雨宮天「Ten to Bluer」インタビュー|“好き”を追求した先にたどり着いた、濃厚な青の世界 (3/3)

歌詞が似てしまうなら、私が全然違う女性を演じればいい

──9曲目の「the Game of Life」も新曲ですが、和ロックな「風燭のイデア」とは打って変わって、洋楽的なEDMです。雨宮さんがこういう曲を歌うのは初めてでは?

初めてですし、自分が歌うとは思っていませんでした。だからこそ未来志向の1曲たり得るというか、「今までありがとう」じゃなくて「まだまだやってやるぞ!」サイドの曲で、スタッフさんの間では「ガガ曲」と言われているんです。レディー・ガガさんのような力強さを持った曲という意味で。

──作詞は上坂梨紗さん、作曲は石黑剛さんとGiz'Mo(from Jam9)さん、編曲は石黑さんとArmySlickさんですね。先の「Fireheart」と同様に強気な歌詞で、四つ打ちのトラックにも行進曲的な推進力があり、雨宮さんの強いボーカルが生きていると思います。

だいぶそこにパワーを割きましたね。この曲で描かれているのは、たぶん派手な女性なんですよ。派手というのはもちろんマインドも指すんですけど、マインドの派手さは見た目や生き方に出ると思うから、きっと彼女はアイラインとかも濃いし、いつもゴージャスに着飾っているんじゃないか。そういう雰囲気を出したかったので、アタックは強く、それでいてちょっとダルそうな、世間を皮肉っているようなニュアンスも大事にしました。

──サビで「一生涯はGamble」と歌っていますが、この女性はけっこう負けも込んでいるんじゃないかなという印象を、僕は受けました。

わかります(笑)。「JACKPOT JOKER」が「Play」のひと言で勝っていたのに対して、「the Game of Life」はどこか哀愁が漂っていて。特にその色が濃いと思ったのがBメロだったので、そこは声のトーンを抑えています。彼女は自分で選択した人生を自分らしく生きているけれど、そのせいで傷付いたこともあったはず。でも、ずっと勝ち続ける人生なんてないし、私は彼女の哀愁も肯定したい。

──今言ったように「the Game of Life」もギャンブルがモチーフになっていますが、雨宮さんは作家からギャンブル好きだと思われているんですかね?

いや、実はそれが雨宮チームでちょっとした議題になったんですよ。ちなみに私はまったくギャンブルはしないんですけれども、「the Game of Life」の歌詞を見たときに、「JACKPOT JOKER」と世界観が似ちゃうんじゃないかと1回悩みまして。作詞の上坂さんに、ギャンブル感が薄れる方向で修正をお願いしたんです。でも、さっきの「SOS」もそうですけど、上坂さんの歌詞は最初に上げてくださったものがすごくいいんですよね。やっぱり主人公の女性は「一生涯はGamble」と歌うのが似合っているし、それで歌詞が「JACKPOT JOKER」と似てしまうなら、私が全然違う女性を演じればいい。だって、私は声優なのだから。

雨宮天

──カッコいい。

歌い方の違いで言えば、「JACKPOT JOKER」は1つひとつの言葉をわりとはっきり発音しているんですけど、「the Game of Life」は何を言っているのかわからない感じで歌いました。要は、歌詞を明瞭に聞かせなくてもいいと思ったんです。なぜなら、きっと彼女は自分のことを他人に説明するタイプではないから。「私って、こういう人間なんですよ」じゃなくて「見てわからないの? これが私!」みたいな。だから、言葉を伝えるというよりは……バイブスを伝える感じ?

──バイブスを。

例えば「大どんでん返しも」という歌詞だったら「だ」と「ど」と「で」にアタックを付けるんですけど、ここで最優先すべきはそのアタック自体を生かすことなんですよ。そこから続く「甚だあり得る Go On!!」は一瞬たりも止まりたくなかったから、言葉を区切らずに歌っていて。結果、「甚だあり得る」の「る」を蔑ろにしてしまっているんですけど、そういう犠牲を払ってでも流れを優先したかったんです。

雨宮天から青き民への手紙、どうか受け取ってください

──最後に残った新曲が、雨宮さん作詞作曲、荒幡亮平さん編曲のバラード「Dear Blue」です。曲名も歌詞もド直球で、アルバムタイトルと同じく驚きました。

それも、今だからできたことではあるでしょうね。10周年を記念するにはあまりにも平易で、なんのひねりもない歌詞といいますか。

──同じく雨宮さんが作詞作曲した「風燭のイデア」とは好対照ですね。

もうちょっとおしゃれな言葉とか気の利いた比喩とか、いろいろ考えたんですけど、そうやって飾ろうとした分だけ自分の思いがわからなくなるというか、嘘になるような気がして。そこで考え方を変えて「今、青き民に手紙を書くなら何を書きたいか?」「私が青き民との思い出の中で大切に覚えていることは?」という視点で作詞をしていったら、すごく直接的な歌詞になりました。

