ジャンプスクエア(集英社)にて連載されている群千キリ「選択のトキ」は、性別を持たない宇宙人のトキと、ひとりぼっちの男子高校生・光晴が織りなす青春物語。作者の群千は「ジャンプスクエアの読み切りコンペで落ちたことがない」「スクエア作家や編集部が驚くほど1年で画力を向上させた」など逸話に事欠かない新星だ。
コミックナタリーは「選択のトキ」1巻の発売に合わせ群千にインタビューを実施。ジャンプスクエアでデビューするまでの裏話や、「選択のトキ」執筆の経緯、画力向上の秘密などについてたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 宮津友徳
「選択のトキ」
友達か恋人、どちらかひとつ手に入るとしたら──
高校2年生の光晴はある日、カーマイン星からやって来たという宇宙人のトキと遭遇する。聞けばカーマイン星人は生まれたときには性別がなく、なりたい性を自分で選べるという。
トキと出会ったのと時を同じくして、長年付き合ってきた幼なじみの男女2人と絶縁することになってしまった光晴。ひとりぼっちになってしまった光晴の複雑な心境を見抜いたトキは、自身の性別を光晴に選択させ、彼の友達か恋人のどちらかになると持ちかけるが……。
キャラクター
守屋光晴(もりやみつはる)
高校2年生の男子。もともと友達が多いタイプではなく、唯一懇意にしていた幼なじみの源太とめぐみが付き合い始めたことから、3人でいるときもどこか居心地の悪さを感じながら過ごしている。
トキ
カーマイン星からやって来た、現時点では性別のない宇宙人。カーマイン星人は15歳を迎える前に自らで性を選ぶ「性の決定権」を所有している。選択した性別になるために必要な材料を集める目的で地球を訪れた。
群千キリ インタビュー
持ち込みをしては怒られて帰ってきた
──群千さんは「選択のトキ」が初連載作ですね。まずはデビューの経緯を教えてください。
もともとデザイン系の専門学校に通っていたんですが、学校が楽しくなくなってしまって。「学校の授業より、もっと楽しいことをやろう!」と、4年くらい前にマンガを描き始めたんです。それで自分が思い当たる出版社にはほぼすべて持ち込みをしてみたんですが、どこに行っても怒られまくって。
──えっ、怒られる?
「これはうちの雑誌向きじゃないね」みたいなことを結構言われたような気がします。行っては逃げ、行っては逃げという感じでした(笑)。
──ちなみにその頃はどういった作品を描かれていたんですか?
バトル中心の作品ばかり描いていましたね。持ち込んではいないのですが、初めて描いたのは不動産屋を題材にしたバトルもので、家主や部屋を借りた人間が戦うという内容でした。
──初っ端から変わった設定の作品を描いていますね(笑)。いろいろな編集部に持ち込んで、最終的にジャンプスクエアに?
最初はスクエアは高嶺の花だと諦めていたんです。でも色々な持ち込み体験をした上で「最後は本命に出してみよう」と思って。当時は「持ち込みって怖いな」という考えに陥っていたので、スクエアにはコスプレを題材にした「レイヤーコールミー」という作品を描いて、投稿の形で出しました。
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マンガで嘘をつくと面白くない
- 群千キリ「選択のトキ①」 / 集英社
高校2年生の夏休み。ある日、自転車に乗っていた光晴は宇宙船と衝突し気を失ってしまう。目を覚ますと、目の前にはカーマイン星のトキと名乗る美しい宇宙人が座っていた。カーマイン星人は生まれた時には性別がなく、性を選ぶために地球を訪れたという。そして、その選択を光晴に任せようとする。トキを男「友達」にするか女「恋人」にするか、選択と青春の日々が始まる…!
- 群千キリ(グンチキリ)
- 千葉県出身。ジャンプスクエア(集英社)が主催するクラウン新人漫画賞の第30回で「レイヤーコールミー」が佳作を受賞。「とみとバラ」がジャンプSQ.CROWN 2016 WINTER(集英社)に掲載されデビューを果たす。その後「レイヤーコールミー」のほか読み切り「スリーサイズ」「Xの中で戦う」をジャンプスクエア、ジャンプSQ.CROWNで発表。2017年よりジャンプスクエアで「選択のトキ」を連載している。