平凡なOLのひよりと、警察官である熊野のカップルを描く「その警察官、ときどき野獣!」最新5巻が、1月28日に一迅社のTLレーベル・LOVEBITESより発売された。平和な街に住む平凡なOL・小牧ひよりは、ある日トラブルに巻き込まれ腕を骨折してしまう。そこに偶然居合わせた警察官の熊野啓吾は、責任を感じ同居してひよりをサポートすることに。警察官だからと安心していたひよりだったが、熊野は理性を抑えきれなくて……。
コミックナタリーでは5巻の発売に合わせ、作者の虎井シグマにメールインタビューを実施。「その警察官、ときどき野獣!」を描くことになった経緯や、TLを描くうえでのこだわり、またマンガ家になった理由など自身のキャリアについても語ってもらった。
取材・文 / 増田桃子
熊野くんは外見も内面も完全に私の個人的な好きを詰め込んだキャラ
──まずは「その警察官、ときどき野獣!」を描くに至った経緯を教えてください。
ベースとなる話自体は、実は他社でうまく伝えきれずボツになった案でした。ただ自分としては面白くなると思っていたし描きたかったのもあり、一迅社さんにお声がけいただいて今の担当さんに「こういうのが描きたい」と言ってみたところ、二つ返事でOKをもらい描かせていただくことになりました。最初は普通に会社員同士だったんですが、職業ものもいいねという話もしていたので、熊野くんの性格や話の設定にうまく作用しそうな警察官にすることにしました。結果、いろんな展開がどんどん浮かぶようになり大正解だったと思います。
──警察官の熊野は、無愛想で取っ付きにくそうに見えて、ひよりのことを溺愛している“肉食警察官”というキャラクターですが、どういった経緯で作られたのでしょうか?
熊野くんは外見も内面も完全に私の個人的な好きを詰め込んだキャラにしました。無口、熊系、武士口調、天然、ムッツリとあまり女性ウケしないという判断なのか、複数の他社さんで却下され続けたキャラだったんですが、今の担当さんなんでも描かせてくださるので……(笑)。おかげで私の考えた最強のキャラクターにできあがりました。
──そんな熊野にとても愛されているヒロインのひよりですが、普通のOLに見えて、複雑な過去を持つキャラクターです。ひよりの設定や性格、ビジュアル面など、どんなところにこだわりましたか?
ひよりは話の設定上守ってあげたくなる女の子にする必要がありました。弱いから守る、ではなく、愛しいから守る、そう思ってもらえるキャラクターにできていたらいいなと思います。私自身彼女には幸せになってほしいと心から思っています。
──虎井先生がキャラクターを考えるうえで、特に心がけていることはなんでしょうか。
物語ありきでキャラを考えるので、話の展開上こういうキャラがほしいなという感じで作っています。あとは読者さんに覚えてもらえるように、覚えやすい特徴や属性をつけています。それを決めてしまえば後は肉付けするだけなので、キャラ作りはあまり悩まず作っています。苦労するのはこの作品に限らずなんですが、メインキャラじゃない悪者ですね……外見や口調何から何までどう表現していいのかわからず、毎回悩みながら描いています。
スピンオフをやるなら夏樹を幸せにしてあげたい
──特にお気に入りのキャラクターを1人挙げるとしたら誰ですか?
熊野くん以外なら、4兄弟の末っ子四葉です。推してます。単純にかわいい。あと糸目なので描くのが楽です(笑)。描いていて楽しいのは、クマ化しているときの熊野くんです。何させてもかわいい。全部のコマをクマにしたいくらいです。
──逆に描くのが難しいと感じるキャラクターはいますか?
難しいのは圧倒的に鷹尾先輩です。タレ目も髪型も全部難しくて安定しません……。一応設定上はイケメンということで描くのに気も使うしその割にイケメンにならないし……描くたびに後悔させられています。あ、描きにくさを除けば鷹尾先輩は大好きです(笑)。
──読者から人気のあるキャラクターは誰でしょうか。
ヒーローということでやっぱり熊野くんが一番人気だと思います。それ以外だと、私に届く声の範囲ではあまり偏らずそれぞれのキャラに好きと言ってくださる方がいるなという印象です。いろんな系統のキャラを用意できたということかなと思うのでうれしいです。ただ熱量でいうと旭さんが強い気がします(笑)。
──私も旭さん好きです(笑)。ではもし同作の登場人物の中で、ひよりと熊野以外を主人公にしたスピンオフを描いてほしい、と言われたら誰を主人公にしたお話を描いてみたいですか?
夏樹を幸せにしてあげたいです。巨乳お姉さんにドロドロに甘やかされてほしい(笑)。弟ズのそれぞれの恋愛も気になります。機会があれば本編やおまけで掘り下げるかもしれません。
──これまでのエピソードの中で、特に印象に残っているシーン、エピソードを3つ挙げるとしたらどれでしょう。
1巻のラスト、そして5巻のあのシーンです。ここを境に2人の関係性が大きく変わる部分だからです。
──どちらもひよりの抱えている問題に関するエピソードですね。
あとは3巻の夏祭りのエピソードです。つらくて泣きながら描きましたが、複数のキャラにとって後々にも繋がる重要なエピソードになっています。
──「その警察官、ときどき野獣!」を描くうえで一番悩んだこと、連載中に難しいと感じたことがあれば教えてください。
扱っているテーマが重いので、伝えたいことが間違った形で伝わってしまわないように慎重に考えています。ですが、すべての方に思う通りに受け取ってもらうことは不可能なので、難しいなと感じます。