団結という意味でのファンクとヒップホップ
──その後LEOさんはALIを立ち上げるわけですが、そのときの最初のビジョンはどんなものだったんですか?
実はすでにある程度メンバーは集まっていて。20歳の頃から10年くらいかけてメンバーを徐々に集めていたので、「あとはベースとドラムだけだな」という感じだったんですよ。ここまである程度の計画を立てながらやってこれたのは今までのバンドの経験がデカいですね。
──なるほど。直近でラッパーのJUAさんとギターのZERUさんの2人が脱退したこともそうですが、人間的にも音楽的にも濃いミュージシャンたちをまとめることは難儀な部分もあると思います。そのあたりの実感はどうですか?
バンドのリーダーとしていろんな責任を負っているから、大変ではありますね。でも俺はみんなのおかげでALIのリーダーをやらせてもらってると思ってます。今、ALIは自分たちで事務所を運営してるんですけど、そのスタッフをKAHADIO(Dr)やJIN(Key)、CÉSAR(G)にやってもらったりとか、メンバーそれぞれに役割を担ってもらってるんです。それは自分たちがプロのバンドとしてちゃんとやっていきたいからで。事務所を立ち上げる前に「将来何やりたい?」とか「何になりたいの?」とか、改めてメンバーと夢を確認しあったんですけど、そこからぶつかり合ったりああだこうだ言いながらも今がある感じですね。
──そのうえで今回のメジャー1stシングルで一番意識したのはどんなところですか? ラップ担当のメンバーが脱退したタイミングだったからこそ、外部のアーティストを客演に招くということも大きなテーマだったと思います。
今年は“団結”というスタンスを表明するために、ヒップホップとファンクを徹底的にやらないと負けると思ったんですよ。で「俺らが打ち出せるヒップホップってなんだろう?」と考えたら、俺はThe Sugarhill Gangが超好きなことを思い出して。あの時代のヒップホップって、グループの中にDJがいて、ダンサーがいて、グラフィティアーティストがいて、いろんな人の表現が混ざり合って生まれる“摩擦”の醍醐味をすごく感じられるんです。俺らも人とぶつかりながら混ざり合っていくムーブメントを起こしたいと思っているので、ジャンルの境界線を壊して全部をゼロにしていくというテーマがあって。それでAKLOくん、J-REXXX、K.A.N.T.A.、なみちえ、GOMESSというそれぞれ異なるフィールドにいるアーティストを客演に呼んだんです。そうすることでファンクとヒップホップを融合させて、ALIが掲げる音を鳴らしたいと思って。
力を貸してくれませんか?
──先ほどGOMESSさんの話は聞かせてもらいましたが、ほかのラッパーとはどのように出会ったんですか?
僕が渋谷のバーで働いていたとき、たまたまAKLOくんがお客さんとして来たんですけど、そこで「俺がヒップホップを変えてやりますよ」と言ってたんです。そのとき俺は何者でもなかったから声をかけられなかったけど、その話と志と目つきがすごくカッコよくて。のちにやっと声をかけられるタイミングになってから、挨拶と一緒にそのときのことを手紙に書いて「もしよかったら力を貸してくれませんか?」とお願いしたのが始まりでした。K.A.N.T.A.とは、俳優の松田翔太がきっかけです。翔太とは若い頃から遊んでて、彼もヒップホップが大好きなやつなんですけど、翔太と遊んでたらK.A.N.T.A.とも仲よくなりました。昔から支えてくれてたやつとの縁は大事にしたいなって……。
──今作にGOMESSさんが参加しているのだって、昔からの縁の伏線回収だし(笑)。
完全にそうっすね!(笑) J-REXXXくんはレゲエディージェイですけど、俺が昔からファンで。今ALIとは別で、BABYLON PANICというレゲエのバンドもやってるんですけど、そこで対バンしたことがあって。今回はJ-REXXXくんにも手紙を書いてオファーしました。あとなみちえはね、彗星のごとく現れたから。ハーフだしALIのメンバーにいてもおかしくないというか、気になってたので声をかけました。今ではすごく仲よくて、今回もなみちえが曲に合わせて途中でリリックを全部書き直してくれたりとか、すごくフィールしてくれました。
東京にもう一度火を点けて
──このシングルを聴いていて、LEOさんが作品全体を通して“東京”を強く意識しているなと感じたのですがいかがでしょうか? 表題曲の歌詞に「Tokyo prison」という印象的なフレーズも登場しますし、いかに今の東京でタフに生きられるかという。
まさにですね。現状、ALIは国内よりも海外からのほうのリアクションが大きくて。俺は小さいときから世界中で活動したいと思っていたから、もうその夢が叶っちゃってるとも言えるんですけど、俺は東京を世界の中心にしたくてALIをやってるんです。東京が世界だという気持ちでやりたいし、実際は東京も世界も同じだと思ってやってる。今は国内外の反応の差が大きいので、メジャーデビュー作である今回のシングルでは、俺らのそういうスローガンだったりメッセージを表現しています。
──なるほど。LEOさんの目に今の東京はどう映っていますか?
コロナの影響が出る前のことは思い出しづらいけど、今はいろんなことが怖くなってきています。SNSでの中傷の問題もそうですけど、それぞれの意志や自由を装いながら、実は大きな何かに選ばされたり流されたりしている気がします。音楽に対してもそうで、例えば素晴らしいDJがパーティにゲスト出演するとそこに人は集まるけど、実際は会場のスピーカーはショボくて、みんなも音楽は二の次みたいなスタンスだったりして。事情はいろいろあると思うけど、東京で多々目にするそういう状況になんだかすごく怒りが込み上げてくるんです。だから東京にもう一度火を点けてぶちかましてやるぜという気持ちで、「LOST IN PARADISE feat. AKLO」を書きました。俺はバブル時代のことは知らないけど、10代の頃からずっと見てきた先輩たちのはっちゃけ具合とかカッコつけ方が、まぶしく見えていたから。でもコロナがやってきていきなり世界がひっくり返っちゃったので、今は東京が全部ゼロになったとも思うんですよね。だから音楽が本来の役割をここから取り戻していくんじゃないか、音楽がもっと必要とされるんじゃないかと予感しています。俺がいいと思う音楽は汗をかいてたり血が流れていたりするものなので、東京から全世界にそういう音楽を発信していく。それが俺らがやるべき仕事かなって思ってます。
──最後に、今の時点でLEOさんが見据えているALIで実現させたいことを聞かせてもらえたら。
スヌープ・ドッグと一緒に曲を作りたいです。実はもうオファーはしていて、OKも出てるんですよ!
──本当に!?
マジです。あとはお金の問題だけ。あっちからはもう前向きな返事をもらえているので、実現させるには、あとは本当にお金だけです(笑)。