コミックナタリー Power Push - 「タブー・タトゥー」

LOVE無駄口!吹き出し外の書き文字が熱い 王道少年マンガに込められたB級のこだわり

ツッコミどころを楽しむB級映画の感覚で、小ネタを詰め込む

──話作りはどう進めているんですか?

真じろう まず最初にプロットを作って、その段階でセリフなんかも全部詰めちゃいます。それからネームを描き、作画に入るスタイルです。プロットができてしまえばネームはそれを絵に起こしていくだけなのでそれほど苦労しないです。やっぱり時間がかかるのは作画ですね。

──連載初期はあとがきなどで「終わんねえ」とよく描いていましたね。登場人物の服にも「OWANNE」というメッセージを潜ませたり(笑)。

左側の黒人が着ているTシャツに「OWANNE」の文字が。真じろうの心の叫びは、ほかにもマンガのさまざまなシーンに隠されている。

真じろう 初期は単純にページ数も多かったんですよ! 第1回とか、90ページちょっとあったし。

編集長 通常なら1話あたり32ページくらいなんです。でも、「タブー・タトゥー」はストーリーの重要な部分、面白いポイントまで入るのにページ数が必要だった。週刊連載なら、予告的な話で始めても翌週には次の話が出ますから読者も興味を維持してくれる。でも、月刊誌では最初にしっかり読者を掴んでおかないと、次から読んでもらえない可能性がある。なので第1話はどういう話でどこへ向かっていくのかというのが、ちゃんとわかるところまでしっかり描いてもらいたかったんです。

──作品により適切なボリュームがあると。描いていて楽しいのはどういうシーンですか?

真じろう やっぱりアクションシーンですね。自分でもアクション系が好きなので。それと吹き出しの外に変な書き文字を入れてるときは、やっぱ楽しいですね(笑)。

重火器と刃物での戦いに、呪紋の能力が混ざる激しいバトルシーン。読むほうも手に汗握るスピーディな画面だ。

──芸が細かいですよね。話自体はかなりシリアスなバトル作品ですが、緊迫したシーンでもギャグを入れていたり。

編集長 細かいギャグいっぱいあるよね。最近なんか玉城三佐が強烈だし。

──玉城三佐は、本作の主人公ではないのに「僕の主人公力はプロレベル」「死亡フラグなんかに負けたりはしない!!」と思い込む“主人公力”で不死身と化していますよね。

真じろう 最近の玉城は、もう彼自身が暴走しちゃってるので(笑)。やっぱり僕の場合は、キャラクターも描いているうちにできあがっていくんです。もちろんマンガに登場させる前にキャラクターのデザインは行うんですが、話が進むうちに「あ、こいつはこういう奴なんだ」っていうのがわかってきて、勝手に動くようになってくる。玉城はその極端な例です。

普通のキャラならばいつ死んでもおかしくないフラグを立てまくる玉城。 主人公ではないのに「条理を捻じ曲げてこそ主人公」と自身の主人公力をアピールする玉城。

編集長 それにしたって、話もクライマックスに入ってるのに、主要キャラでもない玉城が2話連続でメインとか、独特すぎるよ(笑)。

真じろう 僕、B級映画が好きなんですよ。慣れてないうちはただつまらないだけなんですけど、慣れてくると「なんでだよ!」とかツッコミながら見るのがすごく面白くなってくる。そういう要素をマンガに取り入れたくて。それでシリアスな場面にもギャグや小ネタを仕込んでいくうちに、玉城みたいなキャラクターができあがっていくんです。

雑多な要素の入り交じる原作と、アクションの魅力が際立つアニメ

編集長 アフレコ現場は毎回見に行っているんですが、真じろう先生がアニメのほうにも細かいギャグ要素をなんとか入れようとするから大変ですよ(笑)。

──“なんとか入れようとする“ということは、アニメではギャグ要素が控えめになるのでしょうか?

「萌えちまう」というセリフを補うように、吹き出しの横に「二次元サイコオオオオォ!! イェッヒー」という書き文字。真剣なバトルシーンでも、端々に笑いを誘う小ネタが仕込まれている。

編集長 そもそも入れづらいんです。マンガの場合はシリアスなバトルをやってる画面の端にギャグを入れておくみたいなことができるんですが、アニメだとギャグを入れるためにアクションを止めないといけなくなる。だから、どうしても細かいギャグは削らざるを得ないんです。

真じろう なんとか少しでもギャグを入れたくなるんです(笑)。アフレコに行って、ガヤ役の人にギャグを入れるようお願いしたりとか。ただ、やっぱり完成版では聞き取れなくなってましたね(笑)。

──同じ作品でも演出の方向性が異なるんですね。

真じろう 異なってはいますけど、実際アニメ自体はすごくいいです。アクションがスタイリッシュでカッコいい。自分でイメージしていた絵が実際に動いている感じで、さすがJ.C.STAFFだと感動しています。僕が監督してたらもっとB級感の強い作品になってると思います(笑)。

編集長 真じろう先生が監督してアニメにあれこれ詰め込んでたら、1クールかけても話が2~3話しか進まなそう(笑)。あのノリが出せるのは、本筋と遊びの両面を1つのコマで見せられるマンガならではですよ。

──細かな要素でいうとセクシーなキャラクターたちも魅力のひとつです。「ノーパン・ノーブラなのかな?」というキャラクターも多いですよね。やはりこれは読者サービスを意識して?

真じろう サービス半分、自分の趣味半分……ですね(笑)。最初の頃は男性読者へのサービスを意識していましたが、描いているうちにキャラクターがノッてくると「ノーパンなのは、そういう人だから」という感じになってくるので。

  • ぶつかった瞬間に下着が脱げてノーパン、ノーブラになるトーコ。
  • 直接描かれはしないものの、服の下から乳首がぷっくりと存在を主張している。
  • 男に半裸状態を見られても気にしないイル。「つるぺたーん」の効果音も独特だ。

編集長 本誌では直接的な乳首描写とかは消してますけどね。雑誌はいろんな作品を読む読者が集まる場なので、苦手な人が不意打ちを食らうようなことはないように配慮してます。ただ、単行本はその作品のファンが手に取るものなので、基本的には自由にやってもらっています。

真じろう なので、実は単行本ではいろんなシーンを差し替えてますね。

テレビアニメ「タブー・タトゥー」
「タブー・タトゥー」
赤塚正義(ジャスティス)、通称セーギの掌にはタトゥーがある。ただのタトゥーではない。時空を歪め、「無」を創り出すことで周囲に壊滅的なダメージをもたらす特別な兵器──「呪紋」。セーギはエージェントの少女・イジーの任務である呪紋の回収を手伝うことになるのだが──!? セーギが巻き込まれる国家間の陰謀と、呪紋に秘められた大きな謎を描くアクション巨編!
放送情報
  • テレビ東京:毎週月曜26:05~放送中
  • BSジャパン:毎週土曜24:00~放送中
  • AT-X:毎週水曜24:30~放送中
  • 原作:真じろう(月刊コミックアライブ連載)
  • 監督:渡部高志
  • アニメーション制作:J.C.STAFF
真じろう(シンジロウ)
真じろう

月刊コミックアライブにて「タブー・タトゥー」を、ヤングエース(ともにKADOKAWA)にて「Fate/Zero」を連載中。そのほか「ゾディアックゲーム」全4巻がマッグガーデンより刊行されている。