自分の弱さとすごく向き合わせてくれた作品(中条)
──ハードなシーンも多かったと思いますが、特に印象に残っているものを教えてください。
賀来 スペシャルドラマでも少し明かされたんですが、鴨居は音羽の元カノ。音羽の過去のパートでは、鴨居とのエピソードが出てきます。でも音羽の恋愛が、僕自身全然イメージできなくて。彼ってちょっとサイボーグっぽいじゃないですか。そんな音羽の裏設定を松木(彩)監督が綿密に作ってたんです、それはもう怖いぐらいに(笑)。服装もすごくこだわっていて、驚きました。
鈴木 僕、その撮影現場を見に行きました。パーカー似合ってたよ。
賀来 監督から「音羽は絶対にパーカーだから」って言われて。もう好きにしてくださいみたいな感じでした(笑)。僕自身はちょっと不安でしたが、監督が音羽像を確立してくれていたので、できあがったものを観たらいい感じになってました。
中条 そういえば、髪型も違いますよね。
賀来 髪を下ろしていたんです。恥ずかしい感じがしましたけどね。
中条 いや、時代を感じます。
鈴木 なんかさ、音羽先生と鴨居先生は恋人同士だったわけだけど、どんな話をしてるんだろうって想像するだけでキュンキュンしてくるんですよ、僕は(笑)。この映画に「~音羽の恋~」って副題を付けました。何しろ、「尚(なお)」って呼ばれるシーンがありますからね。
賀来 ハハハ(笑)。
──鈴木さんは喜多見チーフの何が印象に残っていますか?
鈴木 喜多見が、みんなに感謝を表すシーンがあるんです。ネタバレになるので細かくは言えないんですが、喜多見のあふれ出るような感情をどういうふうに言えばいいんだろうと。まったくわからなくて、内心すごく不安でした。とても重要なシーンでしたし。でも、現場に入って仲間たちの顔を見たら、自然と演じることができていました。ドラマからやってきて、喜多見は自分だし、自分は喜多見だし。仲間と一緒にやってきて、この作品に関しては役と一緒に自分も成長できましたし、チームも成長していると感じました。
中条 そのシーンでは、私たちもリハーサルから号泣しました。きっと今まで作り上げた関係があるからこそ、みんな自然に号泣しちゃったんだろうなと。この場面は私にとっても印象的でした。
──比奈先生は、ジェシー(SixTONES)さん演じる研修医・潮見の指導にもあたります。劇場版から加わったジェシーさんは現場でどうでしたか?
中条 ここまでチームワークができている中に、新しく入って来るのは大変だろうなと思っていたんですが、ジェシーさんのコミュニケーション能力がとても高くて。最初からいたんじゃないかというぐらい、「MER」になじんでました。バラエティ番組などで見せる、明るく陽気な感じで面白いことを言ってはみんなを笑わせて盛り上げていました。その一方で、芝居になると「後輩って、こんな感じでいいんですか?」と聞いてきたり。お芝居に真剣に取り組んでいる姿が素敵でした。
──中条さん自身は、今回印象に残ったことは?
中条 「TOKYO MER」という作品では、比奈先生と同じように私自身も悩みました。亮平さんを現場で見たときはドラマ1話、2話の比奈先生がそうだったように、「私は亮平さんたちみたいになれない、無理です」って言ったんです。でも、必死に付いていったら、映画のときには違う自分がいたんです。本当に自分の弱さとすごく向き合わせてくれた作品になりました。「MER」でけっこうメンタルが強くなったというか、今は「スーパーマリオ」のスーパースターモードみたいな感じです(笑)。
セリフ覚えでは口の筋肉を鍛える(鈴木)
──劇場版でも喜多見先生はスーパードクターぶりを発揮しますが、専門の医療用語を噛まずに話すコツはあるのでしょうか。また、傷病者への声掛けなど、誰かモデルにした方がいらっしゃるのですか?
鈴木 「MER」の台本をもらった直後から、“難しいセリフ集”のようなものを作りました。セリフを覚えるのは、何時間やったかではなくて、何日間やったかなんです。頭の中に入って、きちんとしゃべれるようになるには、毎日10回ずつセリフを読んでいって、とにかく口を慣らす。口の筋肉を鍛えてきちんと言えるようにしておくというトレーニングが大事なんです。それから、傷病者への声掛けは基本「こういう先生に診てもらいたい」「こういう人が上司だったらいいな」というイメージでやっています。あえて言うと、モデルにした方は(ドラマ版で医療監修に入った)関根和彦先生です。先生は最初にトリアージ(※緊急度や重症度に応じて傷病者の治療優先順位を決めること)の仕方を見せてくださいました。あのとても優しい、どんな緊急事態においても相手を落ち着かせる言い方は、演技の中に絶対に取り入れたいなと思いました。
──最後に、映画のここを観てほしいというところを一言で教えてください。
賀来 オープニングです。もうワクワクの、ここからいきなり始まるの!?というオープニングです。
中条 やっぱり、比奈先生の成長した姿を見てほしいと思います。
鈴木 喜多見先生は究極の選択を迫られます。炎の中で妻に迫られて、どうするどうする……と。その瞬間をぜひ見ていただきたいです。
プロフィール
鈴木亮平(スズキリョウヘイ)
1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。2006年に俳優デビューし、2007年公開の「椿三十郎」で映画初出演を果たす。2014年に連続テレビ小説「花子とアン」に出演して一躍脚光を浴び、2018年には大河ドラマ「西郷どん」で主演を務めた。そのほか出演映画に「HK 変態仮面」「俺物語!!」「孤狼の血 LEVEL2」「エゴイスト」、ドラマ「レンアイ漫画家」などがある。Netflix映画「シティーハンター」は2024年に全世界で配信。
鈴木亮平 (@ryoheiheisuzuki) | Twitter
ヘアメイク / Kaco(ADDICT_CASE)スタイリング / 臼井崇(THYMON Inc.)
賀来賢人(カクケント)
1989年7月3日生まれ、東京都出身。「神童」でデビュー後、映画・ドラマ・舞台で活躍。2014年には連続テレビ小説「花子とアン」、2015年には大河ドラマ「花燃ゆ」に出演した。近年の作品に映画「ちはやふる -結び-」「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」「新解釈・三國志」や、ドラマ「今日から俺は!!」「ニッポンノワール ―刑事Yの反乱―」「死にたい夜に限って」などがある。主演・原案を担うNetflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」は2024年に配信予定。
賀来賢人STAFF 【公式】 (@kentokaku_staff) | Twitter
賀来賢人 (@kento_kaku) | Instagram
ヘアメイク / 西岡達也(Leinwand)スタイリング / 小林新(UM)
中条あやみ(ナカジョウアヤミ)
1997年2月4日生まれ、大阪府出身。2012年の連続ドラマ「黒の女教師」で俳優デビューを飾り、2014年に「劇場版 零~ゼロ~」で映画初出演にして初主演を務めた。「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」の演技で、第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。そのほかの出演作は「セトウツミ」「ニセコイ」「雪の華」「水上のフライト」、ドラマ「白衣の戦士!」、「君と世界が終わる日に」シリーズなど。
中条あやみ (@nakajo_ayami) | Instagram
ヘアメイク / 山口朋子(HITOME)スタイリング / 藤井希恵