「仮面ライダーガッチャード ファイナルステージ」千秋楽配信記念、本島純政ら10名が座談会 (3/4)

鏡花のキャラクターは最初にいただいたプロットからだいぶ変わったんです(福田)

──次はライダーたちを支えた安倍さん、富園さん、熊木さん、福田さん、加部さんを中心に伺いたいと思います。皆さん、それぞれ自分の役の過去やご家族に迫ったエピソードがありましたが、そういったバックグラウンドを台本で知ったときにどう思われましたか?

熊木 ミナトは「ミステリアス」っていう設定が最初からあったんですが、正直、何がミナトをそうさせてるのかっていうのが自分の中でわからないままやってたところもあったんです。でもそこにつながる過去がこれだったんだっていうのがわかって、そこを知ってからは、ミナトの「ミステリアス」の方向性を自分の中できちんと決められたかなと思います。

──ミナト先生は特に振れ幅のあったキャラクターだと思いますが、彼の成長や変化を感じたシーンなどありますか?

熊木 やっぱり人々からケミーに関する記憶を消さずにおくことにしたっていうシーンが一番ミナトの変化を感じましたね。

──44話の聖さんのシーンですよね。

熊木 はい。今まで掟として絶対に曲げなかったものをついに曲げたっていうところは、1年間での成長が視聴者の人からも見て取れる部分だったのかなと。そこはできるだけ印象に残るようにしたいなと思って挑みました。

──ミナト先生は学生時代から鏡花さんとも関わりが深かったと思います。鏡花役の福田さんは自分の過去にどういった感想を持たれましたか?

福田 そうですね……鏡花はミナトとスパナそれぞれの過去のそばに立ってることのほうが多くて、どういう目的で私はそこにいるのかっていうのは考えさせられた部分でしたね。どちらかというと私はお二人のお芝居が引き立つようにしようと思っていました。

左から福田沙紀、藤林泰也

左から福田沙紀、藤林泰也

──福田さんは「1年間で鏡花はここが変わったな」と思うシーンはありましたか?

福田 鏡花は、最初にいただいたプロットからだいぶ変わったんですよ。ズボラでジョークばっかり言ってる明るいキャラクターでだと最初にすごく言われたので。あ、“とにかく明るい鏡花”ね、みたいな。私はあんまりそういう明るいキャラクターって今まではやったことがなかったんです。ただなんか、スパナに対しては、最初のほうは隠しごとがあるんで、普通の人は鏡花を見たときに「あ、この人うさんくさいな」とか「なんか隠してるよね」「調子いいな」ってちょっと引っ掛かるはずなんだけど、スパナはちっちゃい頃からそれを見てるからそれすらも疑問と思わないみたいな、そういうキャラクターでやってたんですけど、ミナト先生が敵側に行って説明をする人がいないっていうことで、私にその役が任されたんですよね。何か困ったことがあれば、鏡花に聞けばいろんな情報がしっかり出てくるみたいな感じで。

藤林 つまり「説明ゼリフが多い」っていうクレームですね(笑)。

福田 そういうわけじゃないんですけど(笑)。説明のセリフは尺も短くて本当にスピーディなんですよ。そのあたりが難しかったですし、全部に説明があるわけじゃなくて、みんな自分たちの担当回が来るまで、埋めておきたい情報とかあると思うんですけど、各自で埋めていかなきゃいけなかったりするので、「このお芝居をするためにどうやって、どこまでを埋めるのか?」っていうところが仮面ライダーという作品ならではの難しさでもあり、役者を成長させてくれる要素でもあるのかなと。

──ミナト先生がいない間、鏡花さんがアカデミー生たちのそばにいてくれているのが観ていて心強かったです。福田さんは鏡花さんのセリフで好きなものとかありますか?

福田 パクチー以外で?

──パクチー以外でお願いします(笑)。

福田 ごめんなさい、とりあえずパクチーって言えばいいって思っちゃってる部分がありまして(笑)。

──好きなシーンでも。

福田 そうだなあ。ケミーたちが白化したくだりがあったじゃないですか。私はあれ、いち視聴者としてめちゃくちゃ落ち込んでたんですよ。でも最後にはニジゴンの力で元に戻って、ケミーたちを宝太郎のところに笑顔で連れてくるところが個人的にすごく好きな鏡花のシーンです。「もうみんな大丈夫になったよ、よかったね」という保護者のような気持ちがありました。セリフとしては回想シーンで言った「大丈夫。君はきっと、自分の力を制御できるようになる……!」ですね。鏡花ってどうしてここまでスパナのことを信じられるんだろう?っていうくらい彼を疑ったことないんですよ。自分も芝居をするときに藤林くんを疑ってなくて「この子なら絶対大丈夫」っていう気持ちでやっていたんです。大人になって特に思うんですが、信じてくれる人が1人でもいるって生きててすごく心強いことじゃないですか。鏡花とスパナって、たぶんお互いがいたことで生きられたし、生かされた関係でもあるんだと思います。だから2人のきっかけになったあのセリフはとても好きですね。