──雨宮さんが自分の心情を吐露することって、今までなかったですよね。

なかったです。私にとって作詞とは、自分の気持ちや考えを伝えるのではなくて、あくまで私が歌で演じたいキャラクターのセリフを書く作業だったんですよ。でも、「Dear Blue」の歌詞は100%自分の心情だけでできていて。事実じゃないことが1つもないし、なんならすべての歌詞が具体的なエピソードに基づいている。ここに書かれている言葉以上でも以下でもないし、裏も表もない。正直、こんなふうに書けるとは思っていなかったし、きっと1年前でもこうは書けなかったでしょうね。そもそも私は自分の本音とかを歌詞にする必要性を感じていなかったので……。

──雨宮さんが初めて作詞作曲した「火花」(「Paint it, BLUE」収録曲)のお話を伺ったとき、「私には曲に乗せて伝えたいことがない」とおっしゃっていましたね(参照:雨宮天「PARADOX」インタビュー)。

そうでしたね(笑)。だから結局、私は歌でも演じていたいんですよ。自分のことを歌詞にしたら演じられないし、仮に演じられたとしてもそれはただの自分だから楽しくない。でも、「Ten to Bluer」と題した10周年記念アルバムを出すと決まったとき、繰り返しになりますが、私1人の力ではとてもじゃないけど10年も続けてこられなかったと思って。途中で心が折れるなりなんなりして辞めているんですよ、確実に。そんな、幾度となく訪れた心が折れそうになる瞬間を支えてくれた青き民たちに感謝を伝えるんだったら、青き民たちが支えてくれたことで手にすることができた「作詞作曲」という手段を用いて、今の私のすべてを伝えたいと思った次第です。はい。

──当然のことながら、「Dear Blue」は誰かを演じるのではなく、雨宮天として歌っているんですよね。

だから恥ずかしいんです! だって、私はそういうタイプじゃないですもん。今までさんざんいろんなキャラクターを演じてきた人間が突然「こんにちは、雨宮本人です」みたいな(笑)。

──レコーディングするときも恥ずかしかったんですか?

レコーディングでは……実は作詞していたときもそうだったんですけど、気を抜くと泣いちゃうんですよね(笑)。この歌詞に書いてある言葉の奥には実体験があるから、それを思い出して。歌を録っているときも「危ない危ない。このままだと泣いて鼻声になっちゃうぞ」みたいな、今まで経験したことのない難しさがありました。

──ちなみに歌詞だけでなく曲も、青き民に感謝を伝えるために書いたんですか?

そうです。だから私にしてはメロディもありえないぐらい素直というか、飾り気がない。曲も詞も、本当に何も着飾っていないし、手にも何も持っていない。もはや素っ裸と言ってもいいし、そういう意味では雨宮天の全楽曲の中で一番、腹が決まっている曲ですね。「Dear Blue」はまっすぐな思いを伝えるためだけに書いた、私から青き民への手紙です。どうか受け取ってください。

雨宮天

ツアー情報

LAWSON presents 雨宮天 Live Tour 2024 "Ten to Bluer Sky"

  • 2024年5月11日(土)大阪府 オリックス劇場
  • 2024年5月12日(日)大阪府 オリックス劇場
  • 2024年5月26日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2024年6月9日(日)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2024年6月22日(土)東京都 立川ステージガーデン
  • 2024年6月23日(日)東京都 立川ステージガーデン

プロフィール

雨宮天(アマミヤソラ)

1993年8月28日生まれの声優 / アーティスト。2011年に開催された第2回ミュージックレインスーパー声優オーディションに合格し、翌年に声優デビューする。主な出演作に「アカメが斬る!」「東京喰種 トーキョーグール」「七つの大罪」「この素晴らしい世界に祝福を!」「彼女、お借りします」など。2014年8月に1stシングル「Skyreach」でアーティストデビュー。熱心な歌謡曲ファンであり、2017年から歌謡曲カバーライブ「音楽で彩るリサイタル」を不定期で開催し、2021年10月には初のカバーアルバム「COVERS -Sora Amamiya favorite songs-」を発表した。アーティストデビュー5周年を迎えた2022年1月にはベストアルバム「雨宮天 BEST ALBUM - BLUE -」「雨宮天 BEST ALBUM - RED -」を同時リリース。2023年3月に自身で全収録曲の作詞作曲を手がけたEP「雨宮天作品集1 -導火線-」を発表し、11月に神奈川・大磯プリンスホテル メインバンケットホールで初のディナーショー「LAWSON presents 雨宮天ディナーショー 2023」を開催した。2024年3月にアーティストデビュー10周年を飾るアルバム「Ten to Bluer」をリリース。5月からライブツアー「LAWSON presents 雨宮天 Live Tour 2024 "Ten to Bluer Sky”」を行う。また、同じミュージックレインに所属する麻倉もも、夏川椎菜とともに声優ユニット・TrySailのメンバーとしても活動している。