ナタリー PowerPush - 4D-PIANO ANIME Theater!
4人のピアニストが織りなす四次元アニソンプレイ
紅い流星さんとの友情を演出したかった(笑)
──事務員さんは、結局そういう3人からのラブコールを受けて参加を決意した?
事務員G そうですね。4Dの話をいただいてすぐ流星さんに電話で相談したんですけど、そのとき「やる気がないならやめればいいとは思うけど、やりたいならぜひ参加してほしい」って言っていただいたので。あとちょっと話がそれるんですけど「演奏してみた」界隈に私と流星さんの不仲説というものがありまして……。流星さんは[Mint]っていうバンドを組んでるんですけど、そのメンバーの方々って私がすごいお世話になっている人だったりもして、あるとき「一緒にライブをやろう」って話になったんですけど流星さんだけお呼びしなかったんですよ。ぶっちゃけてしまうと電卓方面の問題があったので(笑)。
──人件費削減のために(笑)。
事務員G ええ(笑)。ピアノやキーボードを使うのであれば私が弾いちゃったほうが安上がりだよな、っていう。ホントにただそれだけの理由だったんですけど、一部で「事務員は流星と一緒の現場に立ちたくないのでは?」「ハブにしてるのでは?」という噂が立ってしまい……。それを払拭するためにも、ここはひとつ流星さんと私の友情を演出しておきたいな、と(笑)。
紅い流星 それはそれはたいそう美しいお話で(笑)。
事務員G それはもちろん冗談ですけど、タイミングが合わなかったのは事実なんですよね。でも流星さんとはいつか一緒に音楽で遊んでみたかった。だから「虹色オーケストラ」のときにもお声がけさせてもらったし、今回も「やりたいならぜひ一緒に」って言っていただけたので。しかもH ZETT Mさんともご一緒できる。このチャンスを自らつぶすのはもったいないな、という気がして。それが参加の動機ですね。
3D-PIANOが本当の三次元に
──で、実際に流星さんの言葉通り、3D以上のものができあがりましたよね。
まらしぃ 1人やかましい人が増えたので(笑)。
事務員G あはははは(笑)。でもホントにそういう理由で私が呼ばれたんだろうな、っていうふうには考えましたね。
──プレイヤーとしてはもちろん、コミュニケーターとしての役割も期待されているんだろうな、って?
事務員G ええ。流星さんとまらしぃさんはもちろん仲がいいんだけど、そういう2人の関係だからこそ言わないことや言えないこともあるはずなんですよ。でも私になら言うことや言えることもあるわけで軽口も叩きあえるし、なんなら軽くこづきあうこともできる。そういう間柄だからこそできる話はあるはずなんですよね。逆にほとんど面識のなかった私にだからこそ、H ZETT Mさんが言えることっていうのもあるだろうし。その内容を私がそれぞれに話せば「対話」とまではいかないけど、一応それと同義のコミュニケーションは図れるはずなので。
紅い流星 H ZETT Mさんとまらしぃと僕とが平面上で三角形でつながっていたところに、その三角形とは同じ高さにはない新しい点ができたんですよね。
──平面的な三角形が四角形になるのではなく立体的な三角錐になった?
紅い流星 そういう感じですね。3Dのときに3人が共有していた言葉や感覚がよりクリアになったというか、テレパシーか!って思えるレベルでスムーズに伝わるようになったって感じですね。
手と指が増えたことで選択肢も増えた
──プレイも変わりました?
H ZETT M ええ。私とクレバーな皆さんの10本指×4が動きに動きまくりましたから。
紅い流星 クレバーって(笑)。
まらしぃ でもホントに3人のときよりもできることは増えましたよね。3人をベース担当、バッキング担当、メロディ担当って割るとどうしても迫力が足りなくなることがあったりして。だからバッキング担当の人にハモリをお願いしたりしてたんだけど、バッキング担当の人には当然コードバッキングという仕事があるわけで。だから、みんな兼業しながらどうにか成立させていた部分もあったんですけど、4人いれば3人のとき以上に迫力が出るし、パートの割り振りも簡単。しかも手が余っているときには遊びを入れることができるし、逆に指や手がいっぱいあるのにあえて弾かないことで押し引きというか、強弱をよりはっきり付けられるようにもなったし。指が10本、手が2本増えたことでホントに自由になれたんですよ。
紅い流星 あと事務員さんは自分の果たすべき役割を考えてやってくれた感じもありましたね。まらしぃはロックなアレンジが得意で、H ZETT Mさんはジャンルレスというか、アバンギャルドで奇想天外なアレンジをなさっていて、僕はジャズピアノを弾くタイプで。そういう3Dで僕らがやっていたことではないことをあえて持ち込もうとしてましたよね?
事務員G もともとクラシック畑っていうこともあったので「この3人からは出てこないんじゃないかな」っていうアイデアを練るようにはしましたね。具体的に言うと、私がアレンジを担当させていただいたのは「ドラえもんのうた」なんですけど、カチカチに音を決めたんですよ。「ここはこのコードで自由に弾いてください」っていうフレーズが一切ないんです。
──4人分のスコアを書いたということ?
