あいみょん「愛の花」インタビュー|“まだ見ぬ花”咲かせるための人生に思い寄せて (2/2)

感情のコントロール

──好きなことに没頭して周りが見えなくなる万太郎と、それを辛抱強く支える寿恵子さん。あいみょんさんはどちらに共感しますか?

私はもう、完全に万太郎ですね(笑)。好きなことに夢中になってしまうタイプなので。ドラマの中で今、万太郎はすごくつらい立場にいるんですよね。好きで夢中になっていることがあるのに、酒蔵の当主としての責任を求められている。私は「つらそうだなあ」と思うんだけど、でもドラマの感想をSNSなどで読むと、わりと千差万別なんですよ。「当主なんだからしっかりしなきゃダメでしょ!」という意見もあれば、「好きなことを我慢させられててかわいそう」という意見もあって。

あいみょん

──「やりたいこと」と「やるべきこと」、どちらを優先させるかという。

そう、めちゃくちゃ難しいんですよ。今これをやらなきゃいけないのはわかってるけど、どうしても映画が観たい、美術館に行きたいっていうときあるじゃないですか(笑)。そんなとき、どっちが正解かもわからないですよね。結果論でしかないというか。

──もしかしたら、そのときに観た映画がのちの作品作りに生かされるかもしれないですし。

それが全然生かされないんですよ(笑)。もう、ただシンプルに「あの映画が観たい!」「あの絵画が観たい!」というだけの話なので。ただ、そうやって「やりたいこと」を優先させたことは、自分の感情のコントロールにはなっているかもしれない。「よし、明日からがんばろう」と思えるし、日常生活の中で感情のコントロール……特に怒りのコントロールは大事だと思っています。自分に向ける怒りは別にいいですが、他者に対する怒りの感情とはうまく付き合っていかなければと思うことはあります。だから、普段誰かに対して怒りをぶつけたことってないんですよ。そもそも怒らないし。

あいみょん

──そうなんですね。

誰かに対して「なんじゃい!」って思うのは、せいぜい年に1回くらいかなあ。それくらい、他人に無関心なのかもしれない。とにかく面倒くさいことになるのがすごく嫌なんです。例えば映画館に行ったときに、誰かが間違って私の予約した席に座っていたとしたら、その人に声かけられないんです。それで面倒くさいことになるくらいだったら、私が別の席に座ればいいかなと思ってしまう。レストランでオーダーしたものとは違う料理が運ばれてきたとて、「違いますよ」と言うのも面倒くさくて。「ま、いっか」となるんです(笑)。とにかく、怒りにつながりそうなトラブルは、最初から避けて通るようにしていますね。

──怒りって、一度表に出てきてしまうと矛を収めるのに苦労するので、その前に回避するのは良策かもしれません。

他者に対してでなく、社会に対する怒りや反骨精神みたいなものはあると思います。「なんでもっとこうじゃないんだ」と思っていることはあるんですけど、それをあえて世の中に発信することはないかな。発信するとしたら、それは作品として吐き出していると思いますね。……とか言いつつ、最近Twitterでなんか書いちゃったな。「ふざけんな!」みたいなこと。あれ? めちゃくちゃ怒ってました(笑)。

あいみょん
あいみょん

常に、喜びと怖さは一緒に存在している

──歌詞に戻ると、「恋に焦がれた人は 人は 天の上」「いつかあの場所で強く 強く手を結び抱いて」など、亡くなった人への思いをつづるフレーズがちりばめられています。聴き手はおそらく、大切な人を失ったあとのことを想像すると思うのですが、このフレーズにはあいみょんさん自身のそういった視点も入っていますか?

私の楽曲には、これまでにも自分の死生観をつづったものがあるのですが、私自身は近しい人を失うという経験がまだそんなにないんです。なので、「もし両親がいなくなってしまったら」「おばあちゃんがいなくなってしまったら」と想像して書くことが10代の頃から多くて。今回もそれに近いんですけど、ただ身近な人の死については以前よりも考えることが増えました。自分が年齢を重ねているということは、両親も一緒に歳を重ねているわけですし。帰省してひさしぶりに両親に会ったときも、「歳をとったな」という切ない気持ちと、「でも元気でいてくれてありがたいな」といううれしい気持ち、両方が押し寄せてきて不思議な感覚になります。もっと親孝行したいなとか、そういう気持ちが増しているので、死生観をテーマにした歌詞も少しずつ変わってきているのかも。

あいみょん

──「木漏れ日と笑う 大切な人を 失う未来なんてこないで?」という歌詞も、以前より切実さが増しているように感じます。

私は大家族なので、姪っ子や甥っ子も多いんです。家族が増えることはすごくうれしいけど、その分失うものも増えるじゃないですか。だから心配で心配で、ずっと疲弊し続けているんですよね。常に、喜びと怖さは一緒に存在しています。

カルシウムが足りてないんじゃない?

──カップリング曲「彼氏有無」はまた、「愛の花」とは全然タイプの違う曲で意表を突かれました。

変な曲ですよね(笑)。あえてへなちょこなアレンジにして「愛の花」とのギャップを楽しんでもらえたらと思いました。

──こういう男性目線の曲はあいみょんさんのレパートリーに多いですが、男性の立場を想像して書いているのでしょうか。それとも自分の心情を、そのまま男性に置き換えてみているのですか?

