目をそらしては駄目
──第2次世界大戦を題材にした映画はこれまで多く作られていますし、今後もクリストファー・ノーランの「ダンケルク」などが公開されます。約70年も前の戦争がクリエイターを触発する理由を分析するとしたら?
僕の場合の話になりますが、戦争体験者の方がだいぶいらっしゃらなくなってきたので、その方々がご存命のうちに体験を聞いたり調査をして、後世にきっちりと伝えていかないとという意識がありますね。戦争になるとこういうことが起こるんですよと見せつける意味でも、作らなきゃなと思います。戦争に行くことになっても仕方がないんじゃないかと思っている人がいたら、「ハクソー・リッジ」のような映画をちゃんと観て「戦争になるとこういうことが起こるし、戦場に行くのは自分自身や子供たちなんだ」と考えてほしいです。戦場で何が起こるのかという恐ろしさは、ギブソン節爆発と言えるほど描かれていますからね。
──具体的にはどういった層に届いてほしいと思われますか?
老若男女問わずですが、特に若い人ですね。彼らがこれからの未来をつかさどるわけですから。恐ろしい状況になることを防ぐためにも、戦争の実態を描いたこの映画を観てほしいです。
──「ハクソー・リッジ」は凄惨なシーンを含む作品なので、もしかしたら抵抗感を抱く方もいるかもしれません。
そういう人は「時計じかけのオレンジ」のルドヴィコ療法のシーンみたいに、つまようじなんかで目を開いた状態に固定して……(笑)。恋人と一緒に映画館に行ったとしたら頭を押さえてもらって、意地でも観るようにするといいと思います。目をそらしては駄目ですよ!
キャラクター紹介
- 「ハクソー・リッジ」
- 2017年6月24日(土)公開
- ストーリー
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子供時代の苦い経験から、聖書の「汝、殺すなかれ」という教えを大切にして育ったアメリカ人の青年、デズモンド・ドス。第2次世界大戦が激化する中で、彼は「衛生兵としてなら自分も国に尽くすことができる」と考え、陸軍に志願する。だが断固として武器に触れることを拒むデズモンドは上官や仲間の兵士たちから嫌がらせを受け、ついには軍法会議にかけられてしまう。ある人物の尽力によりデズモンドの主張は認められるが、彼が派遣されたのは“ハクソー・リッジ”と呼ばれる沖縄の激戦地だった。包帯とモルヒネだけを持ち、飛び交う銃弾をかいくぐって重傷の兵士たちを救おうとするデズモンド。その姿に、かつて彼を臆病者呼ばわりした仲間たちも感嘆の目を向け始めるが……。
- スタッフ / キャスト
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監督:メル・ギブソン
デズモンド・ドス:アンドリュー・ガーフィールド
グローヴァー大尉:サム・ワーシントン
スミティ・ライカー:ルーク・ブレイシー
ドロシー・シュッテ:テリーサ・パーマー
トム・ドス:ヒューゴ・ウィーヴィング
ハウエル軍曹:ヴィンス・ヴォーン
©Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
- 塚本晋也(ツカモトシンヤ)
- 1960年1月1日生まれ、東京都出身。1989年に「鉄男」で劇場映画デビューし、以降は「東京フィスト」「六月の蛇」「KOTOKO」など数々の監督作を発表。監督、主演、脚本、編集、撮影、製作の6役を務めた2015年公開の「野火」では、第70回毎日映画コンクールの監督賞や男優主演賞などさまざまな映画賞を獲得した。2016年には、遠藤周作の小説をマーティン・スコセッシが映画化した「沈黙-サイレンス-」に出演。アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介らと共演した。