事務員G ええ。全体の聴き心地的にはマシンライクなんだけど、実は4人の総合力がものすごく問われるっていうアレンジをしてみたかったので。例えば「低音から高音に半音階ずつ上がっていくよ」っていうフレーズを「低音部分は僕で、中音域は流星さん」って感じで4分割して4人に割り振ってみたり、ものすごく複雑なハモリを作ったりしているんですね。そうすると誰かがトチった瞬間「はーい、ダメでーす」ってなってしまう。だから全員緻密に、しかも相手のプレイや息づかいを感じながらプレイしなければならなくなる、と。
──まさにクラシック的、オーケストラ的というか、テクニカルなアンサンブルを楽しめる作りにしてみた、と。
事務員G そうなるように心がけましたね。
収録曲
- 太陽曰く燃えよカオス(這いよれ!ニャル子さん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - ドラえもんのうた(ドラえもん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - おどるポンポコリン(ちびまる子ちゃん)
/ 事務員G、まらしぃ - 鉄腕アトム(鉄腕アトム)
/ H ZETT M - おジャ魔女カーニバル!!(おジャ魔女どれみ)
/ まらしぃ - めざせポケモンマスター(ポケットモンスター)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - 魔訶不思議アドベンチャー!(ドラゴンボール)
/ 紅い流星、H ZETT M - 葛飾ラプソディ(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
/ 紅い流星 - アシタカせっ記(もののけ姫)
/ 事務員G - ハレ晴レユカイ(涼宮ハルヒの憂鬱)
/ まらしぃ、事務員G - ジョジョ~その血の運命~ (ジョジョの奇妙な冒険)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ
H ZETT M×紅い流星×事務員G×まらしぃ「4D-PIANO LIVE Theater!」ライブ
2013年9月13日(金)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 18:00 / START 19:00
※本特集ページの最後にナタリー先行販売の情報あり
H ZETT M(えいちぜっとえむ)
生年月日不詳、青鼻が特徴のピアノマジシャン。1999年よりヒイズミマサユ機名義でPE'Zの一員として活動を開始し、2004~2005年にはH是都Mの名前で第1期東京事変に参加する。2007年、アルバム「5+2=11」(ゴッタニ)でソロデビューを果たし、以来4枚のオリジナルアルバムと、まらしぃ、紅い流星とともに3台のピアノでアニメソングをカバーする「3D-PIANO ANIME Theater!」など3枚のコンセプトアルバムをリリース。2011年には台湾でのワンマンホールライブを行うなど、その高い技巧と唯一無二のパフォーマンスは国内外で大きな注目を集めている。そして2013年6月、まらしい、紅い流星に加え、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。
紅い流星(あかいりゅうせい)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリなどで活躍するキーボーディスト。2008年、ゲーム「ファイナルファンタジーV」のBGMをアレンジした「演奏してみた」動画「俺らぁビッグブリッヂさ行ぐだ」が注目を集めて以来、ソリストとしてさまざまな楽曲をジャズアレンジした「演奏してみた」動画をニコニコ動画などに投稿する。2009年にはインストバンド[Mint]を結成し、ニコニコ超会議、ニコニコ超パーティといったニコニコ動画の公式イベントなどのステージを踏むかたわら、数多のボカロPや歌い手のバックバンドも務めている。また、東方Projectの楽曲を爆音ジャズアレンジする「東方爆音ジャズ」シリーズや、ボーカロイド曲をアレンジする「ボカロ爆音ジャズ」なども制作する。2012年にはH ZETT M、まらしいとともにアニソンカバーアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」をリリースし、2013年には事務員Gと40mPが企画した「虹色オーケストラ」にキーボーディストとして参加。
事務員G(じむいんじー)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリで活躍する演奏者。ピアノをメインにさまざまな楽器を同時に演奏する動画がネット上で大きな反響を呼んだ。2008年よりニコニコ動画でのパフォーマーを集めたイベントを企画し始め、2010年からは台湾・香港を始め海外でのイベント制作も精力的に行う。2012年にはボーカロイド楽曲214曲をつなげて弾いた映像がニコニコ動画「動画アワード」の「演奏してみた」カテゴリでMVDを受賞。2013年6月にはH ZETT M、紅い流星、まらしぃとともに4台のピアノでアニメソングをカバーするアルバム「4D-PIANO ANIME Theater!」に参加している。
まらしぃ
2008年よりニコニコ動画の「弾いてみた」動画などで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリース。その後H ZETT M、紅い流星とのコラボでアニメソングをカバーするアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」を発表したり、クレモンティーヌとのライブ競演、武部聡志&鳥山雄司とのセッションなどピアニストとして幅広い活躍を見せている。2012年10月には初の全編ピアノソロアルバム「V-box」を発表。2013年6月、H ZETT M、紅い流星、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾となる「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。