歌詞について聞いていいですか?
──20年経って、お互いの印象は変わりました?
斎藤 どうだろう? たくましくなったとは思うけど、全然変わってないところもあるというか。「シーガル」とかもそうだけど、20年前の曲をいまだにライブでやってるでしょ?
佐々木 そうですね。
斎藤 確立されたものというか、「このバンドが歌うことって、こういうことなんだろうな」みたいなものが当時からあって。そのイメージは今も変わらないし、そういう意味では着実に進んできたバンドなんだろうなと思いますね、フラッドは。
佐々木 俺も同じようなことをユニゾンに感じていて。根幹というのかな。楽曲もパフォーマンスもメンバーの関係性もそうだし、キラキラした部分も最初からあったと思うんですよ。それがどんどん広がっていったわけだけど、昔と変わってないところもちゃんとあって。ユニゾンのトリビュートアルバム(2019年リリースの「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」)に「フルカラープログラム」で参加させてもらったんだけど、あの曲もそうじゃないですか。いまだにキラキラしているし、なんなら昔よりもっと輝きが増している。当時「これだ!」と思った曲が今もカッコいいって、すごいことだなと思うし、うれしくなりますね。曲が増えるとなかなかライブでやれない曲も出てきますけど、ユニゾンはけっこうまんべんなくやってますよね。
斎藤 そうだね。ありがたいことに、昔の曲をずっと好きでいてくれるファンもいるので。たまに「Revival Tour」(過去のライブのセットリストを再現するツアー)も開催してるし。
佐々木 過去の曲に優しいバンドだ。
斎藤 お互いそうだと思うけど、昔の曲で「今はやれない」という曲はほぼないんじゃない?
佐々木 そうかも。9月から10月にかけてこれまでのリリース曲を全部披露するツアー(「レトロスペクティヴ2025」)をやったんですけど、どの曲も同じようなテンションでできたので。自分で作ってるから、思い出すのも早いし(笑)。たまにありますけどね。この間奏、まったく覚えてない!みたいなことが。
斎藤 わかる。知らないDメロが始まった!みたいなことでしょ(笑)。
佐々木 そう(笑)。「この曲は歌いづらい」とかもないですか?
斎藤 今のところないかな。前は「いつ高い声が出なくなるんだろう」と思ってたけど、技術的にはむしろうまくなってるから、けっこう乗りこなせる。
佐々木 すごい。タフにもなってるんでしょうね。この前、フラワーカンパニーズの武道館を観たんですけど、圭介さん(鈴木圭介)の声が出まくってて。10年前の武道館よりもすごくて、衝撃を受けました。
斎藤 やっぱり続けてるからだろうね。東京スカパラダイスオーケストラの皆さんも「休んだらできなくなるから、ずっとやってる」と言ってて。続けないとたどり着けないところがあるんだろうなと。
佐々木 そうですよね。……そうだ、歌詞について聞いていいですか?
斎藤 え、何?
佐々木 最近、歌うことねえなと思っちゃって。そんなに不幸な境遇でもないし、暴走族だったわけでもなくて、もともと世の中に訴えかけることが少ないタイプなんですよ。好きでやってるところがデカいというか。たぶん斎藤さんもそうだと思うんですが。
斎藤 そう……だね。
佐々木 今回のアルバムに入ってる曲で「金が半端に前よりある」(「SNAKE EYES BLUES」)という歌詞があるんですが、とりあえずメシが食えるようになって、「ここから何を歌えばいいんだろう?」っていう。斎藤さんはTenTwentyを始めて、歌詞を書くことがグッと増えたと思うんですけど、悩むことってないですか?
