「休日のわるものさん」特集|いゔどっと、GLASGOWがオフを楽しむ“わるものさん”から得た着想とは

いゔどっとがオープニング主題歌、GLASGOWがエンディング主題歌を担当しているテレビアニメ「休日のわるものさん」が、テレ東、テレビ大阪、BS日テレほかにて放送されている。

「休日のわるものさん」は森川侑による同名マンガを原作とした“ヒーリングコメディ”。地球侵略を目論む悪の組織で“将軍”と呼ばれる主人公・わるものさんが、日々の死闘に疲れた心身を癒すべく充実した休日を過ごす様子が描かれている。このアニメのオープニング主題歌としていゔどっとの「遊歩」、エンディング主題歌としてGLASGOWの「休息充電」が使用されており、わるものさんのリラックスした休日の模様を切り取った映像をさわやかに彩っている。

音楽ナタリーではいゔどっと、GLASGOWそれぞれにインタビュー。「休日のわるものさん」の魅力や楽曲の制作エピソードを聞いた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 曽我美芽

オープニング主題歌「遊歩」
いゔどっとインタビュー

普通に曲を書くよりも作りやすかった

──新曲「遊歩」は、アニメ「休日のわるものさん」のオープニング主題歌となっています。いゔどっとさんにとっては初のアニメタイアップになるんですよね。

はい。でも原作のマンガをもともと好きで読んでいたので、イメージは湧きやすかったです。普通に自分の曲を書くよりも作りやすかった……と言ったら言いすぎかもしれないですけど。

──普段はおそらく、取っかかりを探すところからですもんね。それが今回は最初から用意されていたから。

そういうことですね。思い悩むまでもなく「こういう曲にしよう」というものが最初からあったので、スムーズにできたかなと。

──実際、「休日のわるものさん」という作品からどのようなインスピレーションを受けて曲作りに入ったんでしょうか。

原作を読んだときの感触として、“忙しい日常の中にある穏やかな休み”というのがキーワードというか、イメージとしてあって、作品自体がすごく優しいんですよね。原作の雰囲気、世界観を意識しながら……「遊歩」というのは散歩、そぞろ歩きみたいな意味なんですけど、「せわしない毎日の生活の中で、休みの日くらいはゆっくり歩こう」みたいなイメージで作り始めました。

──そうして実際にできあがった楽曲は、まさに優しいイメージを受け取れるものになっています。音も非常に柔らかくて、オープニングというよりはエンディングっぽい曲だなと感じました。

そうなんですよね(笑)。アニメ制作サイドの方と話し合う中で、そういう話になったんですよ。アニメソング然としたカッコよさというよりは、もっと穏やかな感じがいいのかなと。“休日”というのが作品のキーワードでもありますし。

──個人的にすごく面白いなと思ったんですけど、GLASGOWの手がけるエンディング曲「休息充電」のほうがむしろオープニングっぽいというか。

確かに(笑)。そこは逆転してる感じですよね。たぶん、制作側にそういう意図があってのことなんだろうなと思います。面白いですよね。

作品の世界観をなぞりつつ、誰にでも当てはまるものに

──ちなみに、いゔどっとさんの中に「アニメソングとはこうあるべきだ」という理想みたいなものはあったりしましたか?

うーん、そうですね……音楽的な意味で「こうでなければいけない」というのは特にないですかね。それよりは、作品の世界観に合うものであるかどうかが大事な気がします。今回も「『休日のわるものさん』という作品にどれだけ寄り添えるか」ということを一番に考えて作りましたし。

──それは、作り手になる以前から重視していたポイント?

ですね。オープニングにしろエンディングにしろ毎回流れるものなので、その話数のストーリー展開によって曲の印象も変わるじゃないですか。悲しい話の展開で聴くカッコいい曲が逆に刺さったりとか……そんなふうに、作品とは切り離せない感じで聴ける曲がずっと好きでした。

──そうなると、そんなアニメソングを自分で作れるとなったときの喜びは大きかったのでは?

もちろんうれしかったですし、同時にプレッシャーも感じました(笑)。緊張と楽しみと、両方あった感じですね。

いゔどっと

──実際に曲作りを進める中で、アニメソングだからということで普段と違う作り方になった部分はありますか?

