5月24日に全国公開される映画「プロメア」は、「天元突破グレンラガン」「キルラキル」を手がけた監督・今石洋之、脚本・中島かずきがタッグを組んだオリジナル作品。アニメーション制作をTRIGGERが務め、松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人というビッグネームがメインキャストとして出演することでも話題を集めている。
本作の公開を記念し、コミックナタリーでは今石、中島へのインタビューを実施。「第一希望だった」と話す3人のキャスティング理由や、TRIGGER作品のファンはもちろん「老若男女が観られる映画」だという本作の見どころなどを語ってもらった。また制作現場にも潜入し、3DCGチェックの様子をレポート。キャラクターデザインに留まらず、特徴的なカラーリングの手綱を握るコヤマシゲト、パンチのあるアクションシーンを実現した3Dディレクターの石川真平の証言も交え、本作で行なわれているチャレンジの数々を紐解いていく。
[P1~2]取材・文 / 粕谷太智 撮影 / 星野耕作
[P3]文 / 野口尚子 撮影 / 野口尚子、柳川春香
今石洋之(監督)×中島かずき(脚本)インタビュー
最初はジュブナイルものがやりたかった(中島)
──まずは本作を製作するに至った経緯から教えてください。
中島かずき 今石監督と一緒に制作した「キルラキル」が終わったときには、もう次の作品のお話をプロデュースサイドからいただいていまして。
今石洋之 そうでしたね。終わってすぐくらいに、次は何をやろうかという話が出ていました。
中島 そのときにはすでに劇場作品というのも決まっていたので、内容よりも制作が先にありきという感じでした。ただそこから内容が決まるまでに時間が掛かったんですけどね。
──では作品のテーマはいつ頃決まったのでしょう?
中島 最初はいろんな案が出ていたんです。僕はジュブナイルものがやりたくて、それこそアメリカの3Dアニメ映画「ヒックとドラゴン」みたいな。あんな感じはどうだろうとその方向を探っていたんですね。結局それは形にはならなくて、やっといけるなと思ったのが2年前。そこから今のような炎をテーマにしたアクションものに落ち着いたという感じでした。
──「ヒックとドラゴン」はドラゴンと少年の友情を描く作品ですよね。炎を操る人種〈マッドバーニッシュ〉との激しいアクションも描かれる現在の「プロメア」とはかけ離れたもののように感じます。
中島 今石さんとはお互い手の内がわかっているだけに、新しいものをどう作るか、今まで培ったものをどう出せるか、そのバランスに苦労しました。
希望が全部通った! すげー!(中島)
──今回、おふたりがタッグを組む新作に松山ケンイチさん、早乙女太一さん、堺雅人さんという劇団☆新感線の舞台経験者が出演されるとの発表は大きな話題になりました。
中島 キャスティングの相談を受けたときに、僕のほうから可能であればこの3人にお願いしたいという希望を出しました。
──中島さんの中では、脚本を書いているときから3人のお名前がすでに頭にあったのでしょうか?
中島 アニメだとキャスティングのかなり前に脚本を書かなくてはいけないので、当て書きというわけではないんですが。昔から彼らとは一緒に仕事をしていましたし、主人公のガロとその宿敵・リオの会話のやり取りは、僕が脚本を書いて松山くんと早乙女くんに出演してもらったドラマ「ふたがしら」に近いものがあるなと書きながら思っていました。ガロの憧れるクレイも堺さんだったら面白いなとぼんやりしたイメージがあって。
──確かに「ふたがしら」でも、松山さんが陽気で豪快、早乙女さんが冷静沈着な頭脳派と真逆の性格で、本作のガロとリオを彷彿とさせます。監督は提案を聞いてどう思いましたか?
今石 やっぱり僕も中島さんのセリフを読める人、その脚本を芝居としてやれる人というのが理想的だなと思っていまして。今回は映画ということもあり、劇団☆新感線の舞台の経験者で選ぶとこの3人だよねというのは中島さんとも話して同じ考えでした。
中島 僕の脚本にはやっぱり癖があって、そのリズム感をわかってくれている人にやってもらいたいという思いがありました。もちろん演技の素晴らしい声優さんもいっぱいいるんですけど、アニメのアフレコに慣れているアドバンテージと、僕の脚本に慣れているアドバンテージで考えると、どちらも同じじゃないかなと。そうなったときに異化効果みたいなことも含めて今回のようなキャスティングのほうが面白いと思ったんです。
今石 それで、とりあえずオファーしてみようとなって(笑)。聞いてみたら通ったという。
中島 本当に第1希望が通ったっていう感じですよね。希望が全部通った! すげー!って言いながら喜んでね(笑)。
──制作側からしても相当な驚きだったのですね。中島さんの中で今回3人の演じる役はどういうキャラクターでしょう?
中島 今まで彼らに書いてきたキャラクターのある種の集大成みたいなところがあります。ただ今回はアニメなので、生の芝居とは違うことをお願いすることになるし、今までやったことのない芝居もやってもらう。それを彼らがどのように演じるかは僕自身、非常に興味がありました。
──実際にアフレコをご覧になっていかがでしたか?
今石 生の舞台をやっている人たちのパワーみたいなのものがあって、芝居の圧がすごいんですよね。僕はその迫力ある演技を画にするっていう仕事もあるので、アフレコを聴いているときから、この声に負けない画をどう作るかっていうところばかりを考えていました。そういうことを考えさせられるくらい芝居そのものに違和感とかはまるでなくて、むしろこちらの想像を超えてくる芝居がどんどん出てくる。もうありがたいことしかなかったですね。
中島 リオとガロはずっと一緒に収録していましたし、3人のパートは堺さんも一緒に録っていたので、3人の空気感はそれこそ新感線の稽古を見ているようでした。アフレコ中も3人の芝居のキャッチボールが膨らんでいく様が見えてとても楽しかったです。想定以上の芝居を常に返してくれて非常に手応えは感じましたね。
──特に3人の演技に驚いたシーンがあれば教えてください。
今石 堺さんのシーンで、できあがっている画に対しての細かいリアクションの演技もほしいところがあったのですが、そんなに要求するのは難しいかなと初めは思っていたんです。でも堺さんが細かく質問してくださるので、アクションシーンの詳細な動きを1回説明したら、すぐに演技を全部バッチリ合わせてきて。
中島 そうだったね!
今石 1回説明しただけでですよ。もう本当にすげえなと!
──おふたりの表情からも3人のハマり役ぶりが伝わってきます。キャストでいうと稲田徹さん、檜山修之さんはじめTRIGGER作品常連のキャスト陣の演技には、もはや安心感がありました。
今石 そこは狙ったところではありますよね。新しい役者の方々といつもの人たちの安心感と、その両方があるっていうのがやっぱり新しさに繋がるかなと思っていました。
次のページ »
劇団☆新感線から受ける影響がだんだん濃くなってくる(今石)
2019年5月20日更新