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丘みどり 夜香蘭
ファンの熱望を受け花道盤としてリリース、さわやかなフォーク風ポップスも情感たっぷり
文 / 小野田衛
丘みどりの楽曲「夜香蘭(ひやしんす)」が、装いも新たに「花道盤」として登場した。もともとはデビュー20周年シングルとして今年2月に発表された楽曲だが、ファンからの熱い反響を受け、9月に「花道盤」としてのリリースが実現した。
これまでシングルでは“女の業”を歌い上げることが多かった丘だが、本作ではさわやかな質感のフォーク風ポップスに初挑戦。作曲家・杉本眞人がこの曲をピアノで弾いているのを聴き、「ぜひ歌わせてください!」と直談判したという。得意の“こぶし”は封印しても、情感たっぷりに歌い込む没入感はさすが演歌歌手だと唸らせられる。このマルチぶりはフジテレビ系「千鳥の鬼レンチャン」での活躍や、コンサートで幅広いカバー曲を披露してきた成果が結実したものだろう。
去る9月6日に行われた女性演歌歌手では初となる東京・両国国技館でのコンサートも、そんな彼女の“攻めの姿勢”を存分にアピールする内容だった(参照:丘みどり、女性演歌歌手初の快挙!ダンス、歌と芝居の融合、DJ KOO……見どころ満載の両国国技館公演)。3時間にわたり35曲を熱唱する中、衣装は12パターンも披露。子供の頃から慣れ親しんだ民謡をジャズ風に再アレンジしたり、松田聖子や森高千里のアイドル曲を織り交ぜたりしたほか、元歌舞伎俳優の河合雪之丞が監修した「幽玄組曲」では芝居と歌を織り交ぜた一大スペクタルを展開した。演歌の伝統と格式を重んじつつも、「演魅(えんび)」の世界を切り拓く第一人者となっているようだ。
なお、今回の「花道盤」には新曲「千年の花」がカップリングで収録されている。こちらは作詩を水木れいじ、作曲を池田健太郎という前シングル「涙唄」と同じ布陣による楽曲で、“ドラマチック歌謡”とも呼べるナンバーに仕上がっている。
丘みどり「夜香蘭」Music Video
- 丘みどり「夜香蘭 / 千年の花(花道盤)」
- 2025年8月18日(月)発売
/ KING RECORDS
[CD] 税込1500円 / KICM-31178
丘みどり(オカミドリ)

1984年7月26日生まれ、兵庫県姫路市出身の演歌歌手。民謡の才能を祖母に見出され、地元の教室で磨きをかけた。民謡コンクールで次々と優勝し、11歳でその道のスターに。その後秋田や岡山へレッスンに通い、演歌歌手への夢を膨らませた。18歳でアイドルとして芸能界入りし、バラエティ番組での活躍も見せる。しかし、再び歌手への道を歩む決意をし、専門学校でのトレーニングを経て、2005年に丘みどり名義での初シングル「おけさ渡り鳥」で歌手デビュー。母の病気を経て、2006年には一時活動休止を余儀なくされるが、母の遺志を継ぎ、歌手活動を再開した。2007年以降は連続でヒットを飛ばし、2016年に上京。キングレコード移籍後初となる2017年のシングル「霧の川」で再ブレイクを果たす。2024年2月にシングル「涙唄」を発表。2025年9月に両A面シングル「夜香蘭 / 千年の花」をリリースし、デビュー20周年を記念した単独公演「両国国技館 特別公演 ~花道~」を東京・両国国技館で開催した。現在でも亡き母との約束を胸に、情熱を持って歌を歌い続けている。
丘みどり(@okamidori0726) | Instagram