ポートフォリオ作成からマネタイズまで!「Xfolio(クロスフォリオ)」を森田季節×もぐらかかりちょーが使ってみた

ポートフォリオ作成からマネタイズまで、クリエイターにとって必要な機能を搭載したプラットフォーム「Xfolio(クロスフォリオ)」。これまでのポートフォリオサイトでは収益化機能が弱く、またイラストレーターやマンガ家などの絵描き向けのサービスという印象が強かったが、クロスフォリオでは複数のマネタイズ方法に対応している上、2023年5月に小説カテゴリを追加してテキスト作品の投稿も可能になった。

この機能を活用する形で、「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」などで知られる小説家・森田季節の最新作「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」が、クロスフォリオに開設した自身のポートフォリオ上で無料連載を開始。また同作はコミカライズが決定しており、来春にはクロスフォリオのポートフォリオの有料作品機能を使って、商業オリジナル作品として配信開始される予定となっている。

コミックナタリーでは、クロスフォリオ上での「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」の小説配信開始とコミカライズ決定を記念して、森田季節と、同作のコミカライズを担当するマンガ家・もぐらかかりちょーの対談を実施。これまでポートフォリオを作成したことのない2人が実際にクロスフォリオを操作した感想から、作品に力を込めたポイントなどについて語ってもらった。

取材・文 / 太田祥暉(TARKUS)

Xfolio(クロスフォリオ)とは?

Xfolio

「すべてのクリエイターに、スポットライトを。」をコンセプトに、ポートフォリオ作成からファンコミュニティ、ショップ機能まで、クリエイターにとって必要な機能を集約した総合プラットフォーム。2023年5月には小説カテゴリも開設され、テキスト作品も投稿できるようになった。

ポートフォリオを作る

「Xfolio」はジャンルを超えたクリエイターの、予期せぬ出会いにつながる

──これまでおふたりはポートフォリオを作成されたことはありますか?

森田季節 担当さんからクロスフォリオのお話を伺うまで、ポートフォリオを作ったことはありませんでした。僕がデビューした頃はまだブログが盛んだったので、それが代替手段になっていましたね。そもそも、小説家の場合、イラストレーターさんと比べるとわかりやすい作品の展示場所がなかったんです。小説投稿サイトにだけ作品を発表している人なら、そのユーザーページがポートフォリオになるかもしれませんけど、新人賞を狙っている人や商業誌だけで書いている人はその限りではありませんからね。

もぐらかかりちょー 私もポートフォリオを作成するのは今回が初めてでした。

──素朴な質問ですが、これまでおふたりはどのようにして仕事を得ていたのでしょうか。

もぐら 何社かに持ち込みをして、担当さんにアシスタント先をいただいたりしていました。基本的には自分の原稿を持って持ち込みをすることで、仕事をいただいていました。

森田 10年ほど前まで、ライトノベルってデビューしたレーベルからしか本をしばらく出せないということが多かったんです。ただ、僕はSF小説を出す機会があり、それが呼び水となってほかのレーベルからも依頼をいただくようになったんです。自分から動いたことは1回だけあるんですが、それも友人の作家さんが「この編集部が作家を探しているらしいよ」という話をされていたからで。送った原稿がそのまま刊行されることはなかったんですが、後日お仕事をいただくことができました。

「Xfolio」は「すべてのクリエイターに、スポットライトを。」をコンセプトに掲げている。

「Xfolio」は「すべてのクリエイターに、スポットライトを。」をコンセプトに掲げている。

──なるほど、ではおふたりともクロスフォリオが初のポートフォリオ作成だったんですね。実際に触ってみた感想はどうでしたか?

森田 パソコン自体が不慣れなので、細かい機能はまだ使いこなせていないと思いますが、そんな僕でもポートフォリオが作れて、ちゃんと見られるようになってます。ためしに検索してみてください、ちゃんと出ますから(笑)。とりあえず、僕でも使えるので、若い人なら全員使えると思います。

もぐら 作者自身のポートフォリオがあることで、編集者さんが作品を網羅的に見ることができ、この人と組んでみたいな……なんて考えることもできるかもしれないですよね。個人的には、テンプレートが豊富で、機能が豊富なのにすっきりしたきれいなページが作れるサービスだなという印象でした。

森田 確かにクロスフォリオはその作者の作品一覧が視覚的にわかりやすいなと感じました。小説も読みやすくて使い勝手もよかったです。

森田季節のクロスフォリオより。
森田季節のクロスフォリオより。

森田季節のクロスフォリオより。

──そのうえで、どのようにクロスフォリオを活用したら仕事に結びつくように感じましたか?

