あいみょん「猫にジェラシー」特集|「29歳の自分にしか書けない楽曲を、とにかく少しでも多く残したい」 (2/2)

「猫にジェラシー」は初めての

──アルバムタイトルは「猫にジェラシー」で、13曲目には同名の曲が収録されています。アルバムのタイトル曲が用意されたのは初めてですよね。

そう、初めてなんですよ。もともとストックに「猫にジェラシー」という曲があって、それを収録することに決めたんです。で、そのあとにアルバムタイトルをいろいろ考えてはみたんだけど、なかなかしっくりくるものが思い浮かばなくて。そこでふと「猫にジェラシー」ってめっちゃいいかも、かわいいかもと思い、アルバムタイトルにすることを決めました。

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──アルバムタイトルにはこれまでやんわりとルールのようなものがありましたよね。

漢字とカタカナの組み合わせで14文字にしたい、みたいな変なこだわりがありましたね。でも、そういうこだわりって活動が長くなると邪魔になってくる部分もあるというか(笑)。そもそもこだわりがそこまで強いタイプでもないので、もうやめようかなと。純粋に自分がいいと思ったもの、そのときにピンときたものを信じたほうがいいんじゃないかなって今は思っています。漢字とカタカナの組み合わせが好きという自分の嗜好に、「猫にジェラシー」はマッチしてますしね。

──1曲目の「私に見せてよ」はサウンド的にもアルバムの幕開けを強く感じさせる楽曲に仕上がっています。

これを1曲目にすることは最初に決めていたので、アレンジャーのアイゴン(會田茂一)さんにも「オープニング感が欲しいです」というアレンジのリクエストをしました。1曲目にしようと思ったのは曲自体がすごく短いから。ここ最近の傾向ではあるんですけど、アルバムの頭には短い曲とか軽快な曲を持ってきたい気持ちが強いんです。

──4曲目には先ほどお話に出た、2016年に生まれたという「駅前喫茶ポプラ」が収録されています。

メジャーデビューのタイミングに作った楽曲ですね。この曲は前回のアルバム、前々回のアルバムのときにも候補には上がっていたんですよ。でもなぜかいつもほかの曲に負けてしまっていて。なので今回は絶対に収録してちゃんと成仏させたかった(笑)。当時のデモは声質もめっちゃ若いし、安いボロボロのギターを使ってたから音も変だったんですけど、それをSundayカミデさんにアレンジしていただいたことで、ちゃんと2024年の「駅前喫茶ポプラ」になった気がします。

──この曲はアレンジに時間がかかったと伺いましたが。

そうなんですよ。「もっとこうしたい」っていう気持ちが私の中でもあふれていたので、Sundayさんとかなり細かくやりとりさせていただいて。「管楽器を入れたいです」っていうオーダーをしたり、ピアノのフレーズも一緒に考えさせてもらったりしましたね。Sundayさんとの制作は高校や大学の軽音楽部でバンドをやってるような感覚になれるので、すごく楽しいですね。楽しすぎたので、Sundayさんに無理やり歌ってもらったところもあります。「え、これ大丈夫⁉」って言ってましたけど(笑)、めっちゃいい声だったのでそのまま採用させてもらいました。

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今さら自分のイメージはどうにもできない

──中盤には、ちょっとドロッとしたままならない恋模様を描いた「炎曜日」「偽物」「朝が嫌い」が並んでいます。こういった世界観を思い切り描けるのはあいみょんさんならではですよね。

うれしいです。自分としても、こういうところが得意分野だと思っている節はあって。クズっぽい女性とか、どうしようもない女性像を描くにあたってはもうネタが尽きないと言いますか(笑)。リアルかどうかは置いといて、自分の頭の中にはこういうドロドロとした情景はけっこう浮かんできやすいんですよね。歌詞をじっくり読んでもらうと面白いタイプの曲だと思います。

──「リアルかどうかは置いといて」とおっしゃいましたけど、こういうタイプの曲を書くのってなんとなくリスキーじゃないですか。曲の主人公=あいみょんさんだと思われてしまう可能性もあるわけなので。

デビューしたての頃は、「すべて自分の実体験ではないです」「全部妄想なんで」って突っぱねたりしてたんですよ(笑)。でも、どの楽曲にも少なからず自分の経験が生かされてますし、そのうえでフィクション / ノンフィクションがある。稀に完全なるノンフィクションが生まれるときもありますけど、基本的にはごちゃ混ぜです。例えば失恋をしたときに、本当は自分がフラれた立場だけど、曲の中では自分からフったことにできてしまうわけで。自分の経験を重ねつつ、自由自在に嘘がつけてしまうのが曲を作る面白さだと思いますね。だから、それを実体験だと感じてもらっても今の私としては全然平気というか。「あいみょんってこういう経験してんねや」と思われても全然大丈夫です。そもそもデビュー曲が「貴方解剖純愛歌~死ね~」ですからね。今さら自分のイメージはどうにもできない(笑)。それぞれの受け取り方で楽しんでもらえればそれでいいですね。たくさん妄想していただければと(笑)。

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──7月に先行配信され、大きな話題を呼んだ「ざらめ」も収録されていますね。この曲はドラマ「降り積もれ孤独な死よ」の主題歌です。

原作のマンガを読んだうえで書き下ろさせていただいたんですけど、ここ最近のタイアップ曲の中ではわりとスラッと書けましたね。サスペンスドラマの主題歌は初めてでしたし、ちょっとダークな内容でもあったので、それにかこつけて自分の気持ち、自分の色をけっこう押し出したところがあって。もちろん作品のことを考えながら書きましたけど、冒頭から最後までずっと私自身が思っていることが出ているような気がします。それが少しでもドラマの主人公と重なる部分があったらいいなという。

