頭がおかしくなりそうでした
──共演されたキャストさんについて、何か印象に残っているエピソードはありますか?
浅沼 わるものさんは基本ずっと出ているので、収録ではシーンごとに掛け合いをする人が入れ代わり立ち代わり隣のマイクに入ってきてくださる感じだったんです。だから僕はけっこういろんな方とご一緒できたんですけど、その中でも唯一全然会えなかったのがヨイヤミブラック役の梅ちゃん(梅原裕一郎)なんですよ。「この作品、本当にブラックが出てるのかな?」って疑いたくなるくらい(笑)。
石橋 (笑)。そうですね、僕もそんな感じでした。梅原さんとはほとんどお会いできてない。
浅沼 そういう意味でも本当にヨイヤミブラックでしたね。「会えないんだ? この人」っていう。
──確かにすごくブラックっぽい(笑)。いい話ですね。
浅沼 そうそう。でも、そういう意味ではみんな“ぽかった”ですよ。石橋くんもレッドっぽかったし、(山村)響ちゃんとかも。
石橋 響さんの空と麦の演じ分けは本当にすごかったです! もちろん皆さんすごい方々ばかりなので、収録中はずっと「すごいなー……」としか思ってなかったんですけど。響さんの場合は、空を録ったあとすぐ麦を録るみたいな離れ業をやってらしたので、本当に驚いてしまって。しかも空を全部録ったあとにもう1回頭から回して麦を録る、みたいな感じではなくて……。
浅沼 声が被っていないところに関しては、その場で声を切り替えて演じたりしていましたから。すげえなと(笑)。しかもわるものさんより全然繊細な、近い声での演じ分けでしたし。
石橋 空と麦でしっかり声量も変えていて、もちろんちゃんと性格も違うんですよ。それを一瞬で切り替えるっていう……自分なんかからするととてつもなく難しい領域なんですよね。それをすぐ隣でサラッとやられるんで、内心「すご! すご!」と思っていて。「僕もこの技術をいつか習得しなければ」という思いでずっと聞いていました。
浅沼 まあでも、必ずしも同じことができなきゃいけないわけじゃないから。戦い方は人の数だけあるので。
石橋 あー、確かにおっしゃる通りですね。いずれにせよ、声優ならではの特殊能力の1つを目の当たりにできて、本当に貴重な学びの場になりました。
──微妙な演じ分けということで言うと、浅沼さんも“大勢のわるものさんによる自分会議”みたいなシーンがありましたよね。
石橋 ありましたね!
浅沼 あれはね、頭がおかしくなりそうでした(笑)。全部が全部同じ声だとどのわるものさんがしゃべってるのかわからなくなるし、かといって変えすぎるとわるものさんじゃなくなっちゃうし。それまで目盛5つくらいのダイヤルで調節していたものを20分割くらいに微調整するような作業が必要で……そうですね、思い返してみると今回は作品内でけっこういろんな声をやりましたね。自分会議もそうだし、天使と悪魔、ぬいぐるみ、肉まん……。
石橋 肉まん(笑)。
浅沼 使われたかどうかはまだ知らないんだけど(笑)。「これ、絶対に女性がやるべきですって!」と文句を言いながら録ったやつがあるんですよ。それが採用されたのかどうか、オンエアで確認しないと。
石橋 楽しみだなあ。
浅沼 あとはもう、サブキャラが豪華キャストすぎるよね。
石橋 あああああー、それはもうホントに! ホンっトに豪華なんです! びっくりすると思います、きっと。
浅沼 「この役を、まさかあの人が?」という。河西健吾くん、土岐隼一くん、西山宏太朗くん……みんな今となってはサブキャラをやる機会もそんなになくなっているので、ちょっとうれしそうでした(笑)。楽しそうに演じていましたね。
石橋 なるほど(笑)。皆さんくらいになるとそういうものなんですね。
くれぐれも自己責任でよろしくお願いいたします
──では最後に、読者へ向けてアニメ「休日のわるものさん」のアピールポイントをまとめていただけますか?
石橋 この「休日のわるものさん」という作品は老若男女を問わず、どなたでも心から癒される作品です。ぜひたくさんの方に観ていただきたいですし、それこそ休日のお供じゃないですけど、お休みの日を充実させる癒しアイテムの1つとして楽しんでいただけたらうれしいなと思います。
浅沼 オンエアが一部では日曜深夜ということで、リアルタイムで観るなら、いい休日の締めくくりになると思いますし。
──視聴者にとってのこの作品が、わるものさんにとってのパンダのような存在になってほしいということですね。
石橋 そうです。それこそ「わるものさんの休日をマネしてみよう」と思ってくれる方がいてくれたら、それもうれしいですね。僕自身、わるものさんの休み方を見ていると「休みの日はなるべく早起きしよう」と思いますし(笑)。
浅沼 この作品は、せわしなく生きづらく世知辛い現代社会において、もしかしたら一番みんなが必要としているアニメなんじゃないかなと思っていて。旅行から帰ってきたときに多くの人が思わず口にしてしまう「やっぱりウチが一番」という言葉みたいな感じで、ホッとできる“実家感”のあるアニメになっていたらいいなと。特に近年は、全体的に殺伐としたムードのアニメ作品が多かった印象がずっとあるので。
──確かに、“癒し枠”はもっとあってもいいのになあと個人的にも思います。
浅沼 ただ、ここでちょっと皆さんに謝らなければならないことが1つありまして……。
石橋 ……?
浅沼 出てくる食べ物がみんな、めちゃめちゃ美味しそうなんですよ。
石橋 確かに!
浅沼 これは深夜に本当に申し訳ないなと思っています。徒歩数分圏内にコンビニエンスストアがあるお宅にお住まいの方は、そこだけ注意していただきたいなと。
石橋 「肉まんは、ぴっちりラップして温めるとつぶれちゃう」とか、そういう小ネタもちょいちょい出てきますしね。すぐに試してみたくなっちゃうかもしれません(笑)。
浅沼 そのせいで何かあってもこちらでは責任を負いかねますので、くれぐれも自己責任でよろしくお願いいたします。……まあ、個人的には「夜中に食べても別にいいんじゃないの?」とは思っていますが(笑)。
プロフィール
浅沼晋太郎(アサヌマシンタロウ)
1976年1月5日生まれ、岩手県出身。ダンデライオン所属。脚本家・演出家・俳優・コピーライターのほか、2006年「ゼーガペイン」の主人公であるソゴル・キョウ役をきっかけに声優としても活動を始める。2007年より、エンターテイメントユニット・bpmに参加。bpm作品の全脚本と演出を担当する。主なアニメの出演作に「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」(碧棺左馬刻役)、「ツルネ」シリーズ(滝川雅貴役)、「あんさんぶるスターズ!」(月永レオ役)、「ダイヤのA」(倉持洋一役)、「四畳半神話大系」(「私」役)などがある。
石橋陽彩(イシバシヒイロ)
2004年8月24日生まれ、千葉県出身。エイベックス・ピクチャーズ所属。主な出演作に「リメンバー・ミー」日本語吹替版(ミゲル役)、「海獣の子供」(海役)、「遊☆戯☆王SEVENS」(王道遊我役)などがある。