ナタリー PowerPush - 阿部真央

愛と感謝を込めた自信作「戦いは終わらない」

ワンオクTomoyaと念願の共演

──「君を想った唄」とラストの「for you」には、真央さんが歌う理由——それはファンの存在にあるということが歌詞に表れていて。

そうですね。「君を想った唄」は好きな人とケンカしたときにできた曲なんですけど、結果的にファンの人に向けたメッセージソングになりましたね。自分が消えたあとも曲は残るから忘れないでっていう刹那的な気持ちが出ていて。「for you」はBメロで「恩返しさせてよ 私がこうして笑えてる理由」って歌っているように、ファンの人がいるからあんなに嫌い続けた自分を愛せたんだ、だから恩返しさせてほしいという曲で。でも、「for you」もこういう曲にするつもりは全くなかったんですよ。もっとおちゃらけた感じの曲にする予定だったんだけど(笑)。

──確かにサウンド的にはポップなパンキッシュさがあって、コミカルな歌詞を乗せても映えそうですね。

そうなんですよね。お風呂に入ってるときに「あれもfor you これもfor you」っていう歌い出しのメロディと歌詞が出てきて。今の私にとって「for you」したい存在ってファンの人たちしかいないから。じゃあファンの人に感謝して、ライブで盛り上がれる曲にしようと思って。

──ちなみにこの「for you」と1曲目の「How are you?」のドラムはONE OK ROCKのTomoyaくんが叩いていますが、これはどういう経緯で?

今回は、初めてご一緒するアレンジャーさんがたくさんいて。基本的にミュージシャンの選定はそれぞれのアレンジャーさんにお任せしたんです。私自身、いろんなミュージシャンと一緒にやってみたいという思いもあったし。その中でずっとご一緒したかった玉田豊夢さんや屋敷豪太さんにも参加していただいたんですけど。Tomoyaさんは、私、元々ONE OK ROCKがすごく好きで。特にTomoyaさんのドラムがカッコいいなって思っていたんですよ。で、たまたま「How are you?」と「for you」のアレンジャーのakkinさんが以前ONE OK ROCKのサウンドプロデュースをしていたことがあって。そのつながりもあってakkinさんから「Tomoyaくんどうかな?」っていう提案があって。「もう、ぜひぜひ!」っていう感じで。

──レコーディングはどうでしたか?

カッコよかった! Tomoyaくん、レコーディング当日の朝まで徹夜で練習してきてくれたんですよ。私は今回参加してくれたそのほかのミュージシャンも含めて、ほとんど年上の方としかやったことがなかったので。同世代のTomoyaくんが参加してくれたのはすごく新鮮で、うれしかったです。

──以前も「もっと同世代のミュージシャンとも絡みたい」と言ってましたよね。

そうですね。今回、Tomoyaくんもそうだし、「戦いは終わらない」のドラムを叩いてくれた石井(悠也)さんも20代で。この2人と一緒にやったときに若いエネルギーが音に出ていて、いいなと思いました。

バンドは組めないけどバンドサウンドが好き

──真央さんの作品に参加するミュージシャンやライブのメンバーって男性が多いですよね。これって理由があるんですか?

なんでかな? うーん……男性は女子に優しいから(笑)。

──あはははは。例えば、ライブのメンバーが全員女性って考えられない?

考えられないです! 絶対大変だと思う(笑)。男性が好きというわけじゃなくて、女性で固まってるのがすごく怖いんですよ(笑)。だから、私の近くにいる女性スタッフ——スタイリストさんとかヘアメイクさんって女性っぽくないんです。群れるのが嫌いで、1人でがんばってる女性というか。みんな私みたいな感じなんです(笑)。

──じゃあ、過去を振り返ってもガールズバンドを組むとか考えられなかったんだ?

無理無理無理! メンバーの中で絶対孤立すると思う(笑)。

──阿部真央がソロアーティストである必然を感じますね。

周りが男性メンバーだけのバンドでも無理だと思いますよ。

──でも、バンドサウンドを求めてるという。

やっぱり音の厚みとか、身体に伝わる迫力はバンドじゃないと出せないから。それが好きなので。だから、私って贅沢なんですよね。「阿部真央バンド」みたいにメンバーを固定してない分、手に入らないグルーヴもあるんです。でも、その代わり馴れ合いは一切ないので。常にシビアなところでやっていて。それが私の性分に合ってると思うんですよね。

──改めて、このアルバムをリスナーにどう届けたいですか?

こんなにコンプレックスにまみれた人間でも、がんばれば誰かに愛され、自分を好きになれる。そして、変われるんだよということをすごく伝えたくて。人前に出る仕事をしている人って、恵まれているようで、実は隠れて努力をしていたりするじゃないですか。私はその努力を隠す美学がよくわからなくて。その時々の阿部真央のいい部分もダメな部分も見てもらいたいんです。そういう身近な存在でいたくて。私って、音楽以外はすごく一般的な人間だと思うので。

──感覚的に?

感覚もそうだし、容姿もそうですよね。歌のスキルだって、元々は一般的な力量だったと思うんですけど。みんなに支えられて磨かれたことでここまで来ることができた。そういう人間が「自分はこうやってがんばってるんです」って素直に表明して、音楽を通して表現し続けることで、誰かに「元気をもらえた」って言ってもらえるなら、それはすごく幸せなことで。このアルバムは、その基盤になったと思います。だから素直に「興味があったらぜひ聴いてみてください」って言いたいです。

ニューアルバム「戦いは終わらない」2012年6月6日発売 PONY CANYON

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 3500円(税込)PCCA-03594 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 3000円(税込)PCCA-03595 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. How are you?
  2. 戦いは終わらない
  3. 世界はまだ君を知らない
  4. 君を想った唄
  5. 側にいて(piano ver.)
  6. 嫌われてないかな
  7. Sunday morning
  8. プレイボーイ
  9. ここにいて
  10. 18歳の唄
  11. for you
初回限定盤DVD収録内容
  1. 側にいて (music clip)
  2. 世界はまだ君を知らない (music clip)
  3. 「世界はまだ君を知らない」&「戦いは終わらない」(ジャケット メイキング)
  4. 世界はまだ君を知らない(music clip メイキング)
  5. あべまおらじお【番外編】メイキング
  6. NHK「春ナビ」メイキング
  7. 側にいて(music clip メイキング)
阿部真央(あべまお)

1990年1月24日生まれ。大分県出身。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代を中心に支持を集める。2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーや夏フェス出演、アヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催する。