映画ナタリー Power Push - 「ギヴァー 記憶を注ぐ者」

主人公の吹替担当・増田俊樹インタビュー&「太陽」監督 入江悠コラム

大変なのは台本に書かれていない気持ちを読み解くこと

増田俊樹 増田俊樹

──アニメと実写のアフレコは違いますか?

ちょっと違う部分はあると思います。アニメでも人間を演じるときは、根底にある感情はまったく同じで、嫌なものを見たら嫌だって思うのも一緒だから、僕の中では区別せずにあまり差は付けずに芝居をしたいなと思っていますが、表情や言葉など味付けの仕方はアニメのほうがより強くなると思います。

──ジョナスという役についてどう捉えましたか?

管理社会の裏側を知っていくうちに、今までの自分の人生が間違いではないけれど知らないことだらけだったと気付いて、それに疑問を抱くようなすごく素直な子です。新しい情報を得るのは刺激的だからどんどん教えてほしいと思うんですが、その中で痛みや失うことの怖さなども知っていく。見た目は大人だけど、中身は赤ちゃんのように純粋な人間が、知識や知恵を身に付けて変化していく姿を描いた作品です。

──アフレコはどのように進んでいったんですか?

増田俊樹

収録は出演者全員でやりました。僕は彼らが生活している物語の本線とジョナスのナレーションの2つがあって、収録時間は6時間弱くらいだったかな。

──役作りで意識した点はありますか?

すでにブレントン・スウェイツさんが演じているジョナスからブレないようにということですね。あの世界の人たちは人格を複雑化させないことで1つの平和を保っていますし、ジョナスたち若者は裏がなく、台本に書かれているセリフが答えだったりするので、キャラクターはそんなに作ってないです。大変なのは、メリル・ストリープさん演じる主席長老や、ジェフ・ブリッジスさん演じるギヴァーのほうだったと思います。過去を知っているけれど、知らないふりをして世界の平和を保とうとする。意味のないセリフを発したり、本心とは違うセリフを発したり、台本に書かれていない気持ちを読み解いて演じなくてはいけないと思うので。ジョナスも後半そうなっていきますが、純粋だから本心を隠しきれない(笑)。

最終的にはなんとかなるっていうふうに考え方を変えた

ローズマリー役のテイラー・スウィフト。

──ジョナスは音楽や愛情を知って喜びますが、最近新たに知ってうれしかったことはありますか?

案外何も考えずに生きてもいいのかなということです。例えば、今まで先輩たちに飲みに誘われても、自分には場を楽しませる自信も、価値もないと思っていたので、あまり積極的には参加できなかったんです。でも人付き合いを増やすことで新たな自分を知ることができると思い、どんな失敗や挫折でも本気で立ち向かっていくことが人間を変化させるには重要だと気付きました。

──なるほど。ジョナスが戦争や差別を知って嫌になったように、逆に知りたくなかったことはありますか?

その変化が嫌な部分もあります。人付き合いを増やすというのは、まるくなる、大人になるということでもあると思うので。役者として芸術家肌な部分をどこかで持ちたい自分がいるので、トゲトゲした情熱がなくなってるような気がして、それは少し残念な気がします。

増田俊樹

──表裏一体ですね。

一番いいところでスイッチングできればいいんですけどね。ただ僕も単純な人間なのでそう簡単にはできない。だからせめて最終的にはなんとかなるっていうふうに考え方を変えました。

──何かきっかけがあったんですか?

人生について考える機会があって、その後この作品に出会って、当たり前のものを当たり前と感じずに、1つひとつをプラスに捉えて見ようと思ったんです。今、僕は25歳なので新しいことに挑戦して、その中で仲間を持つことや愛を知ること、新たな感性を持つことの大切さを学んでいきたいと思いました。

自分が生きている人生がどれだけ色鮮やかなのか気付かされる

──今25歳ということですが、いろいろ意欲的ですね?

僕はいろんな仕事をして、お金を稼いで、タワマンとか住みたいんです(笑)。だから同世代とかで言われるさとり世代の物質的な欲がないという感覚はまったくわからないです。でも、この作品はいわゆるさとり世代には、「欲しい」という感情を持つきっかけになるかもしれないですね。

──最後に作品の見どころは?

今、僕らは当たり前のように色や感情を持っているんですが、いざ失われたときに、失望や虚無に駆られると思うんです。逆にこの作品では意識していなかったことへの気付きという新たな出会いがあり、愛情を知り、赤ん坊のような存在がどんどん成長していく物語なので、自分が生きている人生がどれだけ色鮮やかなのか、改めて気付かされる作品だと思います。

増田俊樹 増田俊樹

「ギヴァー 記憶を注ぐ者」主人公の日本語吹替・増田俊樹コメント動画

「ギヴァー 記憶を注ぐ者」2016年1月20日発売
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Blu-ray Disc 5076円 / PCXE-50582
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あらすじ

いかなる争いも揉めごともない平和な管理社会が確立された近未来。完全な平等世界であるコミュニティの住人は過去の記憶を持っていない。その中で育った青年ジョナスは、過去の記憶を次世代に伝える“記憶を受け継ぐ者=ザ・レシーヴァー”に任命され、“記憶を注ぐ者=ザ・ギヴァー”に教えを請うことに。色彩や音楽など楽しい感情を得ていくジョナスだが、次第にコミュニティの裏側に隠された秘密を知り、この世界に疑問を抱きはじめるのだった。

スタッフ

監督:フィリップ・ノイス
原作:ロイス・ローリー

キャスト

ギヴァー:ジェフ・ブリッジス
主席長老:メリル・ストリープ
ジョナス:ブレントン・スウェイツ
父親:アレクサンダー・スカルスガルド
母親:ケイティ・ホームズ
フィオナ:オデヤ・ラッシュ
ローズマリー:テイラー・スウィフト

増田俊樹(マスダトシキ)

1990年3月8日、広島県生まれの声優、俳優。2011年テレビアニメ「遊☆戯☆王 ZEXAL」で初のレギュラー出演を果たす。その後2013年、アニメ「サムライフラメンコ」の羽佐間正義役でテレビアニメ初主役を務める。そのほか出演作に、映画「ブリングリング」、海外ドラマ「超能力ファミリー サンダーマン」「ウェイワード・パインズ 出口のない街」などがある。