7coが明かす“いい曲“の作り方、初の純愛バラードを共作した王ADENへのメールインタビューも (2/3)

「コミュニケーションLike 坂元裕二」

──中学で作詞を始めたとおっしゃっていましたが、どんなことを書いていたんですか?

きれいごとばっかり書いていました(笑)。「がんばって生きるんだ」「未来は明るい」とか、ピュアな気持ちのまま言葉を並べていて。自作の作詞ノートがあるんですけど、今見返したらめちゃくちゃ恥ずかしくて。「これで刺さると思っていたんだ」と感じるようなことばかり書いてましたね。

──歌詞はかなりの量を書いていたんですか?

特に10代の頃は歌詞をめちゃくちゃ書いていて。高校生で100曲以上は書いていたんですよ。ボツにした歌詞もいっぱい書いたけど、今となってはやってよかったなと思います。

──そのときは自分自身を投影しながら書いていたのか、今のように登場人物を立てて物語を編むように書いていたのかだと、どちらでしょう?

自分のことを書いてた記憶があります。オーディションに全然受からない気持ちや「人生うまくいかない」みたいなこととか。恋愛の曲はほぼ書いてなかったです。作家になってから、物語の主人公を立てつつ、自分の気持ちも反映させられるようになりました。

──7coの歌詞を書くうえで、意識されていることはありますか?

「普通の歌詞は書きたくない」と思って7coでは実らない恋ばかり描いてきたんですけど、今回の新曲「ちょうどいい(feels just right)feat. 王ADEN」は珍しく実っている恋を歌詞にしているんです。ただ、実ってはいるけどそれだけじゃなくて。10年くらい同棲してるのに、いつまでもプロポーズをしてくれない彼氏の歌なので、最終的にはどこかくすぶっていて、うまくいかない感じの曲になっちゃいましたね。

──シンプルにハッピーで終わらないのは、7coの特徴かもしれないですね。あと、日本テレビ「ZIP!」の取材を受けたときは「歌詞に固有名詞を入れることを意識している」と話していました。

あ、そうですね! 今回だと「コミュニケーションLike 坂元裕二」とか「君とならどこかしこもUSJ」のように、具体的なワードを入れたくなっちゃうのはあります。でも、それは7coの歌詞に限らずそうしてるかも。なので、作家として曲を書いているときとあまり変わらないですね。7coに楽曲提供をする感覚で書いてます。

──僕は7coの曲を聴いていると、強い女性像を感じるんですよ。「APPLE PIE」では浮気をした恋人に対して「アップルパイ / 君の顔面めがけて投げたい」と仕返しする描写があって、「TOMATO」は“たぶんトマトが嫌いだった”元カレからのアプローチを撃退する女の子が登場しますよね。「0.0000%」では浮気した彼氏に別れ話を切り出して「あぁあごめんごめん / そんなに泣かせるつもりじゃなくって。 / あっハナセレブあげるからさ / その代わりに別れてくんない?」と強烈な言葉を浴びせている。登場する女性がみんな強気な印象があります。

うんうん、確かにそうですね。

──昭和の歌謡曲で言うと、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」、あみんさんの「待つわ」など男の帰りを健気に待っているような、慎ましい女性を歌う曲が多かった。00年代になると西野カナさんの「会いたくて 会いたくて」とか倖田來未さんの「愛のうた」のように、「嘘でもいいから愛してほしい」と彼氏にすがる女性が印象的でした。でも、7coが表現する女性はいい意味で勝気な感じがするし、これは現代の女性そのものを映し出している気がします。

私自身、気が強い人間なんですよ(笑)。それで曲の登場人物も強そうな感じなんだと思います。

──なるほど(笑)。あと、曲中の女の子もそこまで恋愛に依存していない感じがありますよね。「別にあなたがいなくても、私は生きていけるんで」みたいな。

ハハハハ。それこそ19、20歳くらいから「恋愛に左右されたくない」と思うようになりまして、そこも歌詞につながっているのかもしれないです。随所に自分の考えや価値観が出ているのは面白いですね。

──ほかにも楽曲全体に共通しているのが、どれも物語性が高いですよね。

そうですね。いつもRYUJAさんから曲をもらったら、ワードを書き出して物語の設定を決めていくんです。時間と場所、主人公の性別や年齢、登場人物はどんな仕事をしているのか、などを最初に決めないと歌詞が作れなくて。だからこそ物語っぽくなるのかもしれないです。

──先に登場する人物像や物語の構成を考えて、それを作品に落とし込んでいくのは脚本家や小説家に近いですね。

確かに、ストーリーを作ってる感覚ではありますね。

──自己分析をするに、7coの強みはどんなところだと思いますか?

