AKB48の大逆襲はここから|センター・岡田奈々の奮闘、韓国から帰ってきた本田仁美ならではの目線……10年ぶりオールAKB48選抜メンバーのシングルが告げる“新しいAKB48”の始まり

AKB48は今年5月、現役では最後の1期生だった峯岸みなみがグループを卒業。オリジナルメンバーがついに1人もいなくなったという意味では、AKB48ヒストリーの大きな転換点を迎えた。それと同時にIZ*ONEでの活動を終え本田仁美が韓国から帰国し、AKB48に復帰。コロナ禍の逆風に負けず、AKB48に早くも新しい風が吹き始めている。

音楽ナタリーでは9月29日に58thシングル「根も葉もRumor」がリリースされることを記念して、センターの岡田奈々(AKB48 Team 4 / STU48)をはじめ、本田仁美(AKB48 Team 8 / Team B)、向井地美音(AKB48 Team A / AKB48グループ総監督)、村山彩希(AKB48 Team 4キャプテン)、下尾みう(AKB48 Team 8 / Team A)の5人にインタビュー。「オールAKB48メンバーのシングル」「“ひぃちゃん効果”」「注目の新選抜メンバー」「難易度の高いロックダンス」「パフォーマンス重視にシフトチェンジ」などのトピックにまつわる質問を投げかけ、現在のAKB48をメンバー自身に熱く語ってもらった。

取材・文 / 小野田衛撮影 / 塚原孝顕

1“AKB48メンバー単独”でのシングル発表。
プレッシャーと意気込みは?

ファンの間ではかねてから待望論があった「地方の姉妹グループに頼らない」「純AKB48」の選抜メンバーで披露されるシングル。しかし本人たちとしてはセールス面での重圧も大きいのではないか? 今、改めて問われるAKB48としてのアイデンティティとは?

──コロナ禍の影響もあり、AKB48にとって1年半ぶりのシングルとなります。今回は10年9カ月ぶりにAKB48メンバーのみで勝負する新曲なんですね。

岡田奈々

岡田奈々 先ほど、関係者の方からそのことを聞きました。「2010年に出た『チャンスの順番』以来なんだよ」って。

向井地美音 正直、AKB48単独でのシングルというのは「この先、一生ないだろう」と思っていました。総監督という立場上、あまり軽はずみなことは言えないんですけど、“両方の可能性”を試したほうがいいというのが私の考えだったんですね。両方というのは今まで通りAKB48グループ全体の力を集める方法と、昔やっていたようなAKB48だけでがんばっていく方法。

村山彩希 でも確かに、ファンの人からは「AKB48だけでやったほうがグループとしての特徴が出る」という意見が以前から多かったんです。

向井地 それに加えて、姉妹グループに頼っちゃうとAKB48の若手メンバーにチャンスが回ってこないという問題もあります。ただでさえグループの人数が多いのに、16人の選抜枠(※今回の「根も葉もRumor」は18人)に入るのは至難の業ですから。姉妹グループのメンバーが入ることで、事実上、AKB48メンバーは10人くらいしか枠がなかったりする。AKB48だけのシングルリリースは若手のことを考えると歓迎すべきことだし、私自身も素直にうれしかったです。

岡田 私はSTU48との兼任メンバーという立場ではあるんですけど、AKB48のシングルが毎回ミリオン(100万枚)を突破してきたのは姉妹グループの力があったからこそだと考えています。もちろんそのことはすごく感謝していますし。逆に言うと、今回のシングルは「AKB48だけでできるの?」と真価が問われているはずです。メンバーも気合いが入っているし、団結力をいつも以上に感じています。

向井地 それは同感。選抜メンバーの雰囲気がいつもと違うんですよね。

岡田 今まではいろんな地方からメンバーを調整して呼んでいたから、なかなか一緒にまとまってレッスンすることができなかったんです。交流する機会も少なかったですし。メンバーがずっと一緒にいる今回は、気持ちの面での変化が大きいかもしれない。

村山 「根も葉もRumor」は難易度が高いロックダンスが注目ポイントなんですけど、個人で練習できる類のものではないんです。みんなでそろえることで初めて完成するダンスなので。今回はAKB48のメンバーだけだったからこそレッスンの時間が多く取れたわけですし、その結果、ロックダンスを完成させることができました。センターに立つなぁちゃん(岡田)からも、いつも以上に輝きを感じます。

