ピッコマによるノベルコンテスト「ピッコマノベルズ大賞」が、今年で4回目の開催を迎えた。これまで審査通過で連載権獲得、年間最優秀賞作品には賞金1000万円、さらにはSMARTOON化も確約という太っ腹なふるまいを見せてきた同賞だが、第4回目となる今回は大幅リニューアルをしての展開となる。そこでコミックナタリーでは、ピッコマノベルズ大賞の運営陣にインタビューを実施。どういった点が変更となったのか、またリニューアルによる応募者たちの“旨み“とはなにか、たっぷり語ってもらった。
取材 / 大湊京香 文 / Honda Yuuki撮影 / 武田真和
2022年よりピッコマが開催する「ピッコマノベルズ大賞」は、未完のノベルを募集するノベルコンテスト。1次審査通過でピッコマでの連載が確約されるほか、最優秀賞作品には賞金1000万円が贈呈される。ピッコマの利用データをもとに選ばれたユーザー「読者審査員」が審査を担当することも特徴的だ。
第4回では募集テーマの設定変更に加え、新たな賞を設立。受賞タイミングの増加や副賞の拡充など、ガラッとリニューアルされる。これまではシーズンごとに個別の応募テーマが設けられていたが、今年からは応募期間中共通のテーマが設置され、年間を通して自分で選んだテーマで執筆できるようになった。またシーズンは4回に分かれているものの、テーマが共通なことにより任意のタイミングで応募可能に。テーマ数は第3回の約2倍となる15個が設定されているほか、ジャンルにとらわれない「チャレンジ枠」も新たに登場する。
さらに最優秀賞はそのままに、新たな賞として「シーズン賞」を創設。1シーズンあたり5作品、計20作品にそれぞれ賞金50万円が贈呈される。また最優秀賞、シーズン賞ともに、受賞作品にはSMARTOON化もしくはコミカライズを確約。これらのリニューアルにより、前回開催よりもスピーディな形で賞金が贈られ、より多くの読者へ作品を届けることができるようになった。
募集テーマ
少女・女性
- 西洋風ロマンスファンタジー
-
- 貴族令嬢のスカッと快進撃
- 貴族夫人の手腕発揮
- 子供ヒロインのヒーリングドラマ
- 溺愛
- 東洋風ロマンスファンタジー
-
- 和風シンデレラ
- 後宮ドラマ
- 現代
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- 大人の青春ロマンス
- ドロドロの愛憎劇
- 芸能界返り咲き
少年・青年
- 西洋風ファンタジー
-
- 最強主人公のやり直し
- 異世界ほのぼのスローライフ
- 現代ファンタジー
-
- ダンジョンで無双する
- ゲーム世界で成り上がる
- 現代
-
- どん底主人公のサクセスストーリー
- 学園アクション・ヤンキードラマ
※ジャンルやテーマに縛られない「チャレンジ枠」も用意。
賞金と副賞
- 最優秀賞(1作品)
1000万円+SMARTOON化 or コミカライズ確約 - シーズン賞(シーズンごとに5作品、計20作品)
50万円+SMARTOON化 or コミカライズ確約
その他特徴
- 審査通過でピッコマでのノベル連載確約。原稿料+作品収益をお支払い。
- 当落に関わらず読者審査員のレポートが到着。 ※応募規約違反作品を除く。
- 受賞作品に限らず人気作品は積極的にSMARTOON化およびコミカライズを検討。
- 連載作家にはピッコマノベルズ大賞を介さず新連載のチャンスを新たに設置。
応募期間
第1シーズン
- 募集期間
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2025年11月25日(火)~2026年1月20日(火)
- 結果発表
-
2026年3月中旬予定
第2シーズン
- 募集期間
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2026年1月26日(月)~3月23日(月)
- 結果発表
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2026年5月中旬予定
第3シーズン
- 募集期間
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2026年3月27日(金)~5月27日(水)
- 結果発表
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2026年7月末予定
第4シーズン
- 募集期間
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2026年6月2日(火)~7月28日(火)
- 結果発表
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22026年9月末予定
最優秀賞
- 結果発表
-
2027年2月頃
運営陣インタビュー
参加者はこの3人
青木伸吾(アオキシンゴ)
2021年入社、作品ソーシングチームのチーム長を経て、2024年にIP戦略室所属となり、ピッコマノベルズ大賞の運営責任者に就任。
長谷川香織(ハセガワカオリ)
2021年入社、IP戦略室配属。SMARTOON作品分析チームを経て、2024年よりピッコマノベルズ大賞運営に携わる。主にコンテストのプロモーションや応募テーマ設計を担当。
櫻井理沙(サクライリサ)
2024年入社、IP戦略室配属。入社当初よりピッコマノベルズ大賞運営に携わる。主に作品連載に関わる作家サポートを担当。
作家の声を実直に反映 テーマ数を2倍、応募期間を“通年”に
──第4回を迎えたピッコマノベルズ大賞ですが、改めてこのコンテストを開催する目的を教えてもらえますか?
青木伸吾 作家および作品の発掘、そして執筆活動の支援を目的としたコンテストになります。これらを前提として、ご応募いただいた作品はピッコマでのノベル連載はもちろんですが、ピッコマ独自の縦スクロール、フルカラーのマンガコンテンツであるSMARTOON化やコミカライズにも積極的につなげていきたいと考えています。
──第4回を開催されるにあたって、改めて説明しておきたいポイントはありますか?
青木 よく皆さん勘違いされているのですが、ピッコマノベルズ大賞は20話時点で未完結、かつ商業化されていない作品であれば、小説投稿サービスに掲載されている既存の作品でも応募可能です。割と見落とされがちなところなので、応募要項を改めて確認してもらえるといいかもしれません。
──大事なポイントですね。ではここからは、第4回のリニューアルポイントについて伺っていこうと思います。まずは募集テーマの数が前回の8個から15個へ、ほぼ倍になっています。なぜここまで増やしたのでしょうか?
長谷川香織 作家さんとのご縁を増やしたいという思いがあります。ご自身の得意ジャンル・テーマではなかった場合、そもそもコンテストに応募すらしてもらえない可能性も高いので、第4回では可能な限り多くのテーマを用意しました。募集テーマは、ピッコマで読者人気の高いもの、またあらかじめSMARTOON化やコミカライズを意識して設定しています。例えば今回は初めて「東洋風ロマンスファンタジー」ジャンルを設けました。
──ジャンルという大枠はありますが、肝心の募集テーマは「貴族令嬢のスカッと快進撃」や「異世界ほのぼのスローライフ」など、かなり細かく設定されていますよね。
長谷川 テーマは細かくした方が我々の求める作品を伝えやすいですし、応募もしやすくなるのではないかという考えで、より細かく設定させていただきました。また、ノベル連載作品を決めるシーズンごとの審査にはこれまで同様ピッコマ読者が参加するので、ピッコマ読者特有の好みを外さないためにも、自由なテーマにしすぎないことが必要だと思っています。各テーマにはどういった作品が欲しいのかをより明確にするため、詳細説明と推奨キーワードも設定していますので、合わせてぜひ参考にしてもらいたいです。
──募集テーマを細かく