WOWOWオリジナルドラマ「FM999 999WOMEN'S SONGS」特集|女子高校生の脳内で妄想と個性が爆発!新感覚のミュージカルドラマ

長久允×湯川ひなインタビュー

自分にもこんな時期があったな(湯川)

──本作で扱われる「女って何?」は社会的な面でもタイムリーなテーマですね。どのような経緯で企画が立ち上がったのでしょうか。

長久允
湯川ひな

長久允 妻がジェンダーやセクソロジーの仕事をしているので、このトピックがタイムリーになる前から世の中に対していろいろと思うことがありました。自分は男ですが“女”というテーマで何かを発信すべきではないか?と使命感があって。

湯川ひな こういったテーマを芸術の中に取り入れて伝えていくことに、興味を持っていたので共感できました。自分が出演するとしたら意思表示にもつながるといいなと感じました。

長久 主人公の清美が経験していくことは、決して特殊ではなく誰もが体験しうる出来事なんじゃないかと思うので、ドラマティックすぎて見えないようにしています。清美以外の歌い手の女性たちに関しても、絶対にすべての人々に対して優しく肯定的なまなざしで描くべきだと意識しながら作っています。

──お二人はこれまで「そうして私たちはプールに金魚を、」「ウィーアーリトルゾンビーズ」などでご一緒されていますが、本作への湯川さんの起用には、どういった期待が込められていますか。

長久 当て書きはしていなくて、実はオーディションで選んだんです。いろんな方に会う中で、“16歳の清美”を一番適切な声とテンポ感と感情で演じていただける方が湯川さんでした。

湯川 私自身は、清美みたいな思春期を越えて、少し落ち着いた感覚があります。だから彼女の目を背けたくなるような恥ずかしさやコントロールできないものを常に抱えている感じは、今の自分にはそこまでないと思いつつも、こんな時期があったなあと懐かしくなりました。

友達だったらいっぱい話し込みたい(長久)

──ちなみに長久監督の過去作を観た人の中には、監督ご自身のパーソナリティに興味を持っている方も多いようです。たびたびご一緒されている湯川さんから見て、長久さんはどんな監督ですか?

湯川 かわいらしい方です!

長久 (笑)

湯川 興味のあることや考え方が自分とすごく似ているところがあって、同じ学校にいてくれたらよかったです。そういえば監督はグロテスクとエロティシズムの勉強をされていたと聞きました。

長久允
湯川ひな

長久 大学の頃の専攻がそれだったんです。湯川さんは僕と近い哲学思想を持っているから、同級生だったら友達になっていっぱい話し込みたくなりますね。僕の作品では無表情や不機嫌な顔ばかりさせていますが、普通にやるとただ苛立っているように見えるけれど、彼女の場合は絶妙にチャーミングに映る。コメディエンヌとしての才能がすごくあるんじゃないかと考えています。

──先ほど話題に出た歌い手のキャストは、女優、アーティスト、芸人などさまざまなジャンルの方が集まりました。なかなか選べないとは思いますが、お二人にとってお気に入りの“女”は?

長久 全員個性がバラバラで、選べないですね(笑)。

湯川 「内臓宝石の女」の真矢ミキさんは印象的です。同じ画面には映らないけれど、清美に向かって演じてくださっているのを感じました。キャラとしては……吉住さんが演じたホーミーの女が好きです! お会いして皆さんのことをすごく好きになりました。

長久 社会的な問題をはらんだ歌が多いのですが、その中で意味があまりないポエティックな歌という観点では松本穂香さんの「エビで宇宙をゆく女」が気に入っています。松本さんのキャラクターもすごくよかった。意味のある歌やキャラクターという側面では、宮沢りえさんの「一番目の女」も大好きです。

──それぞれのキャストはどういう基準で選ばれたのでしょうか?

長久 演技経験がなくとも、歌詞と楽曲に対して人間としてベストな表現をしてくれる方とご一緒したいと考えていました。例えば「一番目の女」は、聖書的なイヴではなく、より現実的な女性。怠惰でもいいし、男を無視してかっこよく生きてもいい存在であるべきと考えたときに、宮沢さんは生き方も含めてすごくぴったりでした。「総理大臣の女」は、総理大臣になるような人は男性に打ち勝つ強さよりも、女性としての根源的な魅力を保持したまま社会のトップになるべきだと考えていたので、そういうことを大事に活動されていて、歌の表現もとても魅力的な八代亜紀さんにお願いしました。

──なるほど。最後に、どのような方にこの作品が届いてほしいと思いますか?

長久 いろんな悩みを抱えている若い女性に観てもらえたらいいな。その一方で男性は知らない女性の問題もあったりするので、世の中の男性たちにわかってもらうという意味でもこの作品を観てほしいです。

湯川 私は日々生きることをがんばっている人たちに観ていただきたいな。次の日も仕事や勉強をがんばろうと思ってもらえたらうれしいです。

左から湯川ひな、長久允。

2021年3月29日更新