ハライチ岩井勇気が観るAmazon Prime Video庵野秀明特集|「さらば、全てのエヴァンゲリオン。」の前に──庵野秀明の過去作をイッキ見!

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が全国で公開中。Amazon Prime Videoでは本作の総監督を務めた庵野秀明の過去作を配信している。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」につながる「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」3作、第40回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を獲得した「シン・ゴジラ」のほか、実写作品「式日」「ラブ&ポップ」、2020年に放映30周年を迎えた「ふしぎの海のナディア」がラインナップに並ぶ。

映画ナタリーでは、「エヴァンゲリオン」シリーズのファンであるハライチ・岩井勇気にインタビューを実施。岩井が感じる庵野作品の魅力とは? また「新劇場版」シリーズで岩井が注目する意外なキャラクターや、アニメ好きならではのAmazon Prime Videoの利点も語ってもらった。

取材・文 / 佐藤希 撮影 / 曽我美芽

これは母性なんだなって

岩井勇気

──現在Amazon Prime Videoでは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ過去作が配信中です。「:序」「:破」「:Q」と3作ありますが、岩井さんが各作品を通じて一番好きなシーンを伺えますか?

うーん……(考え込む)。「:序」だとヤシマ作戦のシーンが好きですね。本当にかっこよくて。

──「:序」の後半の山場ですね。第5使徒※との激闘が大迫力で展開されました。

※使徒:第3新東京市のネルフ本部を目指して襲来する敵性生命体の総称

そうですね。「:破」はみんな第10使徒との戦闘シーンばかり話題にしますけど、僕は中盤の第8使徒とのバトルが好きです。(主人公の碇)シンジくんが第8使徒の着地点に向かって走る途中に「A.T.フィールド全開!」って言うじゃないですか。あそこは本当に好き。あとは(式波・)アスカ(・ラングレー)のひざ蹴り(笑)。

──「:序」「:破」と続いたあとに「:Q」を観ると、全然違うテイストに驚きますよね。

まったく別物になりますよね。

──「新劇場版」シリーズは劇場でご覧になったんでしょうか?

はい、それぞれ劇場で観ました。DVDでときどき観返すこともあるんですが、初めて「:序」「:破」を観たとき、綾波(レイ)がシンジくんに優しくしていたのって、人間の感情が芽生えてきたからなんだと思っていたんです。でも「:Q」まで観ると、これは母性なんだなって。自分の子供って、優しくされたから優しくし返すんじゃなくて、無償で愛するものですよね。自分の子供を愛するような母性の片鱗を、綾波に見ていました。

──なるほど。綾波とも良好な関係を築き始めていたシンジくんですが、「:Q」ではショッキングなこともありました。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(総監督:庵野秀明)より、碇シンジ(CV:緒方恵美)。©カラー

「新劇場版」シリーズのシンジくんからは「思春期+反抗期」の雰囲気を強く感じるので、より子供っぽく映りますよね。内向的ではあるんですけど、大人に無理やり引きずり出されて、「だったらこれでいいんだろ!」って反抗して暴走するシーンも多かったですし。

──アスカには「ガキシンジ」って言われていましたね。

言い得て妙だなと思いました(笑)。「新劇場版」シリーズは、シンジくんに“対大人”感をすごく感じるので、今の若い子は共感しやすいんじゃないかと思います。

ずっと綾波が好きです

岩井勇気

──ちなみにお好きなキャラはいますか?

冬月(コウゾウ)が大好きなんです。「:Q」でシンジくんと将棋を指すシーンがありましたけど、将棋をしながら会話しようとするところが人間っぽい。僕将棋に詳しいわけじゃないんですが、デジタル的な確率論で指すと人間性って見えてこないと思うんです。冬月自身が将棋に人間性が出るもんだと思っているところが僕的には素敵ですし、多感な時期の子供と普通に会話をするのってけっこう難しいですから、そのほうがいいと思ったんだろうなって。

──相手がシンジくんだとなおさらその難しさがあるのかもしれないですね。

そうですね。そもそもシンジくんにはゲンドウっていう本当の父親がいるわけじゃないですか。ゲンドウより密なコミュニケーションを取るには、ということで将棋を選んでいるとしたら優しいですよね。

──ちなみに女性キャラクターは誰が一番好きですか? 有名なところだとレイ派とアスカ派で意見が分かれることもありますが。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(総監督:庵野秀明)より、アヤナミレイ(仮称、CV:林原めぐみ)。©カラー

ずっと綾波が好きです。「新劇場版」シリーズって“綾波アニメ”だと思っているので、僕としてはものすごく楽しめてうれしいです(笑)。

──先ほどもレイの内面に注目されていましたが、どういうところに惹かれていらっしゃるんでしょうか?

テレビシリーズを観ていたとき僕は中学生ぐらいだったので、登場人物と同じ年代なんです。当時ちょっとこじらせていたんで、そのとき感じた「人ではないような得体の知れないかわいさがいいな」っていう気持ちを大事にしています。ちょっと言い方が乱暴かもしれないんですけど、男は断然綾波が好きだと思うんです。僕ギャルゲーとかやってても、ほかのみんなの好感度がめちゃめちゃ下がっても、こいつだけは俺のこと好いてくれてるなってキャラがすごく好きで(笑)。シンジくんも、(綾波が)いいと思ったら周りの意見に流されずに思い続けるところがいいですよね。

庵野監督は“でかいものをでかく見せる”のがうまい

──「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズのほかにも、庵野監督の過去作「シン・ゴジラ」「式日」「ラブ&ポップ」がAmazon Prime Videoで配信中です。「シン・ゴジラ」も以前ご覧になったそうですが、岩井さんの思う庵野監督作品の魅力はどういう点だと思いますか?

「式日」と「ラブ&ポップ」は予告編を観たんですが、庵野監督っぽい感じがしてすごく面白そうだなと思いました。アニメの「新劇場版」シリーズ、実写の「シン・ゴジラ」で感じたことで言うと、庵野監督は“でかいものをでかく見せる”のが本当にうまい方だなあと思ったんです。

──と言いますと?

特撮作品も撮ってきて、本当にお好きだっていうこともあるかもしれないんですが、特撮は撮影するときに人間サイズのものをそれ以上の大きさに見せないといけないわけですよね。エヴァンゲリオン自体も本当にすごく大きく感じられて、自分が実際に作品の世界にいるような感覚にさせてくれるんです。「新劇場版」は空中戦も多いんですが奥行きがあって、空間の使い方が得意な方なんだと思っています。