ナタリー PowerPush - 4D-PIANO ANIME Theater!
4人のピアニストが織りなす四次元アニソンプレイ
リスナーを巧みにダマす事務員Gのアレンジ術
──で、事務員さんは「ドラえもんのうた」のほかに「アシタカせっ記」と「おどるポンポコリン」を選んでいる。この選曲の基準は?
事務員G 「アシタカせっ記」に関しては、カバーCDを同人でリリースするくらい、久石譲さんがホントに好きだからですね。しかもそのカバーアルバムにはこの曲を入れてないんですよ。おいそれとは弾けないな、ということで。そのくらい思い入れの強い曲なので、こういう機会がなければカバーしてなかったとすら思いますね。
──「おどるポンポコリン」は?
事務員G もちろん好きな曲ではあるんですけど、ちょっとあることを試してみたかったので。
──あることって?
事務員G まらしぃさんから湧き出てくるものを大切にしてみよう、と(笑)。まずまらしぃさんに本当に自由に弾いてもらって、ね?
まらしぃ ええ(笑)。僕が弾きながら考えて、その場で適当に入れたキメやブレイクに対して事務員さんが……。
事務員G さも最初からその位置にブレイクが入ることが決まっていたかのように、あとから音をかぶせるという(笑)。完全なアドリブなんだけど、ものすごく緻密でマシンライクに聞こえるような遊びを施してみました。
──すごく芸が細かいアレンジになっている上に、さっき「ドラえもんのうた」の話を聞いていたこともあって、ガッチリスコアを書いたんだと思ってました。まんまとダマされた(笑)。
まらしぃ やったっ、引っかかった!(笑)
ピアノの面白さ、可能性を伝えたい
──まらしぃさん言うところの「ホントに頭の悪い企画」、4台のピアノアンサンブルというホントに新しいチャレンジに成功した今、次にやってみたいことってあったりしますか? 例えば5Dとか。
事務員G 3人組でデビューしたはずなのに、いつの間にか十数人に膨れあがってるアイドルグループじゃないんだから(笑)。
紅い流星 増やせばいいってもんじゃないですよね(笑)。まずはこの4人で行けるところまで行ってからじゃないと増員は考えられない。今回すごくいいものができたという自信がある半面、もっと可能性は残しているなっていうところもありますから。それをクリアして4D-PIANOというものを完成させるのが先決ですね。
──可能性の実現のために何をしましょう?
紅い流星 ライブはやりたいですね。演奏する機会が増えれば細かいところをもっともっと突き詰められるはずだし、お客さんのリアクションを受けて新しいアイデアが思い浮かぶことも絶対にあるはずですから。
──ただグランドピアノ4台を置くとなると、使えるハコはかなり限定されますよね。
紅い流星 実はグランド4台なきゃいけないとは全然思ってないんですよね。今回のレコーディングでもH ZETT Mさんと事務員さんはグランドを使ってるんですけど、僕はヤマハのAvantGrandっていう電子ピアノを使ってますし、まらしぃはローランドのV-PIANOっていう機種を使ってますから。
事務員G 正直な話、僕、電子ピアノアンチだったんですよ。いくらテクノロジーが進化したとはいえ、いくらデータ容量が増えたとはいえ、グランドには勝てないでしょ、と思ってたんですけど、2人のレコーディングを見てみたら「なんだこれは!?」と。今の電子ピアノってホントにすごいんですよ。なんだっけ? あの押したら響く機能。
紅い流星 ああ、タクタイル・レスポンスシステム? 生ピアノで鍵盤を押したりペダルを踏んだりするときに、弦やボディの共鳴が伝わって鍵盤が振動することを再現するんですよ。
まらしぃ 弦の素材やハンマーの硬さ、マイクを立てる位置、フタの開け具合をシミュレートできたりもしますからね。
事務員G もちろん生ピアノにも電子ピアノにはない魅力があるんですけどね。本当にフタの上にマイクを立てるから、電子ピアノのようなライン録音では絶対に録れない、プレイヤーの息づかいも記録されたりして。
H ZETT M 聴いたときに明らかに空気感が違いますしね。
事務員G しかも今回って本当に僕が恐縮するような方々に録ってもらってるので、ものすごくいいレコーディングができたとは思ってるんですけど、それでもあの最新鋭の電子ピアノにはビックリした。
紅い流星 だからヤマハとローランドとコルグとカワイの最新の電子ピアノを4台用意してライブをやってみても面白いかもしれないですね。僕らはプレイを観てもらいたいのももちろんなんですけど、ピアノの面白さとか可能性を知ってもらいたかったりもするわけですから。
「太陽曰く燃えよカオス」を4台ピアノで弾いてみた【4D-PIANO】
収録曲
- 太陽曰く燃えよカオス(這いよれ!ニャル子さん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - ドラえもんのうた(ドラえもん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - おどるポンポコリン(ちびまる子ちゃん)
/ 事務員G、まらしぃ - 鉄腕アトム(鉄腕アトム)
