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おいしくるメロンパン「渦巻く夏のフェルマータ」ジャケ写

おいしくるメロンパン 渦巻く夏のフェルマータ

夏の終わりに知る喪失の味──季節や心の変化を大胆な展開で描くロックチューン

文 / 小松香里

峯岸翔雪(B)が大学の同級生であるナカシマ(Vo, G)と、高校の同級生である原駿太郎(Dr)を誘い、2015年9月に結成した3ピースバンド、おいしくるメロンパン。2023年、7thミニアルバム「answer」を引っさげての全国ツアーでは過去最高動員を記録し、その千秋楽として行われた東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演はキャリア最大規模、初のホールワンマンながらチケットは完売となるなど、結成から9年が経とうとしている今もなお、着実に支持層を広げている。

おいしくるメロンパンには夏が似合う。彼らの名を最初にロックシーンに知らしめた「色水」は夏の終わりの歌であり、「シュガーサーフ」や「look at the sea」には海のモチーフが登場する。いつの間にかおいしくるメロンパンの楽曲は夏の風物詩となっていった。

2024年夏の終わりにリリースされる彼らの新たな夏の曲が「渦巻く夏のフェルマータ」だ。ポロンポロンと奏でられるガットギターの調べとともに、ナカシマは掠れ気味の歌声で「やがて魔法から醒めてゆく 排水口に夏が渦巻く 君の気配が薄れていく 僕を残して」と歌う。夏の終わりのなんとも言えない喪失感がにじんでいき、エレクトリックギターの感傷的な旋律が響く中、“僕”が永遠だと信じていた “君”との関係は秋の訪れとともに終焉したことを伝える。

緩やかに音数が増え、アンサンブルがヘヴィネスを増していくにつれて“僕”の孤独感は増大し、夏の“魔法”が解けると同時に“君”が消え去ったことがわかる。突然耳をつんざくように襲ってくるノイジーな音の洪水にかき消されそうになりながら、ナカシマの歌は過ぎ去った思い出を紡ぎ、語りのようなパートでつづられるのは生まれて初めて知る甘美な喪失の味だ。

やがて季節は秋になり、“僕”は晴れやかな境地を迎える。非常にドラマチックな構成でもって、1つの別れにまつわる“僕”の心の動きを巧みに描いた「渦巻く夏のフェルマータ」。間違いなくおいしくるメロンパンの新境地である。

おいしくるメロンパン「渦巻く夏のフェルマータ」
2024年8月21日(水)配信開始 / RO JAPAN RECORDS
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作詞・作曲:ナカシマ
編曲:おいしくるメロンパン

おいしくるメロンパン

おいしくるメロンパン

峯岸翔雪(B)が大学の同級生であるナカシマ(Vo, G)と、高校の同級生である原駿太郎(Dr)を誘い、2015年9月に結成した3ピースバンド。これまでに8枚のミニアルバムをリリース。2024年6月から11月にかけてライブツアー「おいしくるメロンパン eyes tour – 春夏秋冬レイトショー -」を行っている。最新シングルは2024年8月配信リリースの「渦巻く夏のフェルマータ」。