音楽ナタリー Power Push - 清水エイスケ(Age Factory) × 椎木知仁(My Hair is Bad)

影響を与え合う関係

清水のライティングに影響を受けた「woman's」

──では10月19日に発売されるMy Hair is Badのアルバム「woman's」についてもお話を聞かせてください。まず清水さんの感想から。

清水 「この人たち、デッカいところでやってきたんだなあ」っていう感じがしました。「デッカいところでやってきた」というのは否定的な意味じゃなくて、デッカいところでやるために必要な音楽的な要素が入っているというか。それがいいエッセンスとして入ってるのを1~4曲目に感じました。で、中盤に進むにつれて椎木くんのやりたいことが入っていって、最終的に「卒業」につなげていく、みたいな。なんか「今までとは違うな」と思いました、俺は。

椎木 なるほど。

清水 パワーアップっていうよりは……飛んでったっていうか。「こんなこともできる人たちだったんだ」っていう印象ですね。

──椎木さんはできあがってみてどうですか?

椎木 今までで一番好きですね。一番聴いてると思う。20代前半の集大成というか。1回終わらせた感じがしますね。今までやってきたこととか、もらってきたものを全部形にしようぐらいの気持ちで曲を書いたので。あとバランスがよくなってると思います。

──なんのバランスですか?

左から椎木知仁(My Hair is Bad)、清水エイスケ(Age Factory)。

椎木 エイスケはキーワードというか、一気に距離感を詰めてくる描写が上手だなと前から思っていて。一瞬で距離を縮められるキーワードを出してくるんですよね。「昨日した鍋とタバコの匂い」(「さらば街よ」)とか。そういうバランスに気を配ろうと思わされたのがAge Factoryだった。だから今回のアルバムを聴いてても、やっぱりそこがいいなと思って、そこに気をつけようと改めて思ったので、たぶんMy Hair is Badのアルバムもバランスがよくなってます(笑)。

──ここでも清水さんの影響が出てるんですね。

椎木 ああ、そういえばAge Factoryの「Tours」も歌詞がよかったね。「テールランプ」っていう単語が出てくるんですけど、うまいなあって。これがあるだけでちょっとこう映えるというか。エイスケは単語を使うのが上手なんだよなあ。「真空から」の歌詞で最初に思ったんだよ。Cメロで突然朝が来るじゃん。

清水 うん。

椎木 あれで「なるほどな」って思ったんだよね。「お見事!」って感じですね。

清水 正直、俺、歌詞に関してはあんまりこだわってないというか。「こんな感じでいいんかな」くらいなんですよね。椎木くんは譜割りも独特だし、韻踏むしすごいなって思ってるんですけどね。

椎木 エイスケの歌詞は、音が鳴ってるって感じがするんだよなあ。

音楽を聴くきっかけになれば

椎木 PVは何曲撮るの?

清水 1曲。「Yellow」ですね。

椎木 1曲のみ? もっと撮りなよ。もったいない。こんないいのに。しかも「Yellow」なんだ。やっぱ感覚違うなー。「Seventeen」は1曲目にしようと思って作った?

清水 「1曲目になるだろうな」と思いながら作っていった。

椎木 なるほど。俺だったら曲順も違ったな……とかね。完全にファン目線なんですよ(笑)。俺だったら「Mother」とかもっと上のほうにしちゃうもんな。

清水 逆に俺My Hair is Badのアルバムだったら「mendo_931」を1曲目にするもんな。しょっぱなの1stパンチとして入れる。

椎木 ほんとに? その感覚ないわ。

──では最後に「LOVE」について、どういう人にこのアルバムを聴いてもらいたいですか?

左から清水エイスケ(Age Factory)、椎木知仁(My Hair is Bad)。

清水 普段音楽を聴かないような人が聴いてどう思われるか想像はつかないんですけど、そういう人にも届く10曲だと思うんです。だから音楽を聴くきっかけになるようなアルバムになればいいなと思いますね。

──椎木さんが、Age Factoryを知らない人にこのアルバムをオススメするとしたらなんてオススメします?

椎木 なんて言うかなあ……うわあ、オススメしないかも。

──それはどうしてですか?

椎木 なんでかはわかんないですけど。もし「最近どのバンドがよかった?」とか「どのCDがよかった?」って聞かれたら絶対にこれをオススメしますけど、自分からは渡したりしないかも。自分の中で大切に聴きたい1枚なのかもしれません。

My Hair is Bad ニューアルバム「woman's」 / 2016年10月19日発売 / EMI Records Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / 4536円 / UPCH-29228
通常盤 [CD] / 3024円 / UPCH-20430
InterFM897「Age Factoryの愛に近づくまで」

2016年10月5日(水)26:00~26:30

<放送内容>
1stアルバム「LOVE」のリリースを記念してAge Factoryの真の魅力に迫るドキュメンタリータッチの番組。ナレーションを担当するのはcinema staffの辻友貴。

Age Factory(エイジファクトリー)
Age Factory

清水エイスケ(Vo, G)、西口直人(B)、増子央人(Dr, Cho)からなるスリーピースバンド。2010年4月の結成以来、地元の奈良を中心に全国で年間100本近くのライブを重ねてきた。2014年12月にデビューミニアルバム「手を振る」を、2015年9月に「NOHARA」をリリース。2016年10月に、LOSTAGEの五味岳久をプロデューサーに迎え1stフルアルバム「LOVE」を発表する。

My Hair is Bad(マイヘアイズバッド)
My Hair is Bad

椎木知仁(G, Vo)、山本大樹(B, Cho)、山田淳(Dr)の3人が2008年に新潟で結成したロックバンド。大阪のインディーズレーベル・THE NINTH APOLLOに所属し、2013年2月に1stアルバム「昨日になりたくて」を発売した。骨太なロックサウンドと、椎木がつづるリアリティのある歌詞、アドリブのポエトリーリーディングを織り交ぜたライブで人気を集め、2016年5月にシングル「時代をあつめて」でEMI Recordsからメジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stアルバム「woman's」をリリース。12月から東京・日比谷野外大音楽堂公演を含むレコ発ツアー「ハイパーホームランツアー」を実施する。