スマートフォン向けアプリ「takt op. 運命は真紅き旋律の街を」が、6月28日にリリースされた。同作はクラシック音楽の力を身に宿す “ムジカート”の少女たちと、人間を喰らう獣・D2との戦いを描く「世界を調和に導くシンフォニックRPG」。プレイヤーは“コンダクター”の朝雛タクトとなって、ムジカートの指揮をとり世界を調和に導いていく。原作には「サクラ大戦」シリーズで知られる広井王子が参加。LAMの手がける美麗なキャラクターデザインや、キーピアニストのまらしぃがアレンジするクラシック曲の数々も、華やかで重厚な世界観を作り上げている。
リリースを記念し、コミックナタリーではムジカートのキャスト3人にインタビュー。運命役の本渡楓、木星役の依田菜津、きらきら星変奏曲役の指出毬亜に、美しくも儚い世界観の魅力や、ゲームの注目ポイントについて語ってもらった。美麗な撮り下ろしフォトもたっぷり掲載しているので、最後までお見逃しなく。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 小川遼
儚く切ないムジカートの魅力
──長らくリリースが待望されていたスマートフォンアプリ「takt op. 運命は真紅き旋律の街を」が、ついに配信開始となりました。皆さんはこの作品の魅力をどんなふうに感じていますか?
本渡楓 「シンフォニックRPG」という言い方がされている通り、“音楽”がすごくキーになってくるんですよね。世界を崩壊させた「D2」という化け物が存在していまして、これが音楽のあるところに寄ってきて暴れてしまう性質を持っているので、その脅威から身を守るために音楽が禁じられている……という、すごく悲しい世界が舞台なんです。ただ、その敵を倒す力もまた音楽にあるということで、音楽の力を身に宿して戦う「ムジカート」という女の子たちがいまして。私たちが声を担当させていただいているのがその子たちになります。
指出毬亜 そのムジカートたちがすごく儚いというか、そこが魅力だなと私は思っていて。もちろん元気な子もいるし、いろんなタイプの子がいるんですけど、ムジカートは過去の記憶がなくなっちゃってたりするので……。
依田菜津 切ないよね……。
本渡 みんなもとは人間の女の子だったんですけど、ムジカートになった瞬間に人間だった頃の記憶はすべてなくなってしまうんです。だから彼女たちがムジカートになることを本当に自分の意思で選んだのかどうかもわからないし、知るすべもないという……それを指出ちゃんのように「儚い」と感じる人もいるだろうし、底知れぬ恐怖を感じる人もいるだろうし。そこがこの世界ならではのちょっと奇妙な、異質なところだと思います。例えば、指出ちゃんの演じるきらきら星ちゃんなんて見るからに幼い子なので、「いったいどうしてこの子が過去を捨てる選択を?」というふうにも思わされますし。そんなふうに1人ひとりの背景を想像していくとすごく切ない気持ちにもなるし、興味を引かれるなって思います。
依田 過去との向き合い方も、ムジカートそれぞれで違うんですよね。それはストーリーを進めていったりティーブレイク(ムジカートとの対話システム)を重ねていくことで少しずつ垣間見えてくる部分なので、そういうところもきっと楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。
本渡 人間ドラマがすごく詰まっている作品です。
依田 ムジカートたちにはそれぞれ身に宿しているスコア(楽譜)があるんですけど、それが実在のクラシック曲になっています。キーピアニストのまらしぃさんがアレンジを手がけられたそれらの楽曲をゲームの中で皆さんに聴いていただけるというのも、この作品の大きな魅力の1つだと思います。
指出 しかも、ゲーム中に使われている会話やバトルシーンなどのBGMはオーケストラの生演奏で収録されているんですよ。
本渡 それがスマホゲームで聴けるなんて、贅沢だなと思いました。
依田 音楽考証を指揮者の栗田博文さんが担当されているんですけど、「いろいろと考証を重ねられたんだろうなあ」ということが台本からも垣間見えて。世界観にもストーリーにもキャラクターにも、とても丁寧に音楽の要素を落とし込んでくださっているなあと感じられて、それがすごく印象的でした。
本渡 うんうん。
依田 まるっと音楽と一体になったコンテンツとして楽しんでいただけるかなと感じています。
ボイスの聴きどころは鼻歌とティーブレイク
──ムジカートを演じるにあたっては、どんな意識で臨まれましたか?
本渡 運命というキャラクターは一見おしとやかで上品な子で、知れば知るほど、ただのおしとやかな子じゃないということがわかってくるんですよ。けっこう頑固者だし、真面目すぎて融通の利かないところがあるので、それゆえの天然さも持ち合わせているんですよね。「その頑固なところが嫌な感じに映らないように」というのは演じるうえで気をつけているポイントです。みんなに愛してもらえる存在になりたいですから、キツいことを言ったとしても「ああ、またなんか言ってるよ」くらいに思ってもらえればなって(笑)。
依田 木星ちゃんは「元気」というワードが真っ先に浮かぶ感じの、「竹を割ったような」という表現がすごくぴったりな女の子だと思っています。発言もすごく率直で、親友とか幼なじみみたいな距離感で接してくれる子ですね。なので、私はその「距離感」をキーワードに演じています。心理的にもですが、物理的にも、パッと距離を詰めて話しかけたりとか、かなり自由度高く演じさせていただけていて。もちろん台本の範囲内でですが、映像的な縛りの少ない、ゲームという場だからチャレンジさせていただける表現なのかなと思います。
指出 きらきら星ちゃんはさっきも話に出たように、見るからに子供で。本当に無邪気で子供っぽい印象があるんですけど、それが緊迫した場面になってもずっと変わらないんです。ああ見えてムジカート歴はきっと長いので、その自信から来る変わらなさ、安定感が癒しを与えてくれるというか。見た目や振る舞いは子供っぽいんですけど、実は「自分がどう見えたら周りのみんなが楽でいられるか」というのをすごく理解している子だと思うんです。その子供らしさの部分をわざとらしくならないように出すことを心がけつつ、すごく悩みながらやっていました。
──キャスト目線から見て、ユーザーに注目してもらいたい、ボイスの聴きどころは?