森田 自分が得意なことを、はっきりわかるようにしたほうがいいと思います。例えば、アマチュアやデビューしたての方ほど、仕事が欲しいあまり「なんでもできます!」って書きがちですが、実際は何かしらの得意分野が必ずあるんですよ。仕事を依頼する側としても、その作者は何が好きで何が得意なのかわかったほうが、やりやすいのではないかと。

もぐら とても自分に刺さる言葉……(苦笑)。私も仕事をつかみたいタイプなので、実際にクライアントと対面した場合に限りますが、仕事で求められたものは、たとえ経験のないマンガのジャンルや気の進まない仕事でも、一から勉強しなおしていましたね。ただクロスフォリオの場合は明確に「私はこれが得意です!」を表示できますので無理に苦手分野に手を出す必要もないでしょうし、クライアントも依頼しやすいのではないでしょうか。

森田 あと、日々感じたことや読んだ本のタイトルなど、備忘録的なことでもいいので記録していくのがよいかなと。大学の集中講義でもメモの大切さは毎年言っているのですが、今後の課題や対策を具体的にノートにつけている人は明らかに成長が速いです。たとえば最終選考にまで原稿が残ったら、編集者の人が作者の名前で検索したりすると思いますが、そこで読了した本の一覧がたくさん載っていたら、作者の傾向は具体的にわかりますよね。自分を知ってもらうといううえで、それは確実にプラスだろうなと。当然、商業作品の悪口ばっかり書いてたら、印象はマイナスになると思いますが……(笑)。採用面接と一緒で、他人の悪口を言いまくっている人をぜひ採用しようとは思えないので。

「Xfolio」ポートフォリオページのイメージ図。デザインはクリエイターが自由にカスタマイズできる。
「Xfolio」ポートフォリオページのイメージ図。デザインはクリエイターが自由にカスタマイズできる。

「Xfolio」ポートフォリオページのイメージ図。デザインはクリエイターが自由にカスタマイズできる。

──また、クロスフォリオにはECサイト機能も存在し、クリエイターから直接作品を購入することが可能となっています。同人や配信など、ここ数年でクリエイターがファンとじかに金銭をやり取りできるサービスも整備されてきていますが、創作活動に何か変化が起こる予感はしますか?

森田 マンガ家さんやイラストレーターさんに比べて、作家ってあまりECサイトに向いていないイメージがあると思うんですけど、最近は小説のマネタイズの仕方も多様化してきているので、チャレンジしがいのある領域かもしれません。そういう意味では、いろいろな課金機能が試せるクロスフォリオは、作家にとって面白いサービスだと思います。

もぐら イラストやマンガ界隈では同人活動だけで生きていける方も増えているという話は聞いたことがありますね。やっぱりクロスフォリオのようなサービスが増えているからというところもあるのではないでしょうか。私はこれまでアシスタント活動で精いっぱいだったんですが、いつかECサイト機能でイラストやマンガの配信もしてみたいなと思っています。

ヒロインはゴブリンの女の子だった!?

──そんなクロスフォリオで森田さんが原作、もぐらさんが作画を担当されるコミカライズ「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」が来春から配信されます。本作が企画された経緯はどのようなものなのでしょうか。

森田 以前、BookLiveさんで連載していた作品(「やりなおし三流冒険者の異世界消滅回避録~何度やっても最強の剣と盾がぶつかって世界が滅ぶんだが?~」)が異世界作品&ループものといった体裁の、ひねった構造になっていたんです。なので、次の作品は担当さんと別ベクトルで構想を練っていきました。

──もぐら先生が企画に加わったのは、どの段階でしたか?

もぐら プロットが上がった頃だったと思います。ただの担当引き継ぎ会だと思って打ち合わせに伺ったら、担当、新担当のほかにもう1人いて……。その方が森田先生の担当さんだったんですね。そこでクロスフォリオと「荷物持ち賢者」の説明を受けて、作画担当を引き受けることにしました。

──作品の概要を受けてどのように感じましたか。

もぐら まずキャラクターデザインが大変でした。これまで現実世界を舞台とした作品をメインに描いていたので、純粋なファンタジー世界に馴染みがなかったんです。なので、いろんな作品を観ながら衣装を勉強していきました。

主人公・シャルマのキャラクター設定図。

主人公・シャルマのキャラクター設定図。

──主人公・シャルマとヒロイン・ターニャの設定画を拝見しましたが、どういったポイントを意識されながらキャラクターを造形されたのか、それぞれの目線からお聞きしたいです。まずシャルマはいかがでしょうか。

