04 Limited Sazabys「Harvest」インタビュー|4年ぶり4枚目のアルバムで収穫した愛

04 Limited Sazabysのニューアルバム「Harvest」が10月12日にリリースされた。

フォーリミが約4年ぶりにリリースする“04th”フルアルバムには、リーボックの新モデル「ZIG KINETICA」とのコラボ曲「Jumper」、テレビアニメ「弱虫ペダル LIMIT BREAK」のオープニングテーマ「Keep going」など計14曲を収録。ポップなサウンドにストレートな歌詞を乗せたラブソングやソリッドで攻撃的な楽曲など、フォーリミらしいバラエティ豊かな楽曲が並べられている。

音楽ナタリーでは「Harvest」のリリースに際してメンバー全員にインタビュー。アルバムの制作エピソードやコロナ禍で感じていることを語ってもらった。

取材・文 / 小林千絵撮影 / 梁瀬玉実

いつものフォーリミのバランス

──4年ぶりのアルバムですが、制作前に何か構想はあったのでしょうか?

GEN(B, Vo) 特別「こういうものにしよう」というものはなかったですが、バランス感は意識しました。ある程度2ビートの曲も欲しいし、ポップな甘めの曲も欲しいし、重たい曲も欲しいし。そこに関しては“いつものフォーリミのバランス”を考えた気がします。

KOUHEI(Dr, Cho) 既発の「SEED」「Jumper」「fade / Just」があって、「弱虫ペダル LIMIT BREAK」のオープニング曲として先にできていた「Keep going」があった。そう考えると、メロコアやパンクの要素が強くてテンポが速い“ザ・フォーリミ”な曲はそろっていたので、あとはアルバムでフックになるような曲という感じで作っていきました。

GEN 4年の間に曲はいっぱい作っていたし、いい曲もたくさんできていたんですけど、アルバム用に新たに作った曲は、あえて遊び心のあるものにした感じはありますね。「いい曲がいっぱい詰まったアルバムにしよう」みたいなことは思わなかった。

──それが先ほど言っていた“いつものフォーリミのバランス”?

GEN そうです。

──今回「Harvest」というタイトルですが、収穫という言葉や意味は意識していましたか?

GEN タイトルに関しては「SOIL」(2018年10月リリースの3rdアルバム)を出したときから「次は『Harvest』にしよう」と決めていたんですよ。なんなら「SOIL」のときに「Harvest」というタイトルを付けようかなと思ったんですけど、いいタイトルだからちょっと取っておこうと思ったら、4年も経っていたという感じで。そこまで“収穫”というのは意識していなかったかも。

GEN(B, Vo)

GEN(B, Vo)

──“4枚目”のアルバムというのは04 Limited Sazabysにとっては節目の数字でもあると思いますが、節目のような感覚は?

GEN それも特に意識はしていないですけど、「ちょうど4年ぶりだしいいね」という話にはなりました。去年の頭に一瞬、「今年アルバム出してもいいんじゃないか」と思ったんですけど、「あ、来年だったら4年ぶり4枚目か。じゃあ来年だな」って(笑)。

──では収録曲について聞かせてください。まずはアルバムのリード曲「Keep going」。「弱虫ペダル LIMIT BREAK」のオープニングテーマで、GENさんが「弱虫ペダル」の原作を読んでから書いたそうですね。

GEN はい。めっちゃ単行本の巻数が多かったです(笑)。でも面白かった! 曲を書くにあたっては、主人公(小野田坂道)よりも部長(手嶋純太)の気持ちを投影しました。「弱虫ペダル」の中で部長が一番凡人で努力家なんですよ。ちょうど今回アニメになるシーズンは特に部長が肝な気がしたのと、あきらめそうな状況でもあきらめないという、部長のムードメーカー的なところに共感したので。

──楽曲制作はスムーズでしたか?

GEN 実は最初、あまりマンガを読まずにデモを出そうとしたんですよ。そのデモはソリッドでスポーツバトルものの作品に合いそうだし、いいかなと思ったんですけど、マンガをちゃんと読んでみたら違うんじゃないかと思い始めて。締め切りが年末だったので、「COUNTDOWN JAPAN」から帰ってきて、朝方、別の曲を作り始めたんです。そこからは早かったです。普段はレコーディング後に歌詞を入れるので、思い付いたメロディにコードを付けて、そこからすぐに歌詞を乗せて、という作り方がひさしぶりにできた曲です。

──サウンド的にも自転車を意識して入れたポイントがあるそうですね。

KOUHEI はい。自転車の「チリンチリン」という音のイメージをどこかに入れようと思って、ドラムのカップの音をイントロや間奏に入れています。

──お話を伺っているとタイアップ曲の作り方が上手になってきているように感じます。

GEN そうなんですかね。

KOUHEI 何もない状態から作るよりも、タイアップで作品やイメージがあるほうが作りやすくなってきているのかも。それなりに活動してきたから歌いたいこともやりたいこともわりと出し切った感じがあって、テーマがあったほうが新しいフォーリミ感が生まれやすいんですよね。