本渡 たぶんムジカート全員がやってると思いますが、自分の身に宿した楽曲の鼻歌を歌うシーンがありまして。曲によっては相当難しいものもあると思うんですよ。
──ショパンの「幻想即興曲」とかヤバそうですね。
指出 確かに(笑)。
本渡 そこは聴きどころというか、全員のがんばりどころだったのではないでしょうか。
依田 我々の鼻歌をぜひお楽しみに(笑)。
本渡 あとは、やっぱりティーブレイクですよね。お茶会を重ねていくことでそれぞれのキャラクターがどんどん深掘りされていくので、そこでの変化は聴きどころかなと思います。
依田 いやホント、私も楽しみですもん。自分以外のティーブレイクがどういう展開をするのかは全然知らないので、「木星はこうだったけど、みんなはどうだったんだろう?」って。
本渡 ゲームならではの、お互いの台本を知らないからこその楽しみはありますよね。皆さんにも、ティーブレイクは必ず音声オンでプレイしてほしいです。
指出 きらきら星ちゃんは、こうもりという子にいじめられるシーンが多かったりするんですけど……。
依田 いじめられてたのー!? 何それ、めっちゃかわいい(笑)。
指出 (笑)。収録を個別に行っている関係で私もまだこうもりの声は聴けていないので、完成形がすごく楽しみなんです。「どういう掛け合いになっているのかな?」って。
ゲーム収録で重要なのは“想像を飛び越える”こと
──その“ゲームならでは”という部分に関してですけど、ゲーム収録特有の難しさ、やりがいについて伺えたらうれしいなと思っておりまして。
本渡 ゲーム収録ならでは、かあ……。
──一般的にゲームは1人ずつの収録で、掛け合いでは録らないわけですよね。でも場面場面で“想定すべき会話の相手”は存在するはずなので、実はかなり特殊なお芝居じゃないかと思うんです。
本渡 確かに、アニメとゲームの一番の違いはそこなんですよね。掛け合いで録る場合はそのシーンの空気感も自然に生まれやすいですし、相手の方の声の張り具合とかも前もって聴けるから「そう来るなら自分はこうしよう」と化学反応でお芝居を作っていける。でも1人で録る場合はそういう情報が何もない中で演じることになるから、「いかに正しく想像できるか、その想像に自分が飛び乗れるか」という難しさがあるなっていつも思ってます。
依田・指出 うんうん。
本渡 今回で言えば、メインどころのムジカートちゃんたちに関してはPVなどで何度も声を聴けてはいたのである程度想像しやすかった部分もあるんですけど、物語が進むにつれて「ここはどんな声で話すんだろう?」とか「どのくらいグイグイ来てるのか」とか……その距離感が難しいなって。運命の場合は割と人との距離感が独特なので、そこまで影響を考えなくても大丈夫ではあるんですけど、その想像の作業にはいつもけっこう苦労しました。
依田 私は、アリアちゃんと絡むシーンが難しかった記憶がある。
本渡 ああ、G線上のアリアちゃん。
依田 アリアちゃんは、ひと言で言い表すのは難しいですが、いわゆる病んでるキャラクターなんですけど。「どのくらい病んでいて、どのくらいの圧で来る子なのか」みたいなのって、実際のお芝居を聴かないとさじ加減がわからないじゃないですか。けっこうがんばって想像しながら演じた覚えがあります。
指出 ほかの人の声を聴かずに1人でやるのは、やっぱりかなり難しさを感じますね。
──そこに何か特有の作法であるとか、特別な工夫の仕方みたいなものはあるんでしょうか。
本渡 私は「思い切る」ことでしょうか。運命の場合は特殊なので少し話は違ってきますが、基本的に1人で録るときは自分で思い描いたもののもう一段階上にギアを入れてやっています。自分の中での想像はしょせん想像なので、それを飛び越えることを意識しないとたぶん“正解”には足りないんです。
指出 私も同じ感じです。いつもより思い切ってやるのが合うかな、と思ってやっていますね。
依田 役者さんによっていろんなアプローチがあると思いますね。私の場合は、「その場がどういう状況なのか」「どのくらい緊迫しているのか」みたいな、空間の作り込みだけはしっかりするように心がけています。
──いずれにせよ、けっこうな想像力が求められると。かなりの特殊能力だと思うんですけど、それをほとんどの声優さんが普通にやっているという事実がだいぶすごいことだなと感じます。
本渡 毎日そう言われたいです。
一同 (笑)。
──でも実際のところ、そこってあまり評価されていない部分のようにも思うんですけど。
本渡 うーん、それはあんまり考えたことなかったですね。普通に「できねばならぬ」という感覚でしかなくて。
依田 確かに。
指出 やるのが当たり前、みたいなところがありますよね。
本渡 うんうん、特にそれを評価してほしいという気持ちもなく。もちろん褒められたらうれしいですけど(笑)。
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「ちゃーちゃーちゃららららー」っていう