雪菜はいわゆる“普通の子”!?
──多数のヒロインが登場する同作の中でも、雪菜は特に人気ですよね。彼女の魅力はどんなところだと思いますか?
種田 「ストライク・ザ・ブラッド」に登場する女性キャラクターって、みんな個性が尖っていて、ある意味、性格的には雪菜が一番「普通」なのかもしれません。なので、ほかのキャラクターが濃い分、雪菜の真っ当さ、純粋さが際立つんだと思います。年齢も初登場時はまだ中学生で、少し背伸びをして強がっているんですが、それがまたかわいらしくて。あと、守られるだけのヒロインではなく自分でも戦える強いヒロインというのが私個人としても好きなタイプで、気持ちを込めて演じやすいキャラクターです。古城くんという主人公と肩を並べて戦える強さを持ちながらも純朴でかわいい、そういうところが雪菜の魅力だと思いますね。
三雲 雪菜は自己主張が控えめなんですが、ちゃんと芯は強い子です。だからこそ、ちょっと面倒くさい部分も出ちゃったりするんですけどね。
──三雲先生が雪菜を書く際に、気を付けていることは?
三雲 過剰に暴力的にしないということですね(笑)。古城が何かやらかしたときでも、感情を抑えて割と冷静に立ち振る舞わせるようにしています。ちゃんと諌めるところは諌めるんですが、スタンスとしては一歩引いているイメージです。
種田 確かに、前に出て激しくツッコミを入れるというよりは「……別に、怒ってないですけど?」みたいな感じですよね。本当は怒っているんですけどね。そこがまた彼女のかわいいところですよね。
──雪菜を演じる際に、気を付けていることはなんですか?
種田 雪菜自身が自己主張のそれほど強くない子なので、その分私のお芝居のノリで左右されてしまわないように……彼女らしさがブレないようには心がけています。あとは、バトルシーンと日常シーンでギャップがあまり出ないように。戦いの最中でもかわいい部分を残しつつ、カッコよくなるように意識しています。
──雪菜を演じていて、面白いと思う部分は?
種田 意外と拗ねているシーンとか(笑)。シンプルにかわいらしいですし、それに対する古城くんの反応も面白いですしね。最近は日常パートが減ってきているので、たまにそういったシーンがあると、演じていてとても楽しいです。
──ちなみに、種田さん演じる雪菜から、原作小説側が影響を受けたことなどはあるんですか?
三雲 表に出てこない部分ではいろいろと影響は受けていると思います。実際に頭の中でキャラクターを動かしていく際にも、雪菜のセリフは種田さんの声で再現されますし。ただ執筆する際には、なるべくその影響を排除するように心がけています。というのも、種田さんのことを考えてしまうと、ちょっと申し訳なくなるような雪菜のシーンが書けなくなってしまう可能性があるので(笑)。
「Ⅳ」は“ヒロイン大集結”
──OVA「ストライク・ザ・ブラッドⅣ」がシリーズ最新作としてリリース中ですが、見どころについてお聞かせください。
種田 新しいキャラクターだけでなく、久しぶりに登場するキャラクターたちも物語に加わり、これまで以上に核心に迫る密度の濃いストーリー展開になっています。バトルシーンも前作以上に増え、みんなが大好きなエフェクトばりばりのカッコいい接近戦や、眷獣の見栄えがパワーアップしているように感じました。まさに集大成といった怒涛の展開が続くので、ファンの皆さんには特に胸熱なシリーズになるんじゃないかと! 雪菜もさらに頼もしく成長し、古城と離れての単独での活躍や、ほかのキャラクターとの新鮮な掛け合いも増えています。新たな能力や魅力を身につけて懸命に戦う雪菜の勇姿に、ぜひ注目してほしいです。
三雲 種田さんのおっしゃる通り、登場するキャラクターの多さは見どころの1つだと思います。歴代のヒロインも大集結といった感じですし、それぞれにちゃんと見せ場が用意されています。キャラクターのファンの皆さんには、楽しんでいただけると思いますね。
──ヒロインといえば、新しくカス子(香菅谷雫梨・カスティエラ)も加わってにぎやかになりましたね。
三雲 この作品の女性キャラクターって、頭がよくてしっかりしているタイプが多いんです。そんな中でカス子は「お馬鹿キャラ」……というと語弊がありますが、真っすぐで純粋で裏表がなく、実は珍しいタイプのヒロインなんですよ。彼女の一挙一動を、ただシンプルに見て楽しんで愛していただければ、生みの親としてはうれしいです。あと、「ストライク・ザ・ブラッド」は魔族と人間が共存している世界です。これまで純粋な魔族のヒロインを出してこなかったので、ここに来てようやく登場させられました。単なるゲストヒロインではなく、世界設定にまつわるような役割も用意されていますよ。
種田 マスコット的なかわいらしさがありますよね。カス子ちゃんは雪菜の妹分みたいな感じがしていて、なんだか作品に「末っ子」が増えたみたいな感覚です。立ち位置的には雪菜にとっては恋のライバルなのかもしれないですが、2人のやり取りを見ていると雪菜が本当にお姉さんになったように思えます。カス子ちゃんは「Ⅳ」からの新キャラクターなんですが、すでに作品へのなじみっぷりがすごい(笑)。
──3体の真祖たちも「Ⅳ」で本格的に動き出しますね。
三雲 「ストライク・ザ・ブラッド」に出てくる吸血鬼はステレオタイプなイメージからは脱却させたいという思いがありました。太陽の光が燦々と降り注ぐ青空の下で活動しますし、イメージカラーも血のような赤や黒ではありません。3体の真祖たちについては、とにかく長い時間を生きている連中ですから「退屈が大嫌い」で、人生をエンジョイしているんです。もちろん、底知れない恐ろしさや不気味さは纏いつつも、愛着をもってもらえるようなキャラクターになっていれば狙い通りですね。
──ちなみに、今後の「ストライク・ザ・ブラッド」について、何か具体的な展望などはあるんですか?
