7coが明かす“いい曲“の作り方、初の純愛バラードを共作した王ADENへのメールインタビューも (3/3)

ミュージックビデオにはこんな仕掛けが

──「ちょうどいい(feels just right)feat. 王ADEN」のミュージックビデオは芦田さんが監督を務めたんですよね。

そうです。時間に追われつつ「でもめっちゃいい映像を作りたい」みたいな感じで、ボロボロになりながら。前にもMVの監督をしたことはあったんですけど、今回は過去イチ大変でしたね。

──監督として、どんなことをなさったんですか?

家の内装を考えることもそうですし、「1ヴァース目はどのカットにするか」「サビでこのシーンを入れたい」とか大まかなイメージボードをスタッフさんに送ったり、香盤表を作成したり。現場では「この画角で撮りたいです」「こんな表情がいい」など、イメージを細かくお伝えしました。これまで7coのMVを撮ってくださっていた監督さんにカメラマンをお願いしたので、伝えやすかったし、わがままをたくさん言えました(笑)。

──芦田さんのInstagramを拝見したら、MVにいくつか仕掛けがあると書かれていましたけど、それってどこのことですか?

1秒だけ私が映っているんですよ。あとは、彼女役・白河芹さんの寝相が悪いカットがあるんですけど、それは「しあわせな結婚」(2025年7月から9月まで放送されたテレビ朝日系ドラマ)で松たか子さんが演じた鈴木ネルラをオマージュしました。白河さんは私と同じく「しあわせな結婚」のようなエモい作品が好きなので、2人で相談して取り入れさせてもらいました。ほかにはAIDENさんとのコラボなので、思い出の写真を見ているシーンで台湾を思わせるエッセンスを入れていて。あと私のグッズがさり気なく映っていたり、細かいところまでこだわりました。

──改めて「ちょうどいい(feels just right)feat. 王ADEN」が完成した手応えはいかがですか?

ずっと作りたかったバラードを一番いい形で落とし込めました。7coとして客演を迎えてコラボするのは初めてだったし、海外のアーティストさんだったので、最初は不安もあったんですけど、作品が完成して「いい意味で7coらしい、めっちゃいい曲ができたな」って。自信を持ってリリースできましたね。

「私、イケるかも」と思えるようになりました

──今後の活動については、どんなこと考えていますか?

最初にもお話しした通り、今年は「RADAR: Early Noise 2025」を含めて、7coを広める手助けをしてくださった方がたくさんいたんですよね。来年もそうなるとは限らないので、勝負の1年になると思います。それとフェスに出て楽しかったので、来年はさらにいろんなフェスに出たいです。最終的には「セルフカバーをしたい」という目標があるので、そのためには作家もアーティスト活動もがんばらないといけないから、どちらも手を抜かずにやり続けたいです。

──セルフカバーというのは?

2人で提供した曲を7coとしてセルフカバーできたら、作家とアーティストの活動をつなげられるので、それは絶対形にしたいんですよね。

──個人的には、7coの音楽を元にしたドラマ仕立ての映像を観てみたいです。

いいですね! その企画はめちゃくちゃ面白そう。私たちだけで映像を作るよりも、ドラマや映画を専門にやっている人を絡められたら面白いかなと思いました。

──7coの活動を通して、気付いたことはありますか?

私は表に出ることとか、自分が被写体になるのが苦手で。なるべくMVにも出たくないし、写真撮影もあんまり好きじゃないし、ライブも苦手だったんですよ。7coを始める前、TikTokやYouTubeにカバー曲を投稿していた時期があって。投稿した次の日は過眠症になるぐらい、自分を発信するのが不得意だったんです。だから7coを結成して「TikTokで毎日投稿しよう」となったとき、自分には無理じゃないかなと思っていたんですけど、ふと「7coは私1人でやっていなかったんだ」って気付いた。ここ1年は人に助けられる場面が多かったのもあり、なんとか苦手なことを乗り越えられている自分がいて。それこそライブも楽しめるようになったし、「私、イケるかも」と思えるようになりました。7coのおかげで内面が変化してる気がします。1人ではできなかったことが、周りの人のおかげでできるようになってる。

7coと王ADEN。

7coと王ADEN。

──大きな変化ですね。

ライブは絶対やりたくないと思っていたんですけど、アーティストである以上はやらなきゃしょうがないし「支えてくれる人がいるならやるか」と。いざ、やってみたら楽しくて! この3年でマインドが前向きになりました。

王ADEN メールインタビュー
王ADEN

王ADEN

──7coのアーティストとしての印象や、音楽性についての印象を教えてください。

街で彼女を見かけても、正直ミュージシャンだとは思わないかもしれません。でも、ボーカルのコントロールやサウンドの作り方には本当に感心させられます。彼女の声には、聴いた瞬間に注意を引き付ける何かがあります。

──7coの好きな楽曲を教えてください。

「恋愛後遺症」が好きですね。

──7coはインタビューで「私たちと王ADENさんの音楽は、親和性があると思っています」と発言されていました。王ADENさんはどのように感じますか?