斎藤 佐々木くんとは絶対量が違うというか、まだ作詞歴6年とかだからね。そこはなんとも言えないけど、できるだけ自分に負荷をかけないように書こうとしているところはあるかな。もちろんめっちゃがんばるし、一生懸命やるんだけど、時間をかければよくなるか?といえば、そうでもないなと。
佐々木 時間をかけた分だけゴチャゴチャすることもありますね、確かに。
斎藤 考えて考えてたどり着けるものって、けっこう最初に思い浮かんだものと同じだったりするでしょ。そうすると似たような歌詞ばかりになるというか。それよりもメロディと一緒になったときの発見みたいなものを追いかけて、1行でもいいから光るものがあれば御の字、みたいな捉え方をしてるかも。
佐々木 タイムリミットを作るってことですよね。
斎藤 そうそう。結局、考えちゃうんだけどね。もうちょっとよくならないかなって。あとは日記的に書くというか。
佐々木 あ、それは俺もやってるかも。最新の気持ちや出来事を反映させやすいので。それも読み返すと「これ、ホントに面白いかな」と思っちゃうんだけど(笑)。
初武道館はa flood of circleがどう転がっていくか決まる日
──a flood of circleは2026年5月6日に初の日本武道館ライブを開催します。バンド結成当初、お二人にとって武道館はどんな場所でしたか?
佐々木 どうだろう? みんながみんなってことじゃないけど、「バンドやるんだったら、いつかは武道館」みたいなのは共通してたんじゃないかな。
斎藤 やっぱり特別な会場だと思います。
佐々木 ユニゾンは20周年のとき、武道館3DAYSですからね。あれはすごかった。田淵さんも珍しくMCをしてましたよね。
斎藤 田淵も貴雄もしゃべったね。
佐々木 斎藤さんはなぜかスロットの話をしてて。あれもカッコよかった。
斎藤 (笑)。熱いMCは2人がやってくれたから。あのときの武道館は、やっぱり「おめでとう」を言う日だったと思いますね。ファンにとっても僕らに「おめでとう」と言える場があるのはうれしいだろうし、こちらもずっと応援してくれた人たちに「おめでとう」だし。それをダイレクトに感じられる会場なんですよね、武道館は。開演前、ステージの袖は幕で仕切られてただけなんですけど、“今から始まります”のSEが鳴った瞬間、ほかのどの会場でも感じられないような種類の拍手が起きて。それがピークだった感じもありましたね。
佐々木 すごい。俺らも「これが斎藤さんが言ってた拍手か」って思いたい(笑)。フラッドの武道館をやることになった理由に関しては、3年くらい前になべちゃんに呼び出されて、「40歳になってもこの調子だったら、バンドは無理かも」と言われたのがデカくて。
斎藤 え?
佐々木 「それ、30歳くらいで言うことじゃないの?」と思ったんですけどね。もしかしたらハッパかけてきたのかもしれないし、「同じ調子って、どんな調子?」とも思ったけど(笑)、なべちゃんにそう言われたときに「じゃあ武道館かな」と。俺にとっては大変なことだけど、フラッドもいつ終わるかわかんないし、武道館を目指すのもいいかなって。あと「これ、歌詞に書ける」と思ったんですよ(笑)。で、ホリエアツシさんがプロデュースしてくれた「ゴールド・ディガーズ」という曲で「武道館 取んだ3年後」って書いたんです。武道館を発表したのはこの前、新宿でやったフリーライブだったんですが、「ホントにやるんだ?」って(笑)。そのことも「夜空に架かる虹」という曲の歌詞に書いてるんです。「5月6日 武道館」と。ビジョンに映すとか口で伝えるんじゃなくて、初めてライブでやる曲の歌詞にするという(笑)。
斎藤 すごいね。やっぱり武道館は特別な場所だし、20年かけて蓄積してきたものを1日に集約できるのはうらやましいですね。20周年で初の武道館というのもカッコいいし、絶対にすごいライブになるんだろうなと。
佐々木 自分たちでは「普通っす」みたいなこと言ってても、特別になっちゃいそうですね(笑)。ただ「武道館ライブ、達成しました。ありがとう」という感じにはしたくないんですよ。今回のアルバムの作り方もそうだけど、集大成ではなくて「ギリギリまで走り切った状態でいけよ」と俺が俺に言ってるというか。そういう自分たちを見たいんですよね。ジタバタして生きてきた人間だし、観てる人にも「まだジタバタしてていいか」と思わせてたくて。俺らはまったく完成してないし、これまでの人生も昨日までやってきたことを否定しながら進んできたつもりなので、同じ態度で臨みたいんです。かなり抽象的なこと言ってますけど、態度としてはそういう感じ。
──「おめでとう、ありがとう」だけではない、と。
佐々木 それも絶対出ちゃうんですけどね。ちょっとはニコッとしちゃうだろうし(笑)。
斎藤 かわいい(笑)。
佐々木 かわいさも自覚してます(笑)。それはともかく、すでにあるものを壊して、やり直しながら進むのがロックだと思ってるんですよ。あと、バンドがどう転がっていくかが決まる日でもあって。きっかけがなべちゃんの話だったから、「なべちゃん、バンド続ける?」って聞かなくちゃいけないじゃないですか。
斎藤 ステージの上で聞いてほしい。
佐々木 それはエモすぎる! 考えておきます(笑)。
──最後に、斎藤さんから佐々木さんに言いたいことは?