森田 担当さんと、どうしたら共感性がより高まるかをとにかく考えて生まれたキャラクターです。

もぐら 実は現在のデザインに至るまでに、白髪で虚弱そうなのと黒髪で目線がキリっとしたデザインが存在したんですよ。森田さんに提出したのはキリッとしたほうですね。最終的には前者から目をもらってきて馴染ませた形になります。

森田 それは読んでいただいた原稿のせいもあって。担当さんに「もっと弱くしたい」と言われて、もぐらさんにお渡しした最初の原稿から修正が入ったんですよね。なので、これはチューニング後のシャルマに合わせて修正していただいた姿なんです。

──ヒロインのターニャについては?

森田 ずっと能力を認めてもらえなかった主人公に対して、違う場所出身だからこそ素直に彼を褒めてあげることができる。そんな存在にしようと思いながら書いていきました。ちなみに最初の設定ではヒロインがゴブリンでしたが、編集さんからエルフがいいのでは!と意見をいただいたので、エルフに。

もぐら ゴブリンじゃなくて本当によかったです。肌の色とかは緑……とかですかね?(笑)。シャルマと違って、ターニャはあまりデザインの変遷がないんですよ。強いて言うとするなら、露出度を抑えたくらいです。最初はかなり肌色が多かったんですが、もう少しお淑やかな印象を与えるためにもマントで肌を隠しました。

ヒロイン・ターニャのキャラクター設定図。

ヒロイン・ターニャのキャラクター設定図。

メインヒロインのターニャに幸せになってほしい

──今回は先行して森田さんが小説を執筆し、もぐらさんが小説をもとにマンガを描かれるという分担をされているんですよね。

森田 はい。以前BookLiveで連載させていただいた作品もそのような分担をしていたので、引き続きという形ですね。作画担当の方——今回はもぐらさんですけど、小説という体裁で書いているので、マンガというフォーマットに合わせて手直ししてくださる分には問題がないと思っています。

もぐら 小説として書かれていると、とても自然に描写が頭に入ってくるんですよ。もちろんネームとして原作が届く場合もありますが、それだとイメージがしやすい反面ネームに引っ張られてしまって、オリジナリティが発揮できないんですよね。文章の場合はインスピレーションを掻き立てられるので、どこから描くのか、どうやって描くのかから考えられます。もちろん森田先生や担当さんとの打ち合わせ次第ですが、これからより面白くなるように描いていければと思います。

──ちなみに、作画担当のもぐらさんから原作者の森田さんに何か要望はありますか?

もぐら 私はどんな作品でもメインヒロイン推しなので、ターニャに幸せになってほしいですね(笑)。

森田 原稿を書いていると、サブヒロインに気合いを入れがちで、メインヒロインがおざなりになってしまうことがあって。メインヒロインは主人公とストーリーの中枢を担うので、変わったことをしづらいんですよ。でも、ターニャは活躍させていきたいと思います(笑)。

「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」小説版の表紙。

「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」小説版の表紙。

──これから「荷物持ち賢者」の連載が始まりますが、意気込みはいかがですか?

森田 小説とマンガ、2つの媒体で始まりますが、いつの間にか読みだしていて、気づいたら読み終わっていたというような、読者の方にすっと入り込めるような作品になったらうれしいです。もぐらさんにはどんどんオリジナル要素を入れていただいて、作者にとっても、読者の方にとっても幸せな作品になればいいですね。やっぱり描かされている感のある作品は面白さが失われていきますから、もぐらさんのオリジナリティも入れて、楽しく描いていただきたいです。

もぐら 私としては森田先生の世界を広げていくことが第一ですが、自分にしかできないものも織り交ぜて、いいものができればいいなと思っています! 小説にしかできないこともありますが、マンガだからこそできる表現もあるので、そこを膨らませて「荷物持ち賢者」の解像度を上げていきたいですね。小説版も表紙を描くので、目を引くようなイラストを心がけていきたいと思います!

──楽しみにしております!

プロフィール

森田季節(モリタキセツ)

2008年に「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞し、商業デビュー。代表作に「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」など。同作は2021年にアニメ化。第2期の制作も決定している。

もぐらかかりちょー

マンガ投稿、販売サイト・マンガノで「神玉の聖戦記」を連載。現在、「不遇の荷物持ち、最強賢者に至る」のコミカライズを連載準備中。