WOWOWオンデマンド連載 | ドラマ「前科者」主演・有村架純が明かす壮大な冒険 / 水田信二(和牛)は“大人が本気で作る”WOWOWドラマの魅力を語る (3/4)

水田信二(和牛) インタビュー

情熱を懸けて真摯に作る、そこが素晴らしい

──約15年前、芸人としての給料がまだ5000円くらいの頃からWOWOWに加入されているそうですね。生活を捧げるほど、加入したい!と思われたきっかけはなんだったのでしょう?

2006年くらいに、新番組の告知CMを観て興味を持ったんです。ドラマWの「対岸の彼女」「春、バーニーズで」のどちらかだったかな。あと、僕の好きなL'Arc-en-Cielとか、絶対にWOWOWでしか観られへんライブも放送されていたんです。それで、WOWOWのことを調べたらドラマに音楽、スポーツと力を入れていて。それなら入ろうと。実は、うちの親はテレビがすごく好きな人で、実家の各部屋にはテレビとビデオデッキがあって、録りたい番組はすべて録画してた。そんな感じを僕も受け継いだらしく、観たいものは観ないと我慢できないんです。だからそのCMで、「あ、これはもうギャラがなくてもWOWOWに入ろう」と思いました。

──筋金入りの“WOWOWドラマウォッチャー”なんですね。加入されて15年くらい経っていると思いますが、ベスト1の作品は?

それは難しいですね、悩むうー! ベスト30ぐらいやったら言えますけど(笑)。まず1つ挙げるとしたら山崎豊子さん原作「沈まぬ太陽」(連続ドラマW)ですかね。魅力は、やっぱりすごく丁寧に描かれていること。普通のドラマならはしょってしまうところがしっかりと描写されているから、のめり込んで観ることができる。全20話あるので長いと言えば長い。でも、WOWOWのドラマって、深く掘り下げて描いたほうが面白いものにはきちんと時間を掛けるし、情熱を懸けて真摯に作る。そこが素晴らしいところですかね。

「連続ドラマW 沈まぬ太陽」原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』(新潮文庫刊)

「連続ドラマW 沈まぬ太陽」原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』(新潮文庫刊)

──「沈まぬ太陽」や「下町ロケット」など、同じ原作の劇場版や地上波ドラマが作られているものもありますよね。WOWOWドラマ版をご覧になっていかがですか?

WOWOW版を観ると、(スポンサーが入っていない分)純粋に作品づくりに取り組まれているんだろうなと思います。関わっているみんなが、作品を面白くすることに向かっているというか。前後編の2話形式で作られた江口洋介さん主演の「なぜ君は絶望と闘えたのか」(ドラマWスペシャル)もすごく印象に残ってますね。

──よく記憶されてますね。

それだけ純粋に面白いからだと思います。(手元にあるWOWOWドラマのリストを見ながら)過去10年ぐらいの作品は、半分くらいは観ているんじゃないかと。

水田信二

水田信二

──最近の番組もチェックされているんですか。

はい。連続ドラマWの「密告はうたう 警視庁監察ファイル」「黒鳥の湖」「東野圭吾『さまよう刃』」、あと「華麗なる一族」も。「インフルエンス」「トッカイ ~不良債権特別回収部~」も観ています。最近の「宮部みゆき『ソロモンの偽証』」だけまだ観られてませんが、理由があるんですよ。僕、WOWOWのドラマは“ながら見”したくないから、しっかり時間を作って観たいんです。

ヘビロテ作品は「連続ドラマW しんがり」

──気付けば何度も観ている“ヘビロテ”ドラマって、なんでしょう?

「連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~」がそうかもしれません。1997年、山一證券が自主廃業になるときに、社内を監査する部署へ主人公が異動になる。自分の会社は潰れて、違う会社に行くことが決まっている人たちもいる中、「なぜこんなことが起こったのか調べなくては」と使命感で自分を奮い立たせた、まさに“しんがり(負け戦のときに、最後列で敵を迎え撃つ者たち)”がいた。その話を描いてるんです。本当にこういう社員の方たちがいたんだなあと。最後にモデルとなった人たちの写真が出てきてグッときました。

「連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW しんがり~山一證券 最後の聖戦~」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──熱い話でしたね。

主演の江口洋介さんがいいんです。江口さんといえば、「石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~」も好きなんです。僕、WOWOWで江口洋介さんが好きになりました。正義の人というイメージですが、作品によって全然違う。「石つぶて」は佐藤浩市さんとのタッグが素晴らしい。

──先に挙げられた、「なぜ君は絶望と闘えたのか」(ドラマWスペシャル)も江口さんが主演です。

このドラマの主演は、この俳優さんじゃなきゃというのが重なってくるんですかね。「沈まぬ太陽」の上川隆也さんとか、食品偽装問題を描く「震える牛」に出ていた三上博史さんもその1人です。WOWOW起用率の高い俳優さんって、薄っぺらくない“大人”を演じられる方たちじゃないかなと思います。脇役だったら國村隼さん(「空飛ぶタイヤ」「沈まぬ太陽」などに出演)や高嶋政伸さん(「セイレーンの懺悔」「華麗なる一族」などに出演)。この方たちが出てくると手ごわいんやろなって(笑)。

──女優さんで、この人が出ていると観るという方はいますか?

