「ジェントルメン」おいでやすこが、英国マフィア風グラビアに挑戦!“中年の危機”描くガイ・リッチーの所信表明

「スナッチ」「コードネーム U.N.C.L.E.」で知られるガイ・リッチーの監督最新作「ジェントルメン」が、5月7日に全国公開される。この映画は、リッチーの初期作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」などを思わせる痛快クライムサスペンス。ロンドンの裏社会を舞台に、500億円の利権に群がったクセ者たちの騙し合いが描かれる。大麻ビジネスで財を成した大富豪ミッキーにマシュー・マコノヒーが扮し、チャーリー・ハナム、コリン・ファレル、ヒュー・グラントも共演に名を連ねた。

映画ナタリーの特集には、「M-1グランプリ2020」の決勝に進出し大ブレイク中のピン芸人ユニット・おいでやすこがが登場。洋画をもとにした“細かすぎて伝わらないモノマネ”で知られる映画好きのこがけんが、おいでやす小田に向けてリッチー作品の魅力を説いてくれた。ベテランと若手のマフィアやチーマーたちが入り乱れ戦う本作を、2人はどう見たのか? またベテランピン芸人である2人が、第7世代をはじめとする若手芸人への思いも語る。劇中の“渋カッコいい”マフィアたちになりきった2人の撮り下ろしグラビアにも注目!

取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 草場雄介

編集で加工しまくった映像でかっこよく見せる監督(こがけん)

──お二人がバラエティ番組「有吉の壁」で「シャイニング」に出てくる双子の少女のコスプレをされていたとき、映画好きの間でもかなりの話題になっていたんですよ。

左からこがけん、おいでやす小田。

おいでやす小田 本当ですか! あれはこがけんが考えて。

こがけん そうですね。たまたま2人とも七三分けに眼鏡で、そっくりな見た目をしていたので、双子もできるかなって(笑)。これからもがんばって映画ネタを考えたいです。

──お二人は普段どんな映画を好んでご覧になるんですか?

小田 僕は最近、コロナ禍ということもあってほとんど観れていないですね。

こがけん コロナは関係ないでしょう!(笑)

小田 まあまあ(笑)。前はほんまにちょっとだけ観ていたんですが、今はそれもなかなかできなくて。

──こがけんさんは、“細かすぎて伝わらないモノマネ”でのハリウッド映画をもとにしたネタでも知られていますが、やはり洋画がお好きなのでしょうか。

こがけん 基本的に邦画よりもハリウッド映画を観るほうが多いですね。ガイ・リッチーで言うと「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」、あと「シャーロック・ホームズ」「コードネーム U.N.C.L.E.」は観ています。

──ではガイ・リッチー作品をチェックしてきたこがけんさんから、ぜひ小田さんにその作家性を解説していただけたらと思うのですが。

ガイ・リッチー(中央)

小田 ああ、詳しくない僕に教えるとしたら、どう?

こがけん 最近のイメージで言うと、スタイリッシュなアクション映画を撮っている人ですね。でも初期の頃はこの「ジェントルメン」のようなクライムコメディを多く手がけていて、編集で加工しまくった映像でかっこよく見せる印象です。たぶん「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を観てもらうのが一番わかりやすいかな。

小田 なるほど。この「ジェントルメン」を観て、音楽に合わせて映像を編集したり、おしゃれな演出をしていたり、スタイリッシュな部分は僕にもわかりましたね。開始30秒でうわーと思いましたもん。主人公がパブに入ってきて、レコードをかけて……世界観、おっしゃれやなー!という。

「ジェントルメン」

こがけん 僕の率直な感想としては、まずめちゃくちゃ面白かったです。「ロック、ストック」や「スナッチ」といった初期作に通ずる、原点回帰と言えるスタイリッシュなクライムコメディなんですが、よく考えてみるとその2作とは違うところも多くて。その2作って、「そんな奇跡が重なるわけねえだろ!」っていうことが連続していく面白さがあったじゃないですか(笑)。マリファナを強奪して売りさばこうとしたら、盗んだ相手の元締めに行き着いちゃうような、複雑な出来事が1つに帰結していく仕組みで。でも今回は、もっと人物が掘り下げられている印象でした。キャラクターをきちんと描きながら、スパイスとしての偶然によって話が展開していく。おそらくガイ・リッチー本人が、みんなに「あの頃のようなクライムアクションを撮ってくれ」と言われてきたからこそ、同じようにやったら古く感じるということを一番わかっていたんだと思います。

だって、全員悪いじゃないですか(小田)

──おっしゃる通り本作は、「ロック、ストック」「スナッチ」と同じくロンドンの古参マフィアや悪ガキたちの混戦模様を描くクライムアクションです。初期作は若者目線の描写が多かったのに対し、今回は上の世代の目線で描かれており、ガイ・リッチーの年齢やキャリアを感じさせる部分でもありましたね。

おいでやす小田

こがけん そうですね。

小田 なるほど。初期作を知らない僕は、自分がどの人物の目線で観ていたのかまで考えられていなかったんですが……だって全員悪いじゃないですか。

──まさに全員悪者です!

小田 ですよね? わかりやすく正義と言える人物がいなかったので、主人公に感情移入したとか、「この人に勝ってほしい!」という目線で観ていたわけではないですね。ただ登場人物が全員一癖も二癖もある人だったので、ここからどうなんねやろというワクワクが常にありました。

こがけん しかもキャストには、あえてギャング映画っぽくない人を選んでいますよね。「このメンツ見た? 俺は今までと違うんだぜ?」というガイ・リッチーの声が聞こえてくるようでした。「ガイ・リッチーのマフィア映画なら、絶対ジェイソン・ステイサムが出るだろ!」とみんなが思っているところで、あえて「今回は俺、出してないんだぜ?」というメッセージすら感じる。「ブリジット・ジョーンズの日記」のヒュー・グラントなんかは、軽薄な色男を演じさせたら右に出る者はいないロマンティックコメディの帝王なので、今回のような厄介な探偵を演じて光らないはずがない! ガイ・リッチーの作品はとにかく登場人物が多いので、途中で誰が誰だかわからなくなることがあると思うんですが……。

小田 (無言でうなずく)

こがけん そういう作品こそ人の名前を覚えていないと面白さが半減してしまうので、これに関しては本当に「我慢して覚えてくれ!」としか言いようがないんです。でも正直「ロック、ストック」に比べたら人数が減っているし、衣装でキャラクターを表現していると思うんですよね。観る側にとってすごく重要なことで、人物の区別がすごく付きやすくなっているんです!(笑) 例えばコリン・ファレル演じるボクシングジムのコーチは、ただのスポーティなトラックスーツではなく、トラディショナルなチェック柄を着ている。この人は何か信念やこだわりがありそうだぞと想起させますよね。

小田 覚えられなかったと言うほどではないけど、確かに人数は多かったです。でもそう言われたら衣装とか、メガネとか、ひげとか、確かにポイントになってますね。レイ(チャーリー・ハナム)のひげとかすごいわかりやすい特徴やん。