自分がマンガを描いていることが信じられないし実感もありません
──ではここからは虎井先生についてのお話を伺えればと思います。マンガ家を志したきっかけを教えてください。
もともとイラストレーターを目指していてマンガ家というのは考えていませんでした。イラストのお仕事をさせていただいているときに、TLマンガで連載をしないかとお声がけをいただきました。正直イラスト仕事の延長として、軽い気持ちで受けさせていただきました。マンガならたくさん絵を描くことになるし練習になっていいな、なんて……。でもやってみたらこれがもう大変で。マンガになるとイラストで描いていた一枚絵を1ページの中に何個も描かなきゃいけないんですよね。それだけで仕事量一気に10倍です。さらに毎月お話考えて、セリフ考えて、コマ割り考えて、ネーム描いて、下描きして、ペン入れして、ベタ塗って、トーン貼って、仕上げして……正気の沙汰じゃないですね。マンガ家さんすべてを心底尊敬しています。
──ストーリー作りから作画まで、基本的に1人で全部やる大変なお仕事だと思います。
そうやって毎日毎日休む暇もなく必死になっているうちにいつの間にか今に至ります。いまだに自分がマンガを描いていることが信じられないし実感もありません。
──ちなみに絵を描くのとお話を考えるのは、どちらが好きですか?
実はどちらもそんなに好きじゃないですね……大変なので(笑)。絵も色塗りが好きで描いていたのでマンガを描き始めてからは年に数回しか好きな作業がないです。でも自分が面白いと思って描いている作品なので、できあがったマンガを読むことは大好きです。そしてそれを同じ感性で面白いと言ってくれる読者さんがいることがうれしくて描き続けています。
──これまでのマンガ家としての活動の中で最もうれしかった出来事、逆にとてもつらかった出来事はなんでしょうか。
やっぱり読者さんから愛のこもったご感想をいただけることが一番うれしいです。そしてそれが編集部さんに伝わって、アニメ化やCD化などメディア化していただけたときは最高の気持ちになります。自分だけじゃなくて応援してくださる読者さんの気持ちも報われるような気がして誇らしいです。つらいのは心ない言葉を受けることも多少なりともあることですね。言われたことよりも、そういうことを言ってしまう人がいるという事実がとても悲しいです。ただこの作品を好きだと感じてくれる人は、人を傷つける言葉を言わない、言わないようにしようと努力している人だと思うので、そういう人たちの支えがあることを忘れないようにしたいです。
読者さんの目を疲れさせない画面を目指しています
──過去作の「お見合い相手は教え子、強気な、問題児。」はアニメ化もされましたが、TLならではの魅力や面白さはなんだと思いますか?
TLの魅力はハマったキャラのHシーンを見られるところですね(笑)。私は好きなキャラに対して、この人どんなふうに好きな子抱くんだろう……と妄想する癖があるんですが、公式でそれが見れることなんてないですからね。TLはそれが見れる(笑)。
──なるほど(笑)。では逆に難しいなと感じるところはどこでしょうか。
難しいのはとにかくTLは制限が多いというところです。毎話Hシーンが必要なのでそれを踏まえた話作りをしなければいけません。これが本当に本当に大変です……。
──「TL」と明言してる以上、読者もHシーンは期待しますからね。ではTLを描くうえでご自分に課していること、こだわり、ルールなどがありましたら教えてください。
こだわりが強いほうなのでいろいろあるのですが……一番は読者さんに読みやすく、わかりやすく、という部分です。独りよがりにならないように、常に読者さんの目線で作品を見られるように気をつけています。絵も特別うまいわけでもセンスがよいわけでもないので、必要以上には描き込まずできるだけシンプルでわかりやすく、読者さんの目を疲れさせない画面を目指しています。
──これは難しい質問かなと思うのですが、一般向けの作品とTLの一番の違いはなんだと思いますか?
本来はもっとテーマとして大きな違いがあると思うのですが、私の中ではHシーンがあり、それが詳細に描かれるか描かれないかの違いだけです。
──ありがとうございます。では最後に、虎井先生のファンの方にメッセージをお願いします。
いつも本当にありがとうございます! ここまでやってこられたのはすべて読者の皆様の支えがあってこそです。私はがんばるのも、がんばってと言われるのも大好きです。これからも楽しんでいただける作品をお届けできるように精一杯がんばりたいと思いますので、ぜひこれからも応援よろしくお願いいたします!
プロフィール
虎井シグマ(トライシグマ)
マンガ家、イラストレーター。「その警察官、ときどき野獣!」を毎月連載中。同作は2021年に累計100万部(電子含む)を突破した。代表作は彗星社より全5巻で刊行された「お見合い相手は教え子、強気な、問題児。」で、同作は2017年にアニメ化を果たした。