一番の強みは曲のよさですね。7coのライブを初めて観てくれた方からも「曲がいいね」と言われることが多くて。作家のコンビだからこそ「こういう曲を書いて」と言われたらすぐ形にできるし、曲の幅も自由自在に広げられる。それをいいバランスで7coの音楽に落とし込めていると思います。

台湾のアーティスト・王ADENとのコラボのきっかけ

──先ほども話に出た新曲「ちょうどいい(feels just right)feat. 王ADEN」は、台湾出身のシンガーソングライター兼プロデューサーである王ADENさんとのコラボ楽曲です。どんな流れでタッグを組むことになったのでしょうか?

「RADAR」に選出されたアーティスト同士でコラボをしたらどうかという話がチームの中でまずあったんです。7coは日本以外に台湾でも多くの人に聴かれているのもあって「台湾のアーティストさんにお願いしよう」と。王ADENさんの感情豊かなR&Bスタイルや歌声がいいなと思って、Spotifyの方につないでもらいコラボが実現しました。

7coと王ADEN。

7coと王ADEN。

──王ADENさんの印象は?

7coとは音楽の系統も近いし、どの曲も本当に素晴らしいんですよ。きっとADENさんの音楽が好きな人は、7coのことも気に入ってくれると思います。

──楽曲制作はどのように進めていきましたか?

まず、デモを2曲用意しまして。1つはコラボ用に作った楽曲と、もう1つはコラボを意識せずに1コーラスだけ作った楽曲。それをADENさんにお渡ししたら、後者のほうを気に入ってくださって。ADENさんが歌詞と歌を乗せて返してくれたんですけど、それがめちゃくちゃよかったんです。私のパートは負けてるな、と思ったくらいキャッチーで素敵でした。なので修正は一切せずに「これで行きましょう!」と言って、私がフル尺を作っていきました。

──サウンドはバラード調で、これまでの7coになかったアプローチに感じました。

バラードだけど、ちゃんとリズム感がある曲をずっと作りたくて。アコギのサウンドを生かしつつ、念願だったスローテンポの楽曲になりました。

自分なりの「あなたが好きです」を表現したかった

──先ほど歌詞についてご説明いただきましたが、個人的には「コミュニケーションLike 坂元裕二」が一番好きでして。このフレーズが入ることで、楽曲に登場するカップルの空気感が如実に伝わってきました。

私もそのフレーズが一番気に入ってます! もはや、それを入れたくて「ちょうどいい」を書いた、と言っても過言じゃない。私、坂元裕二さんの作品が大好きで、観まくっているんですよ。特に「好きです」ということをめちゃくちゃ遠回しに言う台詞とかが大好きで。自分なりの「あなたが好きです」をこの曲で表したくて作り始めていって……最終的に坂元さんの名前も入れちゃいました(笑)。

──坂元さんの書かれたセリフで、特に好きなのは?

「ファーストキス 1ST KISS」で夫の駈が妻の硯カンナにプロポーズをするとき、シンプルに「結婚してください」と言うのではなくて「君は柿ピーの柿が好きで、僕はピーナッツが好き」と言うセリフがすごく好きです。現実で言われたら変だけど、作品だからこそ遠回しのフレーズが刺さりました。

──音楽を聴いて「これを歌ってみたい」と思うのと同じように、坂元さんのセリフって「これを口に出して言ってみたい」と思わせる魅力がありますよね。

そう、歌詞と通ずるものがあって。「大好き」と言うよりも「柿ピーが好きで~」と言ったほうが面白いんですよね。

──ちなみに、坂元さんの手がけたドラマや映画で一番好きな作品は?

一番は「大豆田とわ子と三人の元夫」ですね。悲しさとユーモアの塩梅が抜群なんですよ。

──それこそ「好きです」を遠回しに言う感じは、「大豆田とわ子~」に出てくる中村慎森っぽい。

ハハハ、本当にそうですね! ほかには「花束みたいな恋をした」とか「セカチュー」(「世界の中心で愛を叫ぶ」)、「東京ラブストーリー」も全部好きですね。

──それで言うと「ちょうどいい」に出てくる2人は「花束みたいな恋をした」に登場する山音麦と八谷絹みたいな感じだろうな、と思っていまして。

そうですね! 歌詞を書いたときは「花束みたいな~」を意識していたかもしれないです。ミュージックビデオの撮影でも「あの作品っぽい感じで」とカメラマンに伝えました。