アイドルにとって一番大切なことは?
──さてここで5人それぞれにお伺いします。アイドルにとって一番大切なことはなんでしょうか? ご自身がアイドルとして大事にしていることはなんですか?
向井地 改めてそう聞かれると難しいですね。この質問、メンバーによってアイドル観の違いがけっこう出ると思います。
──そうかもしれません。では最年少の山内さんからいってみましょう。
岡田 素敵! 初々しい!
向井地 イラストのステッキがいい味出しているよね(笑)。
山内 思い返してみると、幼稚園で「大きくなったら何になりたい?」って聞かれたら私は「アイドル!」と答えていたんですよ。
峯岸 えっ! そんな小さいときから?
山内 はい。とはいえ幼稚園児だから深い考えがあって発言したわけではないんです。自分が歌って踊ることで、周りの人が笑顔になってくれたらいいなとは感じていたんですね。
村山 いや、幼稚園児としては十分に立派だよ。
岡田 私なんて幼稚園のときは「お金持ちになりたい」とか短冊に書いていたな(笑)。
山内 ただそう言ったはいいけど、アイドルという職業もよくわかっていなかったんですよ。それもあって、小学校に入ってからはミュージカル女優になりたいと思うようになったんです。
──「歌とダンスで周りを笑顔にする」という考え方自体は変わらなかったわけですね。
山内 そういうことになります。自分がミュージカルの舞台に出演させてもらうようになったとき、そこで宮脇咲良(HKT48、現在IZ*ONE専任活動中)さんに出会うんですよ。まだ咲良さんがHKT48に入ったばかりの頃でした。そこから咲良さんは選抜に入ったり、AKB48選抜総選挙で世間から注目されたりして、どんどん有名になって輝きを増していき……ますます私も憧れるようになりました。
峯岸 そうか。それでミュージカル志望から再びアイドルを目指すことになったんだね。
山内 はい。でも自分の中で心がけていることは結局、幼稚園の頃から何も変わっていないのかもしれません。とにかく見てくれている人を笑顔にしたい。幸せにしたい。それだけなんです。
向井地 流行りの言葉で攻めてみました(笑)。青春という時期を一緒に過ごせる仲間たちが周りにいる。それって本当に素敵なことだし、アイドルの特権だと思うんです。もともと私、学校が大好きだったんですよ。イベントがあるとみんなで熱くなったり、夢を一緒に追いかけたり……だけど学校を卒業すると、そういう機会って普通はなかなかないと思うんですよね。
峯岸 確かに。大人になると難しいかも。
向井地 一時期は本気で学校の先生になろうとしていたくらいで。そんな私が「大声ダイヤモンド」(2008年)のMVを最初に観たとき、「これだ!」という感覚があったんです。青春特有のキラキラした感覚がすごくあふれ出ていたんですよ。私、本当に泣きそうになりましたから。
岡田 その感覚、すごくわかるな。
向井地 私がAKB48で驚いたのは、AKB48選抜総選挙などを通じて人生のつらい部分も見せていくというところでした。そしてメンバーがそれを乗り越えていく。そういうところに青春を感じるんですよね。だから私たちが一生懸命に活動することで、ファンの方も青春の熱い気持ちを思い出してくれるといいなって。それはいつも真剣に考えています。
岡田 アイドルである前に、私たちは1人の人間。人間として嘘をつくことはいけないと思うんです。ファンの方に嘘を付かないのは当然だけど、自分の気持ちにも嘘はつきたくない。つらいときはつらいと素直に言うし、楽しいときは楽しいと伝える。大袈裟に言えば「正直に生きる」ってことですね。私は自分の気持ちに正直なパフォーマンスがしたいですし、握手会でも正直な言葉を伝えたいんです。
──どこまでもリアルでありたいということでしょうか。
岡田 そうですね。キラキラしているかわいいアイドルももちろん素敵だと思います。だけど、人間味が出ているほうが応援していただいている方に、より感情移入していただけると思うんです。アイドルにはいろんなスタイルがありますけど、少なくてもAKB48はそういうグループじゃないかと私は思います。
村山 私は昔からAKB48が大好きでした。だけど最初は振りコピとかをしているだけの単なるファンだったんですよ。そんな私を見て、お母さんが勝手にオーディションに応募して今に至るわけですけど……気付けば、あれから何年も経ちました。私の立場も大きく変わりました。だけど、あのとき柏木由紀さんを必死で推していた気持ちは絶対に忘れたくないんです。
向井地 そういうことか。それってすごく大事な初心だよね。
村山 あとは私自身もメンバーになったわけだから、あのとき私が柏木さんに抱いていた「うわっ、かわいい!」という感動を、ファンの皆さんにも与えられる存在になりたいんです。それで今のAKB48を少しでも好きになってもらえたらうれしいなって。
岡田 いやー、素晴らしい考え!