──こういう痛みや鋭さを描く側面もやっぱりあいみょんさんの大事なカラーとして存在していますよね。

デビュー当時のイメージが強いから、鋭さや痛みみたいな感情を求められることはやっぱり多いですね。一方で最近は「マリーゴールド」や「ハルノヒ」のようなミディアムバラードのイメージを強く持ってくださっている方も多いような気がします。ただ、私としてはどこかひとつの時期に留まっている気持ちはないし、自分の中にあるいろんな振れ幅を見せてきたいんですよね。だから、いろんな私を楽しんでいただけたらなと思います。もちろん、聴いてくださる方それぞれの理想像みたいなものはあってもいいですし。ただ、「あいみょん、丸くなったな」って言われるのはすごくキライ。「だって私はもともと、丸いもん!」って思うから(笑)。家族思いやし、尖ったことなんて今まで一度もなかったですから。「丸いほうがいいやん」と思うので、それをあえて言われるのは許せないかなあ(笑)。まあそこもね、いろんな受け取り方があるんやなと思えば面白いんですけどね。

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結局みんな猫にやられちゃう

──アルバムの最後に収められているのはタイトル曲「猫にジェラシー」です。アレンジャーはトオミヨウさんで、「ざらめ」と同じ方が手がけたとは思えない、ほっこりとした仕上がりですね。

アレンジは「猫にジェラシー」のほうが先にできました。トオミさんの振り幅もめっちゃ広いなって改めて思いました。猫はね、ホントいいんですよ。かわいいですもん(笑)。不思議な魅力がある生き物である猫にさえヤキモチを焼くくらい君のことが好き、というラブソングを書きました。

──この曲の主人公は猫にヤキモチを焼きつつ、結局は猫の魅力にやられてしまっていますけどね。

そうそう。みんな結局、猫にやられるんですよね。そこがポイントです。猫強し! この曲名をアルバムタイトルにしたことで、ジャケット撮影で猫のハレオくんに会えたのもうれしかったですね。私は猫アレルギーなんですけど、そんなことさえ気にならないくらい、猫の魅力にやられています。皆さん、猫にジェラシーしてください(笑)。

──9月には、来年2月まで続く全国ツアー「AIMYON TOUR 2024-25 “ドルフィン・アパート”」がスタートします。

めちゃ長ですよ! しかもツアータイトルが「ドルフィン・アパート」ってね。猫じゃないんかいっていう(笑)。大きな会場を巡るツアーなので、「こんなん絶対埋まるわけない」といつも通り不安になってますけど、ライブはやっぱり楽しいですから。会場が大きくなると初めて私のライブに来てくれた方が多くなるのもうれしいんです。私にもまだ伸びしろがあるんじゃないかなと思えて(笑)。初めて来るお客さんと、何度も来てくれているお客さんがいい関係で一緒に盛り上がれるようなライブができたらいいなって思います。体調に気を付けてがんばります。お酒飲んでばっかりじゃあかんなーって思い始めているところです(笑)。

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ライブ情報

AIMYON TOUR 2024-25「ドルフィン・アパート」

  • 2024年9月28日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
  • 2024年9月29日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
  • 2024年10月8日(火)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
  • 2024年10月9日(水)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
  • 2024年10月19日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2024年10月20日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2024年10月26日(土)静岡県 エコパアリーナ
  • 2024年10月27日(日)静岡県 エコパアリーナ
  • 2024年11月9日(土)神奈川県 Kアリーナ横浜
  • 2024年11月10日(日)神奈川県 Kアリーナ横浜
  • 2024年11月16日(土)東京都 有明アリーナ
  • 2024年11月17日(日)東京都 有明アリーナ
  • 2024年11月23日(土・祝)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
  • 2024年11月24日(日)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
  • 2024年12月7日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
  • 2024年12月8日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
  • 2024年12月14日(土)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
  • 2024年12月15日(日)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
  • 2024年12月21日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
  • 2024年12月22日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
  • 2025年1月8日(水)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
  • 2025年1月9日(木)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
  • 2025年1月18日(土)愛媛県 愛媛県武道館
  • 2025年1月19日(日)愛媛県 愛媛県武道館
  • 2025年1月25日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2025年1月26日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2025年2月1日(土)沖縄県 沖縄アリーナ
  • 2025年2月2日(日)沖縄県 沖縄アリーナ
  • 2025年2月12日(水)大阪府 大阪城ホール
  • 2025年2月13日(木)大阪府 大阪城ホール

プロフィール

あいみょん

1995年生まれ、兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手になることを夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。若い世代を中心に支持を集め、2018年年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場した。2019年2月には初の東京・日本武道館単独公演「AIMYON BUDOKAN -1995-」を弾き語りスタイルで開催。4月には「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌を表題曲とするシングル「ハルノヒ」を発表する。以降もTBS系ドラマ「私の家政夫ナギサさん」の主題歌「裸の心」、TBS系ドラマ「コントが始まる」の主題歌「愛を知るまでは」など、数々の作品で主題歌を担当。また、RADWIMPSや菅田将暉、平井堅とのコラボレーションでも注目を浴びる。2022年8月には4thアルバム「瞳へ落ちるよレコード」をリリースし、11月には自身の地元である兵庫・阪神甲子園球場での弾き語りライブを成功させた。2024年9月に5thアルバム「猫にジェラシー」を発表。同月よりライブツアー「AIMYON TOUR 2024-25」を行う。