「前田建設ファンタジー営業部」小木博明×佐久間宣行インタビュー|感動するって聞いてない!“和製ジャスティン・ビーバー”も驚いた、熱いお仕事ムービー

高杉真宙の主演作「前田建設ファンタジー営業部」のBlu-ray / DVDが9月9日に発売される。本作は実在する企業・前田建設工業が、架空の世界の建造物を実際に作ったらどうなるかを工期・工費を含めて検証したWeb連載を原作とする物語。アニメ「マジンガーZ」の地下格納庫の見積書を作るため、高杉演じるドイら広報グループの面々がフィクションの世界を相手に悪戦苦闘するさまが描かれる。「ぐらんぶる」の英勉が監督、ヨーロッパ企画の上田誠が脚本を担当した。

映画ナタリーでは、Blu-ray / DVDの発売を記念し、ドイの上司であり計画の発案者・アサガワ役の小木博明(おぎやはぎ)と、劇場で本作を鑑賞し称賛していたテレビ東京プロデューサー・佐久間宣行のリモート対談を実施。バラエティ番組「ゴッドタン」などで長年小木と親交の深い佐久間が、俳優・小木博明の魅力を熱弁するほか、小木が本作への出演で気付いた自身の新たな一面を語る。また、役作りの末に小木に起きたある“奇跡”の話も飛び出した。

取材・文 / 佐藤希 撮影 / 高原マサキ(佐久間宣行)

“和製ジャスティン・ビーバー”ですよ!(小木)

──佐久間さんは劇場でご覧になったということですが、観ようと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?

佐久間宣行 そもそも僕が監督の英勉さん、脚本を担当した上田誠さんと昔から知り合いだったんです。あと、5年ぐらい前におぎやはぎとオードリーと英さんと「SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜」っていうコント番組を撮っていたときに、英さんが小木さんと初めて仕事をしたんです。その現場で英さんが「佐久間さん、俺はすごい役者を見つけた!」と言っていて(笑)。それが小木さんのことだったんですよ。

リモート対談中の佐久間宣行。

──そうだったんですね。

佐久間 「小木さんは色気もあるし、とにかくすごいんだよ!」って、言ってましたよね。

小木博明 そうなんですよ。

佐久間 そのときは、「なるほど、こう言って素人を乗せていくタイプの監督なんだな」と思っていたんですけど。

──(笑)

佐久間 それから数年後に、本当に小木さんがメインクラスの役を演じる映画を撮るって聞いたので、「あれ本当だったんだ!」ってびっくりしたんですよ!

小木 そうだったんだ。

佐久間 上田さんも昔から大好きな方で、スタッフとキャストに好きな人しかいなかったことも観に行こうと思った理由ですね。

──実際にご覧になっていかがでしたか? 英監督の作品にはコメディが多いので、とても楽しんで撮られているような雰囲気がありました。

佐久間 めっちゃくちゃ面白かったです! 小木さんの傍若無人さと真面目さがアサガワに凝縮されているような気がしました。アサガワはもうちょっとコメディリリーフなのかと思っていたんですが、あんなにエモーショナルな役だと思わなかったです。小木さん、モラハラ夫から熱い上司まで演じられて幅が広い!

「前田建設ファンタジー営業部」より、小木博明演じるアサガワ。

小木 ふふふ(笑)。いろんなところから褒めてもらっちゃいましたけど、誰より佐久間さんがすごく褒めてくれて。佐久間さんが「よかった!」って言うと、みんな褒めるようになるんですよね。

佐久間 (笑)

小木 今となっては佐久間さんはけっこう重要な人なんですよ。佐久間さんがけなしたらその作品はダメだから、俺は佐久間さんを意識しましたね。

──インフルエンサーのようですね。

小木 ジャスティン・ビーバーが褒めたらピコ太郎がブレイクしたみたいな感じ。“和製ジャスティン・ビーバー”ですよ! いつの間にかそういう人になっちゃってるもの。

ロバート・デ・ニーロみたいなアプローチしてるってこと!?(佐久間)

──小木さん、相方の矢作(兼)さんは本作をご覧になったんでしょうか?

小木 はい、すぐに観てくれましたよ。「とにかく小木がかっこいい」って言ってくれました。

佐久間 (笑)

リモート対談中の小木博明。

小木 あと(演技が)うまいと言ってくれてうれしかったです。矢作は俺に嘘をつかないんです。ダメなものはダメってちゃんと言ってくれるし。

佐久間 おお。

小木 何十年も一緒にいて、いい部分も悪い部分も知ってるし、俺を一番見てくれている矢作がいいって言ってくれてるんだから、いい作品、いい芝居だったんだなと思えるようになりましたね。矢作が自信を付けさせてくれました。

佐久間 でも本当に面白かったですよね。アサガワもすごくよかったし。

小木 ありがとうございます。僕がアサガワを演じたときには、モデルになった前田建設の岩坂(照之)さんが笑っていればいいなと思いながら芝居していました。岩坂さんって、熱血でいかにも周りに慕われていそうな方で、人当たりもやわらかくていい感じの人なんです。だから陰ながら常に岩坂さんの行動を見ていたんですよ。

佐久間 えっ、じゃああれって一応取材にもとづく演技なんですか!?

小木 (笑)。あれこそ、まさに本物の岩坂さんなんですよ。

佐久間 小木さん、ロバート・デ・ニーロみたいなアプローチしてるってこと!?

小木 そうそう、俺ロバート・デ・ニーロに憧れてるから。

佐久間 (爆笑)

──劇中で小木さんは「サバが一番うまいんだよ」というセリフをアドリブで入れられていたそうですが、実は岩坂さんも部下から誕生日にサバ缶を贈られるほどのサバ好きだそうです。では、これも研究の結果で生まれたアドリブだったんですか?

小木 あとから聞いてびっくりしちゃったんですけど、本当にたまたまなんです。アサガワが電話をしているシーンだったんですが、監督から何を話してもいいって言われていたので話題を考えていたんですよ。そしたら、なぜかいきなり石倉三郎さんと、あるロケで一緒になったときに「サバが一番うめえんだよ」と力説されたのを思い出したんです。それで、取り入れました。

──そうしたら、岩坂さんが偶然大のサバ好きだったと。

小木 すごいですよね! たぶん俺が常に岩坂さんのことを見ていたからそういう芝居になっちゃったし、サバも好きになっちゃったんでしょうね。もう岩坂さんになっちゃった。

佐久間 ははははは!(笑)

──寄せたというより、“なった”(笑)。佐久間さんから見て、アサガワの魅力はどういうところにあると思いますか?

佐久間 荒唐無稽なものに夢を見させてくれる上司って、あまりいないじゃないですか。あと、リーダーって全部自分でやるタイプと、「支えてあげたい」と思わせる人の2つに分かれると思うんですよ。「この人の背中を支えたい」って思わせてくれるかわいげがアサガワの大事な部分だと思います。その点が小木さんの人間的な魅力と相まって、すごくいいキャラクターになったんじゃないでしょうか。

「前田建設ファンタジー営業部」

──確かに、SNSでも「アサガワのような上司が欲しい」という感想がありました。以前ラジオで「小木さんの演技で泣くと思わなかった」とおっしゃっていましたが、どういう点が涙腺に引っかかったんですか?

佐久間 サラリーマンはみんなそうだと思うんですけど、組織の中で働いていると現実と折り合いを付けなくちゃいけないから、夢みたいなことが言えなくなってくるんですよ。「それでも、やるんだよ」ということをアサガワが教えてくれたので、心が折れても、折れたうえでやりたいことを見つけていかないといけないんだよな、と思ったんです。