作品に寄り添って作るからこそ、例えば歌詞で「アイス」という言葉を使っているんですけど、これなんかはまさにわるものさんがアイスを食べるシーンから拾ったもので。それとか、「白と黒では分けられない」というフレーズもわるものさんの好きなパンダからですし、そういう着想を作品から得たところはいくつもありましたね。

──そんなふうに作品に寄せつつも、あまり明確には言いすぎない美学がアニソンの世界にはあると思うんですけども。

ありますね。もちろん基本的にはアニメに沿ったものとして作るわけですけど、作品の世界観をなぞりつつも、誰にでも当てはまるものにしたいという意識はありました。人それぞれに人生があって、それぞれにお休みもあるはずなので、そこにもハマればいいなと。

──実際、「遊歩」は「休日のわるものさん」の曲として聴くとちゃんと“「休日のわるものさん」のアニソン”なんですけど、そこから離れたところでも全然成立する曲ですよね。アニメを知らずに聴いても普通に「いい曲だな」と感じられるものになっている。

ありがとうございます。自分の中から自然に出てくるものと、作品から感じ取ったものが重なり合う曲を目指していたので、とてもうれしいです。

──あと、楽曲の中で個人的に特に印象的だったのが、イントロのフィンガースナップでして……俗にいう指パッチンですけども。

ああー、はいはい。

──あの音が妙に生々しいというか。全体のアレンジ的にはもっと加工した感じの音のほうが合いそうな音像という気もするので、おそらく何か意図がありますよね。

確かに、普通なら打ち込みっぽい音にしがちなところではありますよね。アレンジは初めてオリジナルを作ったときから何度もやってくれている春野という人にお願いしたんですけど、2人で話し合いながらリアルな質感にこだわって詰めていった感じです。曲の雰囲気的に、幻想的というよりは現実的と言いますか……「わるものさん」という作品も、設定はファンタジーだけど描かれるのは日常がメインなので、それに寄り添った音作りにしたというところですね。

いゔどっと

意識的に「今日は何もしない」と決める

──ところで、「休日のわるものさん」は休日の過ごし方がメインに描かれるお話ですよね。いゔどっとさんは休み方について何か意識していることはありますか?

僕の場合、いわゆる土日休みみたいにハッキリ決まっているものではないので、自分でスケジューリングして「この日は休み」と決める必要があるんですよ。去年くらいからそれを意識的に決めるようになりました。前後の作業を調整して「この日は何もしない日!」って。

──それには何かきっかけがあったんですか?

休まずにずっとやってると逆に効率が悪くなる、ということを実感した瞬間があったんです。仕事しなきゃいけないのに全然進まなくて、結果何もできなかった謎の日が生まれちゃって。だから意識的に「今日は何もしない」と決めることで、ちゃんとリフレッシュしようと。そうすることで仕事のモチベーションも保てるんです。

──確かに、「結果何もできなかった」と「意識的に何もしなかった」では……。

全然違いますから。なので休みと決めた日には仕事のことは一切考えずに、溜まったアニメを一気に観たり、観たかった映画を観たりして有意義に過ごしています。あと僕はマンガが好きなので、マンガをめちゃくちゃ読んだりとかもしてますね。

──わるものさん並みに充実した休日を過ごせていると。

そういうことです(笑)。

──そんないゔどっとさんですが、2月13日にはワンマンライブを控えています。そこで「遊歩」も聴けると思っていていいですか?

おそらく(笑)。それこそ休日を充実させるために、ぜひ遊びに来ていただけるとうれしいです。皆さんちゃんと休みを取って、休日を謳歌しに来てください。

──ハッキリと「その日は休み!」と決めたうえで来てもらいたいですよね。

そうそう、「何もできなかった」じゃなくてね(笑)。

プロフィール

いゔどっと

男性ボーカリスト、シンガーソングライター。2015年に動画共有サイトに歌唱動画を投稿し、アーティストとしての活動をスタートさせる。2018年3月に投稿された「flos」の歌唱動画が2900万回以上(2024年1月時点)再生されるなど、人気のボーカリストとして注目を浴びている。2019年8月に初のオリジナル曲「余薫」を公開。2020年7月には全曲オリジナル曲で構成された1stアルバム「ニュアンス」、2022年12月には2ndアルバム「POP OUT」を発表した。2024年1月にテレ東系のテレビアニメ「休日のわるものさん」のオープニング主題歌「遊歩」を配信リリースした。