ちょっと複雑なんですけど、基本的には私が経験したことを男性目線で書いています。私自身がデート中にすっごく不機嫌だったことがあって、「きっとあのとき、相手は私のことをこんな感じで思っていたんやろうな」「あのときの私、きっとめんどくさかったやろうなあ」などと想像しながら書いていますね。よく、イライラしていることに対して「カルシウムが足りてないんじゃない?」と言うじゃないですか。そういう意味なんです、この曲は。

──え、どういうことですか?

(笑)。この歌詞の中の不機嫌ガールがずっとイライラしていて「今の君に足りないものを 僕が全部あげるから」と言っても、それでも機嫌が直らない。「じゃあ、僕という彼氏がいてもいなくても、どっちでもいいんじゃない?」という気持ちと、「カルシウム足りてないよ?」をかけて、「彼氏有無(カレシウム)=カルシウム」という言葉遊びのタイトルなんです。

あいみょん

──ああ! なるほど、今気付きました(笑)。この曲に出てくる不機嫌ガールも、彼女に翻弄されている彼氏も、かわいらしくて憎めないですね。「血塗れのドクター彼女の脳みそを割って診ておくれ」という展開部分の歌詞もホラーっぽくて笑えるし。

そこはアレンジもちょっと不思議な感じにしてもらいました。私、よく「脳みその中がどうなってるのか見てみたい」と言われるんですけど、それは私も同じ。自分の脳みそを覗き込んでみたいです。だって、手がつけられないくらい不機嫌になったときとか、じゃあ結局何をしてほしいと思っているのかとか、自分でもわからなくなりそうなので。そういう、自分が経験した理不尽ないら立ちを、男性の立場になって書いてみた曲なんですよね。

バリ面倒くさいんですよ、女性は

──手がつけられないくらい不機嫌になった相手に対し、男性はどうしたらいいのでしょうか。放っておくのがいいんですか?

放っておいたらおいたで怒られますよ。「なんで放っておくねん!」て。バリ面倒くさいんですよ、女性は(笑)。私が思うに、そういうときはお花を贈るのがいいと思います。「愛の花」にかけているわけじゃないですけど。

あいみょん

──あははは。「彼氏有無」の主人公みたいに、「物で釣るな!」と怒られませんか?

お花は物とはちょっと違うんですよ。お花をもらうと、速攻で機嫌よくなると思う。女性とその話をすると、たいていの方は「ホント、それそれ!」って言いますね。お花って、男性が1人で買いに行くのにはちょっとハードルが高いじゃないですか。なのに自分のために選んで買ってきてくれたと思うと、やっぱりほかのものよりもうれしいんですよね。それに、お花って部屋に飾っておくとしばらく咲き続けるじゃないですか。それを眺めているうちに、相手へのイライラもなくなってるんです。

──なるほど、参考になります。

ふふふ。とはいえ、当然そのときの機嫌次第ですからね。お花でもダメなときはダメ。要するに、バリ面倒くさいんです!(笑)

あいみょん

ツアー情報

AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム-

  • 2023年4月7日(金)神奈川県 よこすか芸術劇場
  • 2023年4月12日(水)長崎県 長崎ブリックホール
  • 2023年4月14日(金)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
  • 2023年4月18日(火)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2023年4月19日(水)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2023年4月26日(水)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
  • 2023年4月27日(木)愛媛県 愛媛県県民文化会館
  • 2023年5月1日(月)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2023年5月9日(火)福井県 フェニックス・プラザ
  • 2023年5月11日(木)富山県 オーバード・ホール
  • 2023年5月16日(火)三重県 三重県文化会館
  • 2023年5月18日(木)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年5月19日(金)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年5月23日(火)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年5月25日(木)秋田県 あきた芸術劇場ミルハス
  • 2023年5月29日(月)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年5月30日(火)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年6月13日(火)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2023年6月14日(水)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2023年6月19日(月)北海道 函館市民会館
  • 2023年6月21日(水)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2023年6月22日(木)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2023年6月30日(金)栃木県 宇都宮市文化会館
  • 2023年7月4日(火)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年7月5日(水)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年7月7日(金)岡山県 倉敷市民会館
  • 2023年7月12日(水)福岡県 福岡サンパレス
  • 2023年7月13日(木)福岡県 福岡サンパレス
  • 2023年7月19日(水)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年7月20日(木)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年7月23日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA

AIMYON TOUR 2023 -マジカル・バスルーム- ADDITIONAL SHOW

  • 2023年10月3日(火)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年10月4日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年10月10日(火)山口県 周南市文化会館
  • 2023年10月12日(木)岐阜県 長良川国際会議場メインホール
  • 2023年10月19日(木)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
  • 2023年10月25日(水)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2023年10月30日(月)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年10月31日(火)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年11月2日(木)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール

プロフィール

あいみょん

1995年生まれ、兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手になることを夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。若い世代を中心に支持を集め、2018年年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場した。2019年2月には初の日本武道館単独公演「AIMYON BUDOKAN -1995-」を弾き語りスタイルで開催。4月には「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌を表題曲とするシングル「ハルノヒ」を発表する。以降もTBS系ドラマ「私の家政夫ナギサさん」の主題歌「裸の心」、TBS系ドラマ「コントが始まる」の主題歌「愛を知るまでは」など、数々の作品で主題歌を担当。また、RADWIMPSや菅田将暉、平井堅とのコラボレーションでも注目を浴びる。2022年8月には4thアルバム「瞳へ落ちるよレコード」をリリースし、11月には自身の地元である兵庫・阪神甲子園球場での弾き語りライブを成功させた。2023年6月に、NHK連続テレビ小説「らんまん」の主題歌を表題曲とするシングル「愛の花」をリリースした。