──2人の信頼関係がよくわかるセリフですよね。さて、錆丸と蓮華はそれぞれメイン回がありました。メイン回があると知ったときはいかがでしたか? 私は2人のメイン回を放送当初から心待ちにしていたんですが……。

左から安倍乙、富園力也

左から安倍乙、富園力也

安倍 私もすごく心待ちにしてて。でもメイン回となったら錆丸との出会いの話とかかなって思ってたんですよ。だけど蓮華のバックグラウンドの話だったから、それはそれで視聴者の方も自分も知ることができてうれしいなって思いました。

富園 僕もメイン回をめっちゃ楽しみにしてました。まだかなってずっと待ってて。だから来たときは「うわ、来た!」って驚きでした。そこまで、マジで謎だったんですよ、すべてが。錆丸って何?っていう(笑)。

──事前に設定だけ聞かされてたとかもなく?

富園 そうですね、ちょこちょこは話し合ってたんですけど。でも自分で作らないとなと思って、想像しながらやりました。やっぱり「どうなんだろうな」っていうモヤモヤってあったので。でも、錬金アカデミーに入った理由とか、ケミーが好きな理由だったりとかも、全部の理由が錆丸回に詰まってて、自分としてもモヤモヤが取れてすっきりして気持ちよく、錆丸を演じれるなって思いました。

藤林 俺はあの回、別の意味でちょっとモヤモヤしたけどな、スパナの在り方について。こんな扱いされる?みたいな。

富園 ああ、大砲の弾にされたやつね(笑)。

藤林 1年間クールで通してたのに!みたいな。

福田 まあまあ、おいしかったんやからええやないの。

藤林 俺、宝太郎の弾よけに使われるとは思ってなかったわ。

加部 けっこうノリノリでしたよ。

藤林 正直、めっちゃ楽しかった(笑)。

──あのシーン、スーツアクターの中田裕士さんと永徳さんの演技がまたよかったですね。

福田 めっちゃ面白かった。

加治木の芯の部分は「がんばれ仮面ライダー」(加部)

──では続いて加部さんにぜひお話を伺いたいと思います。

福田 きたよ。

──いやもう、加治木がいないとガッチャードは成立しないと思っています。

藤林 確かに。

福田 わかるー。

坂巻 フウー!

本島 うれしい。加治木のインタビューって今までないんですよ。

左から熊木陸斗、加部亜門

左から熊木陸斗、加部亜門

──だからここでしとかないと、と思いまして(笑)。いろんな立場で宝太郎たちの冒険に関わってきたのが加治木だと思います。ご自分の役の好きなところや、好きなセリフなどあれば教えてください。

藤林 でも記憶ないからね(笑)。

──確かに加治木はライダーを見ても毎回その記憶を消されてしまう役でしたが、最後には思い出したということで(笑)。

加部 なんだろう、記憶消されるのも含めて、みんなに一番近くて一番遠いんですよね。ずっと。それが最後、記憶を戻してもらったりとかいろいろあるんですけど。それでもやっぱり、何回記憶を消されても「がんばれ仮面ライダー」だけは言ってるんです。このファイナルステージでも言ってるように。だからそこが彼の芯の部分なのかなって思ってやってましたね。

坂巻 最高ー。

藤林 真面目じゃん。

──加部さんがレジェンド編で演じられたバトラーも素晴らしかったです、バトラーにとってカグヤはどのような存在なのでしょうか?

加部 カグヤが本編に参加して、こっちの世界に来たときにカグヤとちょっと喧嘩っぽくなっちゃった宝太郎と、2人で公園で話すシーンがあったじゃない。あそこでやっと初めて、バトラーからカグヤに対しての言葉があって。その中で、カグヤ様は不器用とかいろいろ言ってるんですけど、それでも一緒にいるし、もちろん2人なりの関係値があるんだろうけど。お互いがお互いに必要とし合ってるから、あんな世界の中でも2人で生きてきたのかなって。それがわかってからのカグヤとの芝居の距離の詰め方とかはいろいろ考えたりしましたね。

──初めての友達ができた、カグヤ様を見るバトラーの……。

加部 保護者的な視線が強かったと思うんです、たぶん。

──ああ、そうですよね。カグヤ様を親のような優しい目で見てましたね。

加部 そうですね。