50歳、60歳になったときに演奏できる曲

──6曲目「Predator」は今作の中で唯一の全英語詞です。これまで全英語詞の曲は疾走感のある楽曲が多かったので、こういった重ための楽曲での英語詞は珍しいですね。

GEN 確かに。英語詞の曲は1曲くらい欲しいなと思って、これにしてみました。個人的にブレイクダウン的なところのギターが好きですね。レコーディングで聞いて一番「お!」と思った。

HIROKAZ(G) デモのときは入ってなかったからね。この曲は僕がリフから元ネタを作った曲なのですが、去年くらいからドロップチューニングの曲を作るのにハマっていて。KOUHEIはチューニングを変える曲はあまり作ってこないので、だったら俺は逆にそういう曲を作っていこうかなと思っています。

RYU-TA(G, Cho) 重たい曲ってアルバムの中にあると存在感が増しますよね。1曲あるとフックになるし、個人的にも好きです。

RYU-TA(G, Cho)

RYU-TA(G, Cho)

──8曲目「Honey」は曲調がポップで歌詞では「君が好き」とストレートな愛情表現をされています。04 Limited Sazabysのアルバム曲ならではというタイプの楽曲ですが、今回はこれがリード曲なんですね。この曲をリード曲として押し出すのは少し意外でした。

GEN たまにはこっち系の曲をリードにしてみたいなと思って。

──例えばSpotifyでフォーリミの人気曲を見ると、トップ5に「soup」や「milk」など、「Honey」にも通じるポップな曲が入っていますが、そういった楽曲の人気も受けてのことですか?

GEN 別にそこを意識したというわけではないですね。パワーポップ的な部分はもともと持っていた部分だし、たまには押し出してみてもいいのかなっていうくらいのことで。あと、これは最近の俺の考えなんですけど、パワーポップだったら歳をとってもできるなと思っていて。50歳、60歳になったときに、そんなに速い曲とかキーが高い曲を演奏できる気がしないので。まあ実際に先輩たちを見ているとやれそうな気もするんですけどね(笑)。とにかく、シンプルな楽曲で戦えるバンドでいたら歳をとっても大丈夫だなという気持ちがあって、今回はシンプルな「Honey」をリードにしてみました。

KOUHEI すでにシングルで「fade / Just」を出していたり、「Keep going」を先行配信していたりするので、だったら「Honey」のようにポップな曲を押し出してみてもいいのかなって。……と言っても全曲聴いてほしいし、聴く人によってアルバムの中で好きな曲は違ってくるのかなと思っていますけどね。

KOUHEI(Dr, Cho)

KOUHEI(Dr, Cho)

RYU-TA この曲はデモの段階からいいなと思っていました。カッコいいし、かわいいし、めちゃくちゃ広まっていくんじゃないかな。

HIROKAZ 本当に狙ったわけじゃないですけど、TikTokとかで“映え”そうではありますよね。そこから興味持ってアルバムを聴いてもらったら、「Honey」みたいな曲はほとんどないのでびっくりすると思う。それくらいの感じがいいですよね。TikTokから入った人にいい衝撃を与えられるんじゃないかなと思います。

変な音が得意なHIROKAZ

──あと触れておきたいのは、やはり11曲目「Galapagos II」でしょうか。「SOIL」に「Galapagos」という楽曲が収録されていたので、その続編になりますね。

GEN はい。この曲はKOUHEIが構成を持ってきてくれました。

KOUHEI メンバーと「ふざけた曲が1曲欲しいね」という話になって。でもだからといってセリフを盛り込んだ風刺的な「Galapagos」のようなふざけ方をもう一度やるのも違うし、どうふざけようかなと悩みました。どんなトラックでもGENは歌詞を乗せられるだろうから、だったら展開でふざけたら面白いかなと思ってこんな形に(笑)。

GEN メロディももっと変な感じにしようと思ったんですけど、意外とキャッチーになりました。

──メロディがキャッチーなのはあえてなのかなと思いました。

KOUHEI そうそう。キャッチーにしたかったので、いいバランスになりましたね。対して、ギターはHIROKAZに「変な音ない?」って聞いて、かなり変なプレイをしてもらってます。HIROKAZは変なのが得意だから。

HIROKAZ え、そうなのかな? 自分ではわかんないんですけど。

HIROKAZ(G)

HIROKAZ(G)

KOUHEI 前の「Galapagos」も「おバカな感じで」という注文で、いい具合に癖のあるギターが来たし、音色にいいこだわりを持っているんですよ。だから今回も勝手に期待して、全部まる投げしました。

HIROKAZ 「変な音」という以外に注文も縛りもなかったので、埋められるところは全部埋めました(笑)。自分の家で録った音がそのまま使われています。

KOUHEI ちなみに「Galapagos」で使ったワチャワチャ言ってる部分が、今回も入っています。同じ音源です。ぜひそこにも注目してもらえたら。

──歌詞は前作の「Galapagos」同様……?

GEN はい。ガラパゴス化している日本を嘆いています。正面からは歌いたくないので、ふざけた感じで歌っていますが、「目覚めろ」ということを言っています。