プライベートでの和装事情
──鈴木さんは、プライベートでも着物を着られることはあるのでしょうか。
家の中で自分の着物を羽織って過ごすこともありますし、和物の舞台のときは自分の着物を楽屋に持ち込んで、サッと着替えて過ごすことが多いです。和装を着ていたほうが、本番のキャラクターの所作に移行しやすくて。着物を着ると無意識にスイッチが切り替わるんですよね。帯を締めた瞬間に、圧迫もあるのですがおへその下あたりの丹田にグッと力が入り、背筋がピンと正されるような感覚があります。また、本番用の衣装の襦袢などを着た状態で待機しているときに、上から自分の着物を羽織っておけば、大切な衣装が汚れたり着崩れたりするのを防げるんです。
──役づくりの一環であり、機能面でのメリットもあるんですね。「爛漫ドレスコードレス」を読まれて、プライベートで着物を着て出かけてみたいというお気持ちは芽生えましたか?
はい。僕は仕事で着物を着る機会は多いのですが、実はプライベートで着物を着た状態で外を出歩いたことは一度もなくて……。なので、「爛漫ドレスコードレス」を読んで、着物を着てお散歩してみたいなと思いました。
──お散歩となると、たくさん歩くなら作中のようにスポーツサンダルを取り入れたコーディネートもよさそうですね。
もちろんサンダルなど、履き慣れているもので行ったほうがお散歩中に疲れないというよさもあります。でも、僕の場合は最近お芝居で下駄を使い、MY下駄を手に入れたので、下駄でお散歩に行きたいなと。というのも、履物は履き続けて自分の体になじんでいくことで、「履き慣れていくよさ」がわかったりするんです。
──あえて和装ならではの履物を選んで、体になじませていく楽しさがあるのですね。
はい。最初に下駄を履いたとき、立ってバランスを取ることはできても、走り出しの1歩目が難しかったんです。どうすれば下駄を履いて勢いよく1歩目を飛び出せるか、履き続けて検証して導き出しました。そうやって身につけ続けることで、自然と自分の体に合ってくる。そうやってなじんでいくプロセスを、プライベートでも味わいたいですね。
着崩れすら芝居に活かす
──着物を含めた和装をしているときに、意識している所作などはありますか?
胸を張ることは大切です。あとは、歩くときに手を振りすぎないこと。軽く振るか、ほぼ振らないくらいが一番きれいに見えるとされています。優雅に見せたいのであれば、自分が思っている以上にゆっくり歩き、ゆっくり行動するのがきれいな所作だと思いますね。
──舞台での激しい殺陣となると、きれいな所作を保つのは難しそうですね。
演じるキャラクターのバックボーン次第ですね。昔の人でも、着物を着ているからといって全員が所作を気にするわけではありません。羽織を着ず着物に帯を結ぶだけの着流しスタイルで、どうでもいいやという感じでわざと着崩して戦う人物もいます。
──殺陣の中で着崩れてしまった場合は、どう対処されているのでしょうか。
実際に戦ったら確実に着崩れるので、戦いが終わった後でその人物が「どう直すか」を考えます。大雑把な人物なら簡単にサッと捌けていけばいいし、きっちりしている人物なら、しっかりと着崩れを直してから立ち去る。そうすることで、どういう人物なのかがより見えるようになります。
──衣装スタッフの方も、着崩れを防ぐ工夫をされているんですか?
衣装さんが「こう見せたい」というプランやこだわりのポイント、複雑な装飾があるので、一番いい形で見せていただけるように着付けていただきます。激しい動きがある場合も、できるだけ着崩れないように仕掛けを作っていただくことが多いです。例えば、着物の合わせの部分に1本針を入れて、糸でギュッと締めていただいたり。そうすることで、着崩れも最小限になります。これは日常で着物を着る方にも、少しの工夫として参考になるかもしれませんね。
「爛漫ドレスコードレス」で着物への一歩を
──最近は、若い世代の方々がSNSで自由な着物コーディネートを発信している風潮もあります。和装になじみのある鈴木さんから見て、こうした広がりをどう思われますか?
「着物の幅が広がっていく」というのは素晴らしいですよね。SNSという拡散力のある現代だからこそ、着物文化にいろんな感銘を受けて、「これ、いいな」と思ってくれた人が発信して、コミュニティが増えていくのは、とってもいいことだと思います。僕自身の経験でも、2.5次元舞台に刺さってくださる方がSNSで拡散してくれて、好きな人たちが集まるコミュニティができ、ファン同士で友達になり、さらに広めていただける……そういういい循環を実感してきました。着物も舞台も、1人が熱量を注げる時間は限られていると思うんです。だからこそ、文化を継承していく必要がある。感銘を受ける人を1人でも多く増やしていけば、自分の代ではないかもしれないけれど、いずれ花開く瞬間が絶対に来るはずです。
──このインタビューを読んで「着物を着てみたい」と思った読者に向けて、着物を楽しむためのアドバイスをお願いします。
「爛漫ドレスコードレス」を読んでいただければおすすめのアドバイスが凝縮されているのですが(笑)、僕から提案するとしたら、舞台の観劇など「目的を作って着てみる」ということでしょうか。最近、ご自身の好きなキャラクターのテーマカラーやモチーフを着物のコーディネートに取り入れて観劇に来てくださるお客様が増えているんです。出演している側としても「こういう楽しみ方もあるんだ!」とうれしくなります。着物は目立つこともあり、そこから会話に発展して新しいお友達ができたというお話も聞いたことがあります。まずはそういったイベント事やお祭りから始めてみて、そこから「何でもない日」に着て出かけるよさを知っていくのもいいんじゃないでしょうか。
──まずはきっかけを作ることが大切だと。
「一歩踏み出してみる」ことは大切です。いきなり着物を揃えることにハードルの高さを感じるのであれば、それこそ「爛漫ドレスコードレス」を読んでいただくという一歩を踏みだしてほしいです。若い方たちに向けて着物のよさを発信しつつ、各世代が改めて着物について考える機会になる、全世代にお勧めできる作品だと思います。この作品をきっかけに、着物文化がどんどん盛り上がっていってほしいと思います。
プロフィール
鈴木拡樹(スズキヒロキ)
1985年、大阪府生まれ。2007年に放送されたTVドラマ「風魔の小次郎」(麗羅役)でデビュー。2008年に上演された「最遊記歌劇伝 -Go to the West-」(玄奘三蔵役)で初主演を務めた。以降、「舞台『刀剣乱舞』」シリーズ(三日月宗近役)、「2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』」(源蒼役)、舞台「マイホームヒーロー」(鳥栖哲雄役)、舞台「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(鬼太郎の父役)などを務め、舞台を中心に活躍。映画の日本語吹き替えやナレーションを担うなど、幅広く活動している。
鈴木 拡樹/Hiroki Suzuki - Awesome Inc. 株式会社オウサム
衣装協力
男の着物 藤木屋
03-5830-6355
東京都台東区東上野5-5-9
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期間:2026年3月25日(水)~4月7日(火)
実施書店:コミックシーモアほか
対象
第1話~9話:無料
第10話:10円
第11話:半額
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