満島真之介が魅力を語り尽くす、最凶のサイコパスをめぐる韓国ドラマ「マウス~ある殺人者の系譜~」

韓国ドラマ「マウス~ある殺人者の系譜~」のDVDが5月11日より順次リリースされる。本作は俳優のみならず歌手やバラエティなど多方面で活躍するイ・スンギと、「KCIA 南山の部長たち」などで知られるイ・ヒジュンをダブル主演に迎えたサスペンス。遺体の頭部だけを切断して持ち去る「ヘッドハンター殺人事件」の発生から物語が幕を開け、25年後、2人の男がサイコパスの中でもっとも凶悪な存在“プレデター”を追跡するさまが描かれる。

映画ナタリーでは、普段から韓国映画やドラマに親しんでいる満島真之介に本作の感想を聞いた。もともとイ・スンギのファンだったという満島。役者の人間性が生かされた絶妙なキャスティングや、韓国ドラマの脚本の魅力、さらに“日本版「マウス」”の理想の配役まで語り尽くしてもらった。

取材・文 / 金須晶子撮影 / 西村満

“国民の息子”イ・スンギの人間性が乗っかった役

──日本でのテレビ放送時、すでに本作をチェックしていたそうですね。どこに興味を持たれましたか?

僕、イ・スンギが好きなんですよ。ひそかに、いつか一緒に何かできたらと願っているんです。「イ・スンギのチプサブイルチェ~師匠に弟子入り」というバラエティ番組がとても好きで。誰に対しても常に礼儀正しい姿が魅力的だからこそ、周りの人からも大切にされているんでしょうね。ドラマでは、そんな彼の人となりが役に乗っかっているので、本人なんじゃないかという錯覚を起こさせるほど引き込まれます。イ・スンギが演じるからこそ役に幅広い表情をもたらすんです。もう1人の主演イ・ヒジュンもさまざまな役を素晴らしく演じてきていますし、この2人のキャスティングに惹かれました。

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・スンギ演じるチョン・バルム。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・スンギ演じるチョン・バルム。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・スンギ演じるチョン・バルム(左)、イ・ヒジュン演じるコ・ムチ(右)。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・スンギ演じるチョン・バルム(左)、イ・ヒジュン演じるコ・ムチ(右)。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

──なるほど。そしてドラマを観てみると、第1話にはイ・スンギがまったく出てこないという(笑)。

そう! 驚きますよね。でも、それこそが韓国ドラマ(笑)。「マウス」は全20話(+スピンオフ2話)あって、各話だいたい1時間10~30分ぐらい。かなり壮大です。そんな中で、第1話に主演が登場しないのをマイナスに捉えてはいけないです。これから始まる壮大な物語の始まりをしっかり描くのが韓国ドラマのいいところだと思いますから。

──イ・スンギは韓国で「国民の息子」「国民の弟」と呼ばれていますが、本作では誰からも愛される善良な巡警を演じました。満島さんがおっしゃったように「人となりが役に乗っかった」配役ですよね。

まさしくそれがキャスティングで重要なポイント。イ・スンギが善良な役を演じるからこそ嘘や違和感がなく、観ているみんなが安心する。物語に没頭しやすいですよね。最近だと「ヴィンチェンツォ」のソン・ジュンギのキャスティングもよかったです。かっこよさはもちろん、「こんなソン・ジュンギを見てみたい」という部分もハマっていました。俳優本人が歩んできたものが反映されたり、それを逆手に取って裏切ってみたり。そういう役を演じるのは役者冥利に尽きると思います。

満島真之介

満島真之介

「マウス」を日本で作るなら誰と演じる?

──この「マウス」は過激な猟奇描写も大きな話題となり、一見するとサイコパスに振り回される恐怖の物語ですが、怒りのパワーも強く込められているように感じます。“怒り”の部分を大きく担うイ・ヒジュンさんの熱演はいかがでしたか?

素晴らしすぎて、あっぱれ!でした(笑)。イ・スンギ演じるバルムが“国民の息子”だとしたら、イ・ヒジュン演じる刑事コ・ムチは“息子というものの原型”のようなイメージ。我が強くて情に厚い、これぞ“韓国の息子”って感じがしました。これもまたイ・ヒジュン自身の性質でしょうけど、ムチがどれだけ汚い言葉を吐こうが憎めないし、違法捜査しても「行け行け!」と思えちゃうんです。

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・ヒジュン演じるコ・ムチ。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

「マウス~ある殺人者の系譜~」より、イ・ヒジュン演じるコ・ムチ。©CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

──ムチは泣くシーンも多く、感情表現が激しいキャラクターですよね。

「ヘッドハンター殺人事件」で両親を失ったムチは怒りと愛情で突っ走る男。犯人を自分の手で殺すことを目的に生きているけど、その犯人に「お前の目は雑念がみなぎっているから人を殺せない。つまり愛があるからできない」と言われるシーンがあって。愛という感情によって揺れてしまうムチは、サイコパスの対比となるキャラクターなんです。家族への愛、仕事への情熱、憎めない言動、ちょっとシャイな部分など“息子”が持つ要素のすべてがムチにある。男らしいとも少し違う。イ・ヒジュンの背中には常に両親の存在を感じさせる哀愁が漂っているんです。バルムは“みんなの息子”だけど、ムチは“お母さんとお父さんの息子”ですね。今しゃべりながら「このドラマって息子たちの物語だ!」と合点がいきました(笑)。

──ムチは“人間味あふれる”という表現では言い表せないと思っていたので、満島さんの見解を聞いて納得しました! 個人的には、満島さんにもイ・スンギのような誰からも愛される人間性を感じます。もし「マウス」が日本でリメイクされるとしたら、やはりバルムを演じたいですか?

間違いなくバルムです。俺にムチはできない! ムチのように感情を前面に出す性格じゃないし、人に罵声を浴びせたり喧嘩もしたことないので(笑)。

満島真之介

満島真之介

──では相棒のムチ役を演じてほしい俳優は?

反町隆史さん! 想像するだけで惚れ惚れするほどかっこいいなあ。イ・ヒジュンってこのドラマでは粗暴に見せているけど、本当にいい男なんですよ。だからいつもかっこいい反町さんがムチみたいな男を演じるのも観てみたいです。