあって、そこでメンバーとは知り合いました。対バンしたときにめっちゃカッコいいと思って、曲も聴いていたので。サポートを経て正式メンバーに誘われたときはうれしかったです。
ルーツはバラバラだけど
──もともとスリーピースバンドがやりたかったんですか?
岡本 そうですね。高校卒業する前から、バンドをやるならスリーピースバンドがやりたいと思っていましたね。スリーピースで、ライブバンドで……みたいなアーティストが好きだったので。
──サウンドからもそこに対する愛情やこだわりは感じますね。皆さんいわゆる“キッズ”だったんですか?
岡本 僕はまさにそうですね。メンバーそれぞれ好きなバンドは全然違うんですけど。僕で言うと、THE NINTH APOLLOのバンドが好きで、My Hair is BadやHump Backのライブによく行ってました。
北出 僕は、ドラムを始めたのが中学生の頃だったんですけど、きっかけはONE OK ROCKでした。そこから、高校生のときにライブによく行っていたのはラウド系で。coldrainのライブでダイブしたりしていましたね。
川原 この時点でバラバラ(笑)。と言いつつ、僕は特にルーツのバンドとかはなくて。バンドを知らずにベースを始めたんですよ。
──そうなんですか。
川原 友達に「1人で軽音部に入るのは心細いから一緒に来て」と言われて入部したんです。ベースが何かもわからずに触り始めて、最初はギターみたいな音が出ると思ってましたから(笑)。それからいろいろ聴くようになっていって、特に好きだったのはShout it Outですね。
──確かに三者三様ですね。活動としては、やっぱりライブをメインにやっていこうという方向性で?
岡本 そういうバンドを見て育ってきたんで、もうライブハウスにしかチャンスは転がっていないと思っていて。結成当初はまだTikTokもそこまで流行ってなかったですし、SNSとかメディアからバズって人気になろうみたいな考えは、最初からなかったです。
──ライブで力を付けていって、お客さんを増やしていこうと。
岡本 そうですね。
ダイブするお客さんにビビってた
──まさにライブをやるごとに会場が大きくなっていて。2022年7月に初のワンマンをBIGCATで開催後、翌年6月にはSpotify O-EAST、11月にはZepp Shinjuku(TOKYO)をソールドアウトさせています(参照:大阪発バンド・ammoが熱狂のツアーファイナル「Zeppをゴールになんかしねー!」)。ammoの名がどんどん広がっていっている実感はありますか?
岡本 ちょっと目まぐるしすぎて、自分たち自身ではあんまり実感はないですね。今、冷静に振り返ってみたら、「ああ、Zeppまで来たんだな」と思いますけど。
川原 「本当にたくさんライブをしたなあ」という感覚しかないですね。
──あと、コロナ禍真っ只中の2020年に1stシングル「寝た振りの君へ」をリリースしてライブ活動が本格化しているので、キャパが広がると同時に、徐々にお客さんが声を出せるようになったり、モッシュやダイブができるようなったり、ノリ方も変わってきたんじゃないですか。
川原 そうなんですよね。だから、いろいろ解禁され始めた頃は、お客さんの盛り上がりに圧倒されちゃってました。もちろん高校生のときに観に行っていたのはそういう熱いライブでしたけど、いざ自分のライブがそうなったら「ええっ!」みたいな。
岡本 そうそう。
北出 ダイブやってた側でしたけど、実際にダイブとかが起こり出したときは、まずビビっちゃってましたね(笑)。
川原 お客さんすごいな、俺らよりしんどそう……とか思っちゃう(笑)。最近、やっと少し慣れてきたくらいです。
岡本 最初は俺も全然慣れなかったですね。メロディックパンクのライブにも行っていましたけど、自分たちのライブがそんなに激しいフロアになるとは想像もしていなかった。ハコによって、ここではいいけど、ここはダメみたいな制約もありましたし、どのあたりで止めたほうがいいのかがわからなくて。今のノリは完全にお客さんが作ってくれたものですね。
──キャパが大きくなってZeppクラスになると、また見せ方も変わってきそうですね。
岡本 ここまできたらとことん行きたいと思いますけど「ammoのライブはこういうものだ」というのはまだはっきりわかっていない気がします。いろいろな曲があるし、好き勝手にノッてくれていいと思っているので、まだ決めつけたくないところですね。
サブスクへの不安
──ライブの本数もそうですけど、音源の数も多いですよね。5年でフルアルバム2枚とEP2枚を出しているのはなかなかハイペースだと思いますが、曲はどんどんできるほうなんですか?
岡本 いや、僕自身は曲をいっぱい作りたいタイプじゃないんですよ。むしろ締め切りがないと作れないので、リリースが決まってからスケジュールを逆算して動き出すんですけど。レーベルがレコーディングの予定をたくさん入れてくれるんです。それに合わせて曲ができあがって。完成したらすぐリリースしたいじゃないですか。だから、録っては出して、録っては出して、とやっていったら、もう5枚も出ていました。
──レーベル側の圧のかけ方が正しかったと。
岡本 本当にそうだと思います(笑)。
川原 ははは! このレーベルにしかいたことがないので、みんなこういう感じなのかと思ってました。出してるほうなんですかね?
──多いほうだと思いますよ。もう1つ面白いのが、これまで配信リリースをせず、CDのみで音源を発表してきたことですよね。そこはメンバーのこだわりだったんですか?
岡本 そうですね。好きだったバンドがCDオンリーだったり、自分自身CDを買ってライブに行くタイプだったので。今は少し考えも変わりましたけど、以前はサブスクに対して不安があって、これまではずっとCDのみでやってきました。やっぱり、ちゃんと歌詞カードまで見てほしいんですよね。
北出 僕も学生の頃はCDを買って聴いていたし、その楽しみ方を知ってるので。CDオンリーというバンドのスタンスはすごくいいなと思います。
──今の時代にそれを貫けるのがすごいと思います。とはいえ、お客さんから「サブスクも出してほしい」みたいな声もあったのでは?
岡本 よく言われます(笑)。でも、サブスクで配信されると、よくも悪くも広がっちゃうじゃないですか。CDだと本当に好きな人しか手に取らないので、“独占できる”という意味で「これからもCDだけで続けてください」みたいな意見ももらいますね。「自分しか知らない」みたいな特別感があるのもいいのかなと。
──そうやってバンドとリスナーがしっかりつながってきたからこそ、これだけライブのキャパシティが広がっていったんでしょうね。結果、サブスクをやっていなくてもここまで来れたぞ、みたいな気持ちがあるんじゃないですか?
岡本 そういう意味では、Zeppをやって証明できた感じはありますね。
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「寝た振りの君へ」が変えてくれた