Age Factoryが2枚目のフルアルバム「GOLD」 を10月10日にリリースした。本作は「聴いた人を変えられるアルバムを作ろう」という強い考えのもと作られたという。
今作の発売を記念して音楽ナタリーでは、Age Factoryの清水エイスケ(Vo, G)と、かねてより「Age Factoryは時代を変えるかもしれない」とSNSなどで絶賛している10-FEETのTAKUMA(Vo, G)との対談を企画した。清水が本作に込めた思いや、TAKUMAがAge Factoryに感じている可能性などについて話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 草場雄介
こんなカッコいい音楽がコンビニで流れるなんて
──以前、TAKUMAさんはTwitterに「My Hair is BadやAge Factoryのライブ見てると"こういう奴らが日本のロックの基準と可能性を根こそぎ変えて行くんやな~"て思う。すごいドキドキする」と投稿されていましたが、TAKUMAさんがAge Factoryを知ったのはいつですか?
My Hair is BadやAge Factoryのライブ見てると"こういう奴らが日本のロックの基準と可能性を根こそぎ変えて行くんやな~"て思う。すごいドキドキする。ラップのスタンダードを大きく改革したTHA BLUE HERBに出会った時の衝撃に通ずるモノがある。あと岡崎体育w床板を一旦全部外すぐらいの革命家達。
— タクマ 10-FEET (@takuma10feet) 2018年8月13日
TAKUMA(10-FEET) ある日、夜中にセブン-イレブンに行ったら、すげえカッコいい曲が流れてて。それを携帯のアプリで調べたらAge Factoryの「Seventeen」(2016年10月発売の1stフルアルバム「LOVE」収録)やった。そこから周りの友達に「Age Factoryっていうすげえカッコええバンドがいるぞ」って言ってるうちに、知り合いの知り合いっていうことが発覚してきて……猪狩(秀平 / HEY-SMITH)とつながってたり、椎木(知仁 / My Hair is Bad)と対談してたり。
──音楽ナタリーの記事ですね(参照:Age Factory「LOVE」発売記念 清水エイスケ × 椎木知仁(My Hair is Bad)インタビュー)。
TAKUMA 忘れもせん、初めて聴いたのは新聞コーナーの前や。「セブン-イレブンにこんな音楽流れるか? バイトのやつの私物のCDちゃうん? こんなカッコいい音楽がコンビニで流れるなんていい世の中になったなあ」って思ったな。
清水エイスケ(Age Factory) この話、初対バンのときに教えてもらいました。僕は普段街中でBGMとかに意識を巡らせてないから、そうやって聴いてくれる人がいることがまずうれしかったし、それがTAKUMAさんなのでさらにビックリしました。
TAKUMA 音楽的に、セブン-イレブンで流れてることにいい意味での違和感があったんですよ。こういう泥臭い音楽ってコンビニでは鳴らないと思ってたから。僕はロック好きやからこの泥臭さを超えたカッコよさが聴いた瞬間にわかったけど、コンビニに来た普段ロックとかを聴かないような人にこのカッコよさがわかるんかなと。言い方悪いですけど。
清水 ははは(笑)。
TAKUMA ライブがいいのか、見た目がいいのか、その音楽性が認められてるのかわからんけど、何にせよ、このバンドはこの音楽をコンビニまで持って来たのかと思ったら「時代が変わるのかもしれない」「みんな立ち上がるのは今やぞ!」と思った。コンビニまで届けられた何か……ロック好きな僕が思っている以上のよさとか可能性があるんやろうなって。その余白にドキドキしました。ロックを聴かない人とロックとの架け橋になると言うか。このカッコよさが伝わる世界なんやったら、ほかにも世界に届くいい音楽いっぱいあるで!って言いたくなったし、僕もがんばろうって思えた。アイドルとかお茶の間に届いてる音楽を好きな人が、Age Factoryも好きっていう国に日本がなったらむっちゃおもろいと思う。それをすげー望んでるし、実際にAge Factoryにはその可能性を感じさせる力と雰囲気がある。
清水 今までは「音楽に対してアイデンティティのある人たちに受け入られたい」「それ以外の人たちはどうでもいい」と思ってバンドやってたんですけど、今回のアルバムを作ってる段階で変化が生まれて。わかりやすく言うと、堂々と「『紅白歌合戦』出たいです」って言いたいと思った。だから今のTAKUMAさんの話を聞いて「自分のやりたいことが伝わってたんやな」って思いました。
TAKUMA 「紅白」出てほしいわあ。
Age Factoryの音楽で誰かを変えられるかもしれない
清水 僕が音楽を始めたきっかけが、誰にも知られずに死ぬのが嫌だっていう理由からだったんです。自分が死んだときに誰かが求めてくれることで自分の価値が生まれると思っていて、それで自分が使ったツールが音楽だったっていう。これが存在意義みたいな気持ちでずっとバンドをやってた。でも最近「Age Factoryの音楽が誰かを変えられるんじゃないか」って思うようになってきて。「聴いた人の心を変えたい、変えられるかもしれへん」っていう自信が出てきたから、「じゃあ聴いたやつを変えるアルバムを作ろう」と思って今回のアルバムを作り始めました。
──「聴いた人を変えられる」と思ったきっかけは何かあったんですか?
清水 「GOLD」という曲ができたことですね。この曲の前に「WORLD IS MINE」ができたんですけど、この曲を作ったときは、わかりやすく言うと「Age Factoryを崇拝する人だけで国を作って、そのままのし上がっていこう」と思ってた。でも「GOLD」ができた瞬間に「これ聴いたやつ全員を汚染させていって、デカいもんを作っていこう」という気持ちになって。アルバムはその考えをもとに作っていきました。
TAKUMA なるほどな。今回のアルバムを聴いて「これまで刀やったんが、薙刀になった」みたいな感じを受けたんです。手前のやつから遠いところのやつまで全部倒せるみたいな。具体的にどういうところが?と聞かれたら説明は難しいんですけど、よりバッサリ切れるようになったことは確か。威力も濃さも失わず、より遠いところに届くアルバムになったんじゃないかなと。よく飛ぶように羽の形を変えました、エンジン変えました、タイヤ変えましたっていう感じはせえへんのに、より遠くまで飛べるようになった感じがするから、すごいことやなって。
清水 そう、「翼を変えた」とか「飛び方を変えた」とかじゃなくて、口だけでイキってたやつが、鍛えてほんまに強くなったみたいな。そういう鍛え方をしたかったんですよね。
TAKUMA ああ、そんなイメージやわ。それが一番難しいし、一番差が出えへんはずやのに、このアルバムには差が出てるな。
清水 今回のアルバムを作るとき、最初にメンバーとそういう話をしました。音色とか音質、アレンジとかで形を変えるんじゃなくて、超努力してとにかくフィジカルを強くしようと。で、次のステージ行っても勝てるようになろうと。自分の根底は絶対に変えたくなくて、でもいろんなステージでいろんな人に聴いてほしい、いろんな人に振り向いてほしいと思ったときに、「じゃあ一番強くなろう」って思ったんですよね。バカな考え方かもしれないけど、倒せへんかったら鍛えるしかないわみたいな感覚です。
──それは、強くなれたら勝てるという自信があったから?
清水 と言うか「俺らもともと強いんで」って感じっすね。俺ら、そんなにナヨくないよっていうのを言いたかった。特に周りの音楽やってる人に対して。
次のページ »
部品を変えずに新しいものを作るすごさ
2018年10月23日更新