岡田 (はにかむように)本当ですか? ありがとうございます。

村山 これは本当! なぁちゃんが先頭に立って引っ張ることによって、ほかのみんなも「私もがんばらなきゃ」と一丸になっている部分はあります。

下尾みう

下尾みう 個人的な話をすると、私が選抜メンバーに選ばれたのは約2年半ぶりで3回目なんです。とはいっても、過去2回は3列目の端っこ。今回は初めてのフロントメンバーなので、本当にうれしくて……。初選抜も横山結衣ちゃん、谷口めぐちゃん、千葉恵里ちゃん、西川怜ちゃんと4人もいるし、新しいAKB48が始まっていくという感覚があります。

──確かにフレッシュな顔ぶれが並んでいますよね。

下尾 今回はとにかくダンスに力を入れた曲ですから、選抜されたメンバーや立ち位置もダンスというコンセプトに合わせて決められていると思うんです。そういうやり方自体も今までになかったので、これが新しいAKB48なんだろうなと感じていますね。ダンスに限らず、「私も自分の得意なことを伸ばしていけばチャンスがある!」とみんなが考えるようになれば、全体に活気が出てくるはずです。

左から下尾みう、向井地美音、岡田奈々、本田仁美、村山彩希。

──こうなると改めて問われるのは「AKB48独自のカラーとは?」という点だと思うんです。ズバリ「今のAKB48」の強みってどこになりますかね?

向井地美音

向井地 姉妹グループのメンバーは、やっぱりそれぞれが守るべき地元の看板があるんですよ。当然、「名古屋が一番!」「いや、大阪が一番!」と本音では思っていますし。つまり今まではAKB48の活動でアピールしつつ、地元のグループにもファンを呼びたいという考えがどこかにあったと思うんです。もちろんそれは決して悪いことではなく、そのバチバチ感がプラスに作用した面も大きかったと思います。

岡田 地区代表が全国から集まって、AKB48で競い合っているような感覚はあったかもしれないです。

向井地 そう。ところが今回は全員がAKB48の看板を背負った状態。これは意味合いがまったく違ってきますよ。向いている方向が一緒だから、表現できる内容も自然に変わってきます。

──セールス的な意味でのプレッシャーはいかがですか? コロナ禍の中でのリリースは、AKB48にとって最大の武器である握手会に頼れないという側面があります。

本田仁美 握手会が以前のようにできないことは残念ですけど、今はSNSを使って自分たちで発信できる時代ですから。AKB48もいろいろ仕掛けていますし、積極的に動いていれば誰かに届くとは思うんです。ファンの方と対面で直接お話できなくても、なにかしらほかの方法がないのか試していく時期なのかなと。

岡田 ある意味、チャンスかもしれないですよね。

本田 それはあると思います。例えばライブが配信されたら、日本だけじゃなくて海外の人も観てくれますからね。SNSでAKB48の情報を海外に届けることも可能だし、やり方次第だと思うんですよね。

向井地 さすがに“世界を知る女”が言うと説得力があるなあ(笑)。

本田 いやいや、やめてください(笑)。

村山彩希

向井地 でも真面目な話、SNSは真剣に私たちも考えていかなくちゃいけないところだと思っているんです。コロナ禍の影響で自粛期間に入ってから私たちは「OUC48」というYouTubeを使った自宅配信プロジェクトを立ち上げたんですけど、これもメンバーがスタッフさんに「やらせてください」と頼んだものだったんですね。岡部麟ちゃんとかチームのキャプテンが中心になったLINEグループがあって、そこでアイデアを出し合って決めたんです。

岡田 うん、あれはAKB48にとって大きかったかもしれない。

向井地 「自分たちで考えてスタッフさんに提案する」というのは、コロナ禍で変わった大きなポイントだと思います。結局、それがSNS関連にも表れていて、最近だとTikTok活用にもつながっているはずです。

村山 劇場公演にしても、16人出演のところが半分の8人になって……。それはコロナ禍だから仕方ないことではあるんですけど、「だったらこういうメンバーで、こんな立ち位置はどうですか?」とメンバーから意見を出すようになりました。

岡田 もちろんこの風通しのよさは、みーおん総監督の力によるところが大きいとは思います(笑)。

向井地 いやいや、メンバーみんなの力です(笑)。でも自主性を大事にするのはすごくいいことだと思うから、これからもそこは伸ばしていきたいですね。