寺島しのぶさんが出ていたら、なんか面白いんちゃうか?と期待しますね。「春、バーニーズで」とか。それから、尾野真千子さん。「絶叫」のときの尾野真千子さん、すごかったわー。演技がとてもうまい方たちじゃないですか。だから名前を見ると、「(物語が)面白いから出たんだろうな」と思うんです。

水田信二

水田信二

大人が本気で作っているから面白い

──以前に、「WOWOWのドラマには特別感がある」というようなことをおっしゃってましたよね。

はい。例えば若手の俳優さんがWOWOWのドラマに出ていると、「あ、この人は役者さんとして認められたんだな、期待されているんだな」と。ほかにはない特別感というか、ハイレベルなものを感じるんです。

──特別感は、具体的にはどんなところにあるでしょうか?

撮影の仕方1つとってもすごく引き込まれます。わざと暗く撮ってるんじゃないの?と思うような、ほかの作品にはない照明の感じとか。とても凝っていて、ドラマなのに映画を観ているみたいな気がします。実際、CMがなくて1作品5~6話、1話が50分程度だとちょっと長めの映画2本分くらいですしね。何より大人が本気で作っているから、面白いんです。

──引き込まれた作品というと、なんですか?

最近だと「東野圭吾『さまよう刃』」ですかね。もともと東野圭吾シリーズが好きなんですけど、この作品はついつい感情移入してしまいました。竹野内豊さん演じる父親が娘を殺されて、復讐を遂げていくんです。応援はできないけれど、主人公の悲しみが減る方向に進んでほしいと共感しながら観ました。それから「坂の途中の家」もよかった。柴咲コウさん主演で、乳児虐待死事件が題材のヘビーな作品です。こういうことって誰にでも起こりうるし、男も女も観とかなあかんテーマやなって。

「連続ドラマW 東野圭吾『さまよう刃』」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW 東野圭吾『さまよう刃』」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW 坂の途中の家」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW 坂の途中の家」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──周りにWOWOWドラマについて語り合うような芸人仲間の方などはいらっしゃるんですか?

海外ドラマ好きならいるんですよ。例えば、吉田羊さん主演の「コールドケース」シリーズは、海外ドラマがベースなので「海外のオリジナル版をうまくリメイクしている」とか教えてくれる仲間がいるんですけど、残念ながら日本のドラマになると、芸人はね、少ない。絶対面白いものを観たい人が多いはずなのに……!

──WOWOWドラマの啓蒙活動はしないんですか?

10年以上前からしていますよ。「本当に面白いから」「出てる人は映画級」「スポンサーとか関係ないし、作り方も純粋やから、絶対に観たほうがいい」と言うんです。でも、みんな難しい手続きや工事をしなくちゃと思ってるのかな? 僕がよく勧めていた頃は確かにそうでしたけど、今は(BS視聴環境がなくても見られる)WOWOWオンデマンドもあるから、携帯やタブレット端末でも簡単に観られるんですよね。もっとうまいこと啓蒙活動しないと(笑)。

──周りの若い芸人さんや、WOWOWのドラマをまだ観たことがない人に向けて、水田さんからお薦めの3本を挙げてもらえますか?

そうですね、「闇の伴走者」「プラチナタウン」は本当に面白くて飽きないのでお薦めです。それから「撮休」シリーズは、俳優さんは休みのときに何をしているんだろう?というテーマで作られたドラマで、僕は「有村架純の撮休」を観ましたね。「闇の伴走者」は主演が松下奈緒さん、古田新太さんというところで、僕は観たくなったんです。サスペンスなんですけど、もともと原作小説の作者(長崎尚志)がマンガ原作者としても活動されている方で、その世界のことをよく知っているから、マンガ好きなら絶対楽しめると思います。今ドラマは第2弾まで作られていて、僕は第3弾を待ってます!

「連続ドラマW 闇の伴走者」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW 闇の伴走者」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──なるほど。「連続ドラマW プラチナタウン」はどんなところがお薦めですか?

大泉洋さん演じるエリートサラリーマンが、破綻寸前の生まれ故郷の町長になって奮闘する話なんです。自分の父親が市議会議員やったからわかるというのもあるんですけど、田舎町の議員の人ってしがらみもあるんですよね。そういう中で自分のやりたいことをやるのって、すごく大変やなと感情移入してしまいました。サラリーマン時代のやり方は通用しないし、最初は孤立してしまうけれど、地道に努力することで周りの人たちに理解されてくる。シリアスな部分もあるけど、楽しく観られるシーンも多いからWOWOW初心者も楽しめると思います。本当に、大泉洋さんが主人公にピッタリです。

「連続ドラマW プラチナタウン」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW プラチナタウン」(WOWOWオンデマンドで配信中)

移動中にWOWOWオンデマンド

──水田さん自身は、WOWOWオンデマンドでドラマを観ることはありますか?

新幹線や飛行機で移動中にWOWOWオンデマンドを使うことが多くて、社会派の「パンドラ」シリーズ(※シリーズⅡ以降を配信中)はオンデマンドで観ました。アーカイブ作品ももっと観たいですね。社会派ドラマはリアルタイムで観ているんですけど、やわらかいテイストのものを見逃していて。宮沢りえさん主演の「グーグーだって猫である」や、小林聡美さん主演の「パンとスープとネコ日和」を観たいです。

水田信二

水田信二

──ところで、これだけ観ているWOWOWドラマを漫才のネタに使ったりしないんですか?

自分がネタの中で役になり切ったときの演技には、これまで観てきたドラマのあんなキャラ、こんなキャラが投影されているでしょうね。だから、ちょっと重さが違うかも。WOWOWを観てなかったらやれていなかったかもしれません! ははははは。

──逆に、水田さんからファンの方にWOWOWのドラマについて何か言いたいことは?

ファンの人は、僕がWOWOWのドラマを好きだと知っている方が多いんです。「観ましたよ」と言う人がいたら、ちょっと話を聞いてみたいかな。これが面白かったですとか。僕が観ていないものがあれば、すごーく知りたいですね。