お互いの音楽には、軽やかでアップビートなリズムがあって、作品同士にさりげない共通点があると思います。でも、異なるボーカルの質感を同じ曲で組み合わせると、まったく新鮮で新しいものになります。

──7coからコラボのオファーを受けて、どのように感じましたか?

7coとご一緒できて本当に光栄です。これが初めての海外コラボレーションで、素晴らしい初体験になってとてもうれしいです!

──7coから2曲のデモが送られたそうですが、その中で「ちょうどいい(feels just right)」を選んだ理由を教えてください。

「ちょうどいい(feels just right)」は、私が普段リリースするようなテンポの速い曲とは違います。初めての海外コラボでは、あえて違うことに挑戦して、自分の音楽の別の一面を見せたいと思いました。

──今作は日本語の歌詞が多く登場しますが、デモを聴いて、どんな印象を持ちましたか?

最初に録音を聴いたとき、日本のレコーディングクオリティにとても感銘を受けました。ボーカルがとてもクリアでクリーンで、これまで自分が扱ってきたものとは大きく違いました。とても刺激を受け、日本のレコーディング基準の精密さを改めて実感しました。

──ご自身が歌われたパートは、どんなことを考えて歌詞を書かれたのでしょうか?

気になる日本人の子がいたら……と想像し、彼女に何を言いたいかを思い描きながら、その気持ちを音楽に込めました。初めての海外コラボなので、いつものスピード感のある曲とは少し違うことに挑戦し、自分のアーティスト性の別の側面を見せたいと思いました。

──「ちょうどいい(feels just right)」を歌うにあたって、意識されたことをお教えください。

このトラックでは、ボーカルのテクニックに注力し、歌いすぎないように気を付けながら、微妙で曖昧なムードを“ちょうどいい”強度で保つことを目指しました。パフォーマンスをコントロールしつつ表現力を保ち、繊細な感情を伝えることに重きを置きました。

──完成した音源を聴いた感想を教えてください。

マスタリング後のトラックを聴いたとき、最初にデモを聴いたときと似た感覚がありましたが、日本的なミキシングのアプローチがひときわ際立っていました。菜名子とRYUJAは非常にクリーンで精密なミックスを選び、そのおかげでボーカルが前面に出て、私が普段手がける作品とはかなり異なる音の個性が生まれています。その仕上がりをとても気に入っています。

──楽曲公開後はどのような反響がありますか?

フィードバックの多くが日本語で、新鮮な体験でした。海外からこれほど多くの反応をいただけたのはワクワクするし、国際的にどのように音楽が受け止められるのか、新たな視点を得られました。

──対バンライブや楽曲制作など、今後7coとやってみたいことはありますか?

機会があれば、「ちょうどいい(feels just right)」を7coと一緒に日本でも台湾でもいいので、ライブで披露したいです。この楽曲の繊細なダイナミクスや、私たちのボーカルトーンの掛け合いを、ライブという場で表現できたらとてもワクワクします。

──最後に7coへメッセージをお願いします。

お疲れ様でした!

プロフィール

7co(ナナコ)

芦田菜名子(Vo)と音楽プロデューサーのRYUJAによる音楽プロジェクト。2022年3月に1stシングル「APPLE PIE」をリリースし、ヒップホップやR&Bをベースとしたトラックにポップスを融合させたサウンドと、共感性の高い歌詞で注目を浴びる。2025年2、3月に新曲「0.0000%」「恋愛後遺症」を連続配信。同年10月には台湾出身のシンガーソングライター兼プロデューサーである王ADENとコラボした楽曲「ちょうどいい(feels just right) feat. 王ADEN」を配信リリースした。

王ADEN(ワンエイデン)

台湾出身のシンガーソングライター兼プロデューサー。高校在学中からデジタルプラットフォーム上で自作曲を発表し、同世代のリアルな感情を映し出すメロディと洗練されたサウンドメイクで注目を浴びる。投稿した楽曲「想了妳6次」「妳是我寶貝ㄟ」は、累計で1000万回を超えるストリーミング再生を記録。作詞・作曲・編曲・ミックスまで、すべてを自ら手がけるマルチクリエイターとしての才能を発揮し、2024年には「ゴールデンメロディアワード」最優秀新人賞にノミネートされる。2025年には新曲「雙重人格」「23/17」をリリースした。