斎藤 なんだろう? 何を言っても変わらない気もするけど。
佐々木 ハハハ。
斎藤 そんなに頻繁に会ってるわけじゃないけど、佐々木くんを見るたびに背筋が伸びる感じがあって。自分も佐々木くんにとってそういう存在でありたいし、お互い、行けるところまで行けたらいいですよね。あと、つらいときは連絡ください。
佐々木 優しい(笑)。ありがとうございます。
公演情報
a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館
2026年5月6日(水・振休)東京都 日本武道館
a flood of circle 20周年記念ツアー 日本武道館への道
- 2026年1月11日(日)東京都 新代田FEVER
- 2026年1月23日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2026年2月5日(木)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2026年2月14日(土)岩手県 Club Change WAVE
- 2026年2月15日(日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2026年2月19日(木)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2026年2月26日(木)千葉県 千葉LOOK
- 2026年2月28日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2026年3月1日(日)京都府 磔磔
- 2026年3月7日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2026年3月8日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2026年3月13日(金)大阪府 BIGCAT
- 2026年3月14日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2026年3月20日(金・祝)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2026年3月27日(金)岐阜県 yanagase ants
- 2026年4月3日(金)北海道 cube garden
- 2026年4月5日(日)宮城県 darwin
- 2026年4月15日(水)愛知県 DIAMOND HALL
- 2026年4月17日(金)福岡県 BEAT STATION
- 2026年4月28日(火)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
※全公演ゲストあり
プロフィール
a flood of circle(アフラッドオブサークル)
佐々木亮介(Vo, G)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(B)、アオキテツ(G)による4人組ロックバンド。2006年に結成され、2009年4月に1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビュー。結成10周年を迎えた2016年には初のイギリス・ロンドン公演や海外レコーディングを行ったほか、現地でライブも開催。同年に主催フェス「A FLOOD OF CIRCUS」を立ち上げた。2021年はバンド史上初となるホールワンマンを東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催し、8月に提供曲のみで構成されたアルバム「GIFT ROCKS」を、12月にオリジナルアルバム「伝説の夜を君と」をリリースした。2024年にデビュー15周年を迎え、その記念公演を8月に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で行った。2025年11月にアルバム「夜空に架かる虹」をリリース。2026年5月に東京・日本武道館公演「a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館」を行う。
a flood of circle official web
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UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)
斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビューを果たした。結成20周年記念日となる2024年7月24日に初のベストアルバム「20th ANNIVERSARY BEST SPECIAL BOX『SUB MACHINE, BEST MACHINE』」をリリース。同日に東京・日本武道館でアニバーサリーライブ「ROCK BAND is fun」を行い、9月から全国ツアー「20th BEST MACHINE」を実施した。2025年12月よりホールツアー「UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2025-2026『うるわしの前の晩』」を開催する。
UNISON SQUARE GARDEN - official web site
USGinfo (@usginfo) | Instagram
※記事初出時、リード文の一部に事実誤認がありました。お詫びして訂正いたします。



