ナタリー PowerPush - aiko

3つのインタビューで紐解く「時のシルエット」

自分ひとりでやってるなんて1回も思ったことない

──14年間ずっと謙虚な姿勢でいるaikoさんですが、これまでの活動を振り返ってみて、自信を持っている部分があるとしたらどこですか?

自信というより、今までずっとやってきたから実現できたんだなって感じるのは、4年前の「LOVE LIKE ALOHA vol.3」(※2008年8月30日に神奈川・サザンビーチちがさきで行われたフリーライブ)。あのときは本当に全てが味方してくれたなって思います。

──あの日、会場では激しい雨が降っていて、中止の可能性もアナウンスされましたが、ライブ開始直前に雨が止んで最後まで行うことができたんですよね。

私はリハもできないし、音環境も含めスタッフのことを信じて歌うしかなかったんです。会場に来てくれたお客さんも最後まであきらめずに待ってくれて、私の歌をみんなで歌ってくれて。スタッフの人たちはビショビショになって機材を守ったり、お客さんに雨よけのブルーシート配ったりしながら、みんな「やろう!」って背中押してくれたんですよ。で、もう気持ちだけで乗り越えたときに、すごく声が、思ってる以上の声が出たんです。ほかにもみんなで一緒に作り上げた時間はいっぱいあんねんけど、あのALOHAは本当にすごかったなって思いますね。

──お客さんはもとより、スタッフもaikoさんにとってかけがえのない存在なんですね。

そうですね。自分ひとりでやってるなんて1回も思ったことない。音楽を作る最初の作業は私がやってるけど、私もみんなで作ってるパズルのひとかけらだと思ってるんです。

──自分自身にはそんなに自信がない?

あんまりないですねえ。この性格を嫌だと思うことがよくあって、「催眠術師とか知らないですか?」ってプロデューサーに相談したこともあります。もっと緊張しなくて、こういう後ろめたい性格を直せる催眠術をかけてほしくて(笑)。

──自分を変えたいんですか?

っていう瞬間がしょっちゅうやってくるんですよ。でも最終的には、「私はこんな性格だからこの曲作れたのかもなあ」って思って落ち着くんです。

まだ「歌手」になれてない

──ここまでお話を伺っていて感じるんですけど、「廃業しなければならなくなったらどうしよう」と考えてしまうのも、チラシを作っちゃうのも、デビュー14年目のトップアーティストらしくないというか。

いやいやいやいや! 私は全然ですよ、ホンマに。

──そのようにずっと「まだまだだ」と思っているのは、何か理由があるんですか?

自分の中で想像してる「歌手」になれてないから、だと思いますね。

──aikoさんが想像してる「歌手」って?

もっと自信を持って、もっと胸を張って、好きな服を着て、面白いこともしゃべって、限りなく歌を歌い続けるみたいな。そういうのが自分の中で目標やけど、それに全然到達できてないんです。

──いつか「歌手」になれる日っていうのは来るんでしょうか。

うーん……死ぬ寸前とかになってわかるんかなあ。「歌手やった……!」って(笑)。

ずっと楽しいまま、ずっとうれしいまま14年やれた

──そんな自分の楽曲が長い間たくさんの人に愛されていることについては、どんな気持ちですか?

いや、「愛されてる」なんてホンマなんかって思う。「ホンマにええの?」って。

──だって実際ライブをやればお客さん満員ですし、ものすごい盛り上がってるし、CDも売れてるし。

それでもやっぱり「明日になって変わってたらどうしよう」と思っちゃうんですよ。だからずっと休まず、ツアーもやり続けるし、音も作り続けるんだと思います。

──絶えず走り続けるのは、キツくはないですか?

全然。デビューした頃、ラジオでゲストに来ていただいた方に「ミュージシャンっていうのはね、途中で曲も作りたくなくなるし、つまらないなって思うときは絶対来るよ」って言われて、どうしようと思ったけど、今でも知らない世界がいっぱいあって、何枚も壁があるんですよね。だけど日々更新していって、つらいことがあっても忘れていく。だから、ずっと楽しいまま、ずっとうれしいまま14年やれた。そう思います。これからも日々を重ねて、曲を作り続けたいし、みんなにもライブで会いたいですね。

インタビュー写真
収録曲
  1. Aka
  2. くちびる
  3. 白い道
  4. ずっと
  5. 向かいあわせ
  6. 冷たい嘘
  7. 運命
  8. 恋のスーパーボール
  9. クラスメイト
  10. 雨は止む
  11. ドレミ
  12. ホーム
  13. 自転車
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aiko(あいこ)

1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビューを果たす。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとして人気を不動のものとする。女性の恋心を綴った歌詞と絶妙なコード進行によるポップなメロディで幅広いファンを獲得している。2011年には、デビュー13年目にして初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時リリース。2012年6月に10thオリジナルアルバム「時のシルエット」を発表した。


2012年6月22日更新