三雲 原作は完結しましたが、これからも古城や雪菜の物語は続いていくんだと感じさせるラストになっています。読者の皆さんが、自由にこれからの古城たちについて想像していただくのもいいですし、私自身も外伝などで、また彼らの活躍を描いていけたらなという思いはあります。直近ではOVAの特典用の短編も書きますしね(笑)。「Ⅳ」の2巻に収録されている書き下ろし小説は、「雪菜とカス子の番外バトル」みたいなイメージで個人的にはとても楽しく書かせていただけましたので、ぜひ読んでください! 特典の書き下ろしは、なるべく収録話の物語や登場するキャラクターとリンクさせるように気を使っています。なのでアニメ本編と合わせて読んでいただけたら、より楽しめる作りになっていると思いますよ。
お互い、気になっていることを質問!
──せっかくですから、お互いに質問などあればこの機会にぜひ。
種田 雪菜というキャラクターができあがった経緯や、きっかけのようなものがあればお聞きしてみたいです。
三雲 「ストライク・ザ・ブラッド」の企画を練っていたのは2010年頃なんですが、実はその頃って、雪菜のような、主人公を絶対的に信頼して肯定してくれるヒロイン像って、あまり流行りではなかったんです。雪菜は、アニメでいうとすでに1話の段階で古城に心を許してくれます。すぐに打ち解けてともに試練に立ち向かっていくという構図にしたかったので、主役の2人を無駄に対立させて読者にストレスを与えるような展開にはしませんでした。そのほうがきっと喜んでもらえるだろうという思いから、彼女の性格設定はできあがっていきました。今の世の中では、逆にそういったヒロインが登場する作品が主流になっていますが、ある意味うまく時代の波に乗れたのかなという自負はあります。
種田 雪菜は作品の中でも特に愛されているので、先生の狙い通りだったんですね(笑)。
三雲 では、私のほうからも1つ質問が。「ストライク・ザ・ブラッド」のキャラクターの中で、種田さんが雪菜以外で演じてみたいと思われるキャラクターは誰ですか?
種田 うーん……ラ・フォリアですかね。あの奔放さは雪菜とは真逆ですから。ヒロインの中では、個人的には一番ブッ飛んでいるキャラクターだと思っています。敵にも物怖じせずに堂々と渡り合ったり、セクシーなシーンでも躊躇がなかったり。気位の高さと奔放さは演じると楽しそうだなと思いますが、大西沙織ちゃんが完璧に演じられているので、彼女のラ・フォリアには絶対に敵わないなって思います(笑)。
三雲 ラ・フォリアは、いろんな側面を持っているキャラクターなんですよね。王女という立場ですから、マキャヴェリズム的な思想もあって、少しほかのキャラクターとは異なった倫理観を持っているんです。彼女はファンからも人気があって、出番が少ないと「もっとラ・フォリアを出してくれ」という要望をいただいたりします(笑)。ただ、彼女をすべての現場に登場させると、物語上の問題点があっさり解決してしまいそうで……なかなか(笑)。
──最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
種田 本当に長い間「ストライク・ザ・ブラッド」という作品に、姫柊雪菜というキャラクターで参加させていただけて……今も変わらず雪菜を演じられていることが何よりもうれしいです。とてもクオリティの高いファンタジー作品ですので、もっとたくさんの人に作品のことを知ってほしいです。私も「ストブラっていいよ!」と自信を持って布教していきますので……まだ接していないという方も今から作品に触れても遅すぎるということはありませんから、原作とともにアニメの完結まで見届けてもらえるとうれしいです。
三雲 本当に長いシリーズになりました。ここまで続けさせていただけたことについて、支えてくださった読者の皆さまに感謝です。どうか最後まで、古城と雪菜の活躍を見届けてください。よろしくお願いします!
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