「ちゃーちゃーちゃららららー」っていう

──「takt op.」がクラシック音楽モチーフの作品ということもあるので、皆さんのクラシックとの関わりについても伺いたいんですが……。

本渡　それで言うと、指出ちゃんがプロです。

指出　（笑）。私は小さいときからピアノとか声楽をやっていまして、オペラに子供の役で出たりもしていたんです。高校と大学でも音楽を学んでいたので、クラシックはずっと身近な存在ではありましたね。

──そういう方からすると、こうしたゲームコンテンツなどでクラシック音楽が扱われるのはうれしいことですよね。

指出　うれしいですね。やっぱりクラシックって敷居の高いイメージがあると思うので、こういう触れやすい形にしていただくことで広がっていきやすいでしょうし。私自身も小中学生の頃とか、周りにオペラや歌曲の話ができる子がいなくて寂しい思いもしましたし、発表会とかを聴きに来てくれた子が途中で飽きて寝ちゃったりとか（笑）、そういう悲しい経験もしてきたので。

──アニメやゲームの話をするのと同じように、教室でもっとクラシックの話も普通に交わされてほしいと。

指出　うんうん、そうですね。

──本渡さんと依田さんはどうですか？

本渡　私にとっては、電話の保留音が一番身近なクラシックです。

一同　あははは（笑）。

本渡　よく聴くのが「ちゃーちゃーちゃららららー」っていう……なんて曲かは知らないんですけど。

──すごく聴き覚えがありますけど、僕も曲名はわからないですね……。

宣伝スタッフ　エルガーの「愛の挨拶」だと思います。

本渡　すごい。この間も保留音でそれを聴いて「これってなんだっけなあ」と思ったばかりなんですよね。

──そういう人も「takt op.」に触れることで、楽曲と曲名を無理なく紐付けられるようになりますよね。ムジカートが存在する曲に関しては。

依田　ホントにそう！ 推しのムジカートちゃんができたりしたら、どこかで曲が流れてきたときに「あ、推しのスコアだ！」ってなるかもしれない。そうなったら素敵ですよね……それで言うと、私はアーツビジョンという事務所に所属しているんですが、弊社の保留音がこのお正月から「木星」に変わっていまして。

一同　えええー！

依田　以前の私だったら別に気にしなかったと思うんですけど、今となってはやっぱり「うわー、『木星』だ！」ってなりましたよね。

本渡　うらやましいです。「運命」はなかなか保留音には使われないだろうから。

依田　あははは、確かに（笑）。

本渡　「少々お待ちください」と言われたあとに「運命」が流れてきたら、無駄に深刻な感じになりますね。

依田　でも、ムジカート声優の所属事務所各社の保留音が担当曲になったら面白いね（笑）。アイムエンタープライズさんも荘厳な「運命」にしてもらって。

指出　じゃあ、WITH LINEは「きらきら星変奏曲」で（笑）。

──やはり、ご自分のキャラクターの曲には特別な思い入れがありますか？

本渡　間違いなく愛着はより一層湧きました。もともとは「運命」に対して「強くて重たい空気を作る曲だな」という印象を持っていたんですけど、運命と出会ってからはなんだか高貴なイメージをすごく感じるようになって。まらしぃさんのアレンジバージョンを聴いて「こういう解釈もあるんだ」という発見もありましたし、楽曲のことがより好きになりました。もっと知りたい気持ちになります。

依田　私も「木星」に対するイメージがずいぶん変わりました。J-POPにもなったくらい有名な曲ですけど、よく知られているメロディって実はごく一部なんですよね。あれはどちらかというと静かなパートに当たるんですけど、ティーブレイクの中で木星が「『木星』の一番好きなところは、やっぱ冒頭の壮大なところだな！」みたいなことを言うんです。その影響で、私も今は「冒頭とか曲なかばの激しいところこそが『木星』だな」って思うようになって。

指出　「きらきら星変奏曲」もすごく有名な曲ですし、私も小さい頃からピアノで弾いたりして親しんできましたけど、「takt op.」を通じて楽譜との向き合い方が変わった気がします。これまでは単に記号として「ここはフォルテ、ここはクレッシェンド」みたいに捉えていたものが、「今、怒ってるのかな？ だからフォルテなのかな？」というふうに、表情が見えるようになってきたというか。

──それは“行間”を読むようになった、みたいなお話ですか？

指出　そうですね。それまでは「楽譜にこう書いてあるからこう弾かないといけない」みたいに思い込んでいたところがあったんですけど、「そうか、ここはこういう気持ちだからピアノだったんだな」と想像力を働かせられるようになったと思います。

依田　わあ、素敵なお話……！

現時点ですでに膨大な量のボイスが存在するんです

──では最後に、読者に向けてアプリのおすすめポイントを総括していただけますか？

本渡　個人的にはLAMさんのキャラクターデザインがとってもとっても大好きなので、まずはキャラクターの魅力を存分に味わっていただきたい、というところです。ティーブレイクをはじめとしたいろんなシステム、ミニゲームなんかもありますので、それらを遊び倒してムジカートちゃんたちとの関係値を深めてもらって、日々を前向きに過ごすためのお供にしてもらえたらなあと。ここ数年ずっと閉塞感のある日々が続いていますが、このゲームを遊ぶことで楽しい気持ち、スカッとした気持ちになっていただけると思います。

依田　どんな方におすすめかと言うならば、私はやっぱり広い層に……。

本渡　あ、ずるい。

依田　（笑）。というのも、もちろんゲームが好きな方もそうですし、指出ちゃんと同じようにもともと音楽をやっていた方が「この曲には思い入れがあるから使ってくれてうれしい」みたいに反応してくださっていたのがすごくうれしかったんです。と同時に、本渡ちゃんも言った通りキャラクターがとても魅力的ですし、私たちもまだ聞かされていないんですけど、各ムジカートちゃんたちの過去のストーリーが、設定としては全部あるみたいなんですよ。

──確かに、そういう作り手の執念じみた気迫みたいなものはところどころに感じます。

依田　というくらい、運営の皆さんの熱量の高さや作り込み具合がすごくて。ボイス収録も実は2020年からスタートしているので、現時点ですでに膨大な量のボイスが存在するんです。そういう情報量も含めてゲーム好きの方にはきっと楽しんでいただけますし、ゲームに詳しくない音楽好きの方にもぜひおすすめしたいです。本当に、幅広い層の方々に楽しんでいただいて、愛していただける存在になればうれしいです。

指出　私はこれまで主に声楽、特にオペラの曲を中心にクラシックに触れてきたので、交響曲やピアノ曲とかになってくるとわからない曲も多かったりするんですね。このゲームを通じてそういう疎い分野の楽曲に触れることで新しい知識を得られたことがすごくうれしかったので、皆さんにもこの喜びを感じていただきたいなと思います。

──すみません、勝手なイメージで「音大を出ている人はこのゲームに出てくるようなクラシック曲は全部知ってるものなんだろうな」というイメージを持ってたんですけど、やっぱりそれぞれ得意ジャンルと不得意ジャンルがあるんですね。

指出　……真面目に学んでいる方はもしかしたら十分ご存じかもしれないですが（笑）、新たな分野に興味を持つきっかけになる可能性はけっこうあるんじゃないかなと思っています。

依田　あと、いつか「takt op. 運命は真紅き旋律の街を」がアニメ化してくれたらいいなあと（笑）。そうしたら掛け合いでの収録も実現するし。

本渡　あー、確かに！ 夢はでっかく！ 言うだけならタダなんで。