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ばってん少女隊 トライじん
九州の歴史×アッパーなダンスチューン、結び付けて昇華するケンモチヒデフミによる“組み合わせの妙”
文 / 近藤隼人
独創的で洗練されたダンスミュージックを発信するアイドルグループ──2020年にプライベートレーベル・BATTEN Recordsが発足してから約4年、ばってん少女隊にはそのようなパブリックイメージがすっかり定着したように思う。USENを中心に話題を呼び、異例のロングヒットを記録した「OiSa」を筆頭に、方言、童歌、地名など、活動拠点の九州地方に古くから伝わる歴史、伝統に関連する題材を最先端のダンスチューンに昇華。どの楽曲でも日本人のDNAに刻まれる和の風情と機械的なビートが見事なバランスで調和している。
7月26日にエムカードと配信でリリースされた新曲「トライじん」も同様だ。この曲は古代に大陸から九州をはじめとする日本の土地へと渡り、文化の発展に寄与した「渡来人」がテーマ。「渡来」を英語の「TRY」と掛けることで、自身の可能性を信じて未来へと羽ばたく向上心を表現し、グループ史上最もアッパーと言える疾走感あふれる四つ打ちビートがその前のめりな姿勢を強調している。
この楽曲を手がけたのは、過去に「さがしもの」「YOIMIYA」をばってん少女隊に提供したケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)。ケンモチと言えば、大きなバズを生み出した水カンの楽曲「エジソン」をはじめ、本来交わることのない複数の要素を絶妙な言語感覚でブレンドさせる名手だ。「エジソン」「自尊心」という2つのワードがリフレインする「エジソン」のほか、「桃太郎」「聖徳太子」など、彼が手がける楽曲は歴史上の人物やおとぎ話のキャラクターがモチーフとされることが多い。そしてそれらの題材を言葉の組み合わせの妙で一気に身近なテーマへと変換し、中毒性の高いトラックへと溶け込ませる。その特異な手法は、ばってん少女隊の音楽的コンセプトとも抜群に相性がいい。
「トライじん」は冒頭から耳に飛び込んでくるフラメンコギターの音色やラテンのリズムなど、サウンド面でも組み合わせの面白さが存分に感じられる。このエネルギッシュなダンスチューンが今後ばってん少女隊のライブで大きな存在感を放つのは間違いないだろう。
ばってん少女隊(バッテンショウジョタイ)
スターダストプロモーション内スターダストプラネット所属のアイドルユニット。福岡営業所のレッスングループ、通称F-girlsとしての活動を経て、2015年6月にばってん少女隊として始動。2016年4月にシングル「おっしょい!」でColourful Recordsよりメジャーデビュー。「BATTEN×DANCE×MUSIC(BDM)」という音楽活動の指針のもと名だたるアーティストを作家陣に起用し、2017年6月に1stアルバム「ますとばい」、2019年6月に2ndアルバム「BGM」を発表した。2020年に自主レーベル・BATTEN Recordsを立ち上げ、同年10月にアルバム「ふぁん」をリリース。中毒性の高いメロディや曲調が特徴のリード曲「OiSa」がロングヒットを記録した。2021年4月に蒼井りるあ、柳美舞が新メンバーとして加入し、現在の6人体制に。最新のテクノロジーとのコラボを積極的に展開し、2022年6月にリリースした新曲「虹ノ湊」ではソニーの立体音響技術を使った新しい音楽体験「360 Reality Audio」バージョンの音源も配信した。2022年10月に九州各県をイメージした楽曲全を収録したアルバム「九祭」を発表。2024年7月に新曲2曲を収録したエムカード「トライじん」をリリースした。
ばってん少女隊(BATTEN GIRLS)(@battengirls_jp)|X