村山 あれは、どれくらい前の出来事だったかな。何周年かを祝うために、AKB48劇場に全メンバーが集まる機会があったんですよ。まだ入ったばかりの私たち13期生も参加させていただいたんですけど、そこで見た神7のキラキラした姿がまぶしくてまぶしくて……もう本当に実在しないものを目撃した気分でした。今の新人ちゃんが私たちを見てそんなふうに感じるとは思えないけど、そう感じてもらえるような存在に自分もなりたいです。
──「あの頃とは時代が違うから」と言い訳にしたくないわけですね。
村山 はい。あと、あのときに改めて感じたのはAKB48にとっての劇場の大切さなんですよね。だから私自身、劇場をすごく大事にしていますし。たしか1期生のみいちゃん(峯岸)はもうすぐ出演1000回に到達するんですよね?
峯岸 うん、あと1回だね(※取材は2月中旬に実施)。
村山 私も劇場公演1000回を達成したメンバーの1人として、みいちゃんが卒業しても原点である劇場は絶対に守り続けたい。劇場ならではの楽しさを届け続けたい。やっぱり私たちにとっては劇場が原点……つまり初心を思い出させてくれる場所ですから。
峯岸 自己肯定するわけでは決してないんですけど、アイドルが虚構だった時代は終わってしまったんじゃないかと感じることがあるんです。“花の〇年組”とか呼ばれていた昭和のアイドルさんは、プライベートで何をしているかなんて誰もわからなかったじゃないですか。メールやSNSもなかったし、下手したら「トイレも行かないんじゃないの?」みたいな幻想がありましたし。そういう完璧なアイドル像、私は本当に素晴らしいなと感じるんですけど、今のアイドルファンが求めているものは少し違うのかもしれないとも思っていて。今はその子が背負っているストーリーが濃厚になればなるほど感情移入できるというか……ステージを降りた素の姿も込みで、アイドルは見られている気がするんですよね。
村山 確かにそうかもしれない。
峯岸 そもそも私自身が正統派アイドルになれる器じゃなかったというのもあります(笑)。逆に言うと自分みたいな人間がアイドルとして勝負できるのは、そういった“素の生き様”みたいな部分しかなかった。私がみんなに伝えられることがあるとしたら、これくらいしかないですよ。
山内 すごい……とても含蓄があるお言葉です。
峯岸 私みたいになってほしいという意味じゃないから、そこは誤解しないでね(笑)。
──そんな峯岸さんから見て、若手陣の中で「生き様がすごい!」と感じるメンバーは?
峯岸 うーん……なあちゃん(岡田)じゃないかな?
岡田 えっ!? 私22歳なんですけど、若手扱いしてもらって大丈夫ですかね?
峯岸 そこは大丈夫(笑)。なあちゃんの場合、話題になったAKB48選抜総選挙のスピーチがあったじゃないですか。精神的に不安定になったということを告白していましたけど、本来そういうのってアイドルがわざわざ人前で言うことじゃなかったはずなんです。だけどあえて口にすることで、同じような悩みを抱える多くの人に勇気を与えたと思うんですよね。キラキラ輝く存在のなあちゃんだけど、実は苦しい思いを乗り越えて今がある。そこが素晴らしいんですよ。人間味があって。今のAKB48の中で“生き様系アイドル”と断言してもいい存在だと思います。
岡田 ……光栄です。これからも“令和の生き様系アイドル”としてがんばりたいと思います(笑)。
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最後だから! 峯岸みなみ先輩に相談したいこと