/ H ZETT M - おジャ魔女カーニバル!!(おジャ魔女どれみ)
/ まらしぃ - めざせポケモンマスター(ポケットモンスター)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - 魔訶不思議アドベンチャー!(ドラゴンボール)
/ 紅い流星、H ZETT M - 葛飾ラプソディ(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
/ 紅い流星 - アシタカせっ記(もののけ姫)
/ 事務員G - ハレ晴レユカイ(涼宮ハルヒの憂鬱)
/ まらしぃ、事務員G - ジョジョ~その血の運命~ (ジョジョの奇妙な冒険)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ
H ZETT M×紅い流星×事務員G×まらしぃ「4D-PIANO LIVE Theater!」ライブ
2013年9月13日(金)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 18:00 / START 19:00
※本特集ページの最後にナタリー先行販売の情報あり
H ZETT M(えいちぜっとえむ)
生年月日不詳、青鼻が特徴のピアノマジシャン。1999年よりヒイズミマサユ機名義でPE'Zの一員として活動を開始し、2004~2005年にはH是都Mの名前で第1期東京事変に参加する。2007年、アルバム「5+2=11」(ゴッタニ)でソロデビューを果たし、以来4枚のオリジナルアルバムと、まらしぃ、紅い流星とともに3台のピアノでアニメソングをカバーする「3D-PIANO ANIME Theater!」など3枚のコンセプトアルバムをリリース。2011年には台湾でのワンマンホールライブを行うなど、その高い技巧と唯一無二のパフォーマンスは国内外で大きな注目を集めている。そして2013年6月、まらしい、紅い流星に加え、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。
紅い流星(あかいりゅうせい)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリなどで活躍するキーボーディスト。2008年、ゲーム「ファイナルファンタジーV」のBGMをアレンジした「演奏してみた」動画「俺らぁビッグブリッヂさ行ぐだ」が注目を集めて以来、ソリストとしてさまざまな楽曲をジャズアレンジした「演奏してみた」動画をニコニコ動画などに投稿する。2009年にはインストバンド[Mint]を結成し、ニコニコ超会議、ニコニコ超パーティといったニコニコ動画の公式イベントなどのステージを踏むかたわら、数多のボカロPや歌い手のバックバンドも務めている。また、東方Projectの楽曲を爆音ジャズアレンジする「東方爆音ジャズ」シリーズや、ボーカロイド曲をアレンジする「ボカロ爆音ジャズ」なども制作する。2012年にはH ZETT M、まらしいとともにアニソンカバーアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」をリリースし、2013年には事務員Gと40mPが企画した「虹色オーケストラ」にキーボーディストとして参加。
事務員G(じむいんじー)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリで活躍する演奏者。ピアノをメインにさまざまな楽器を同時に演奏する動画がネット上で大きな反響を呼んだ。2008年よりニコニコ動画でのパフォーマーを集めたイベントを企画し始め、2010年からは台湾・香港を始め海外でのイベント制作も精力的に行う。2012年にはボーカロイド楽曲214曲をつなげて弾いた映像がニコニコ動画「動画アワード」の「演奏してみた」カテゴリでMVDを受賞。2013年6月にはH ZETT M、紅い流星、まらしぃとともに4台のピアノでアニメソングをカバーするアルバム「4D-PIANO ANIME Theater!」に参加している。
まらしぃ
2008年よりニコニコ動画の「弾いてみた」動画などで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリース。その後H ZETT M、紅い流星とのコラボでアニメソングをカバーするアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」を発表したり、クレモンティーヌとのライブ競演、武部聡志&鳥山雄司とのセッションなどピアニストとして幅広い活躍を見せている。2012年10月には初の全編ピアノソロアルバム「V-box」を発表。2013年6月、H ZETT M、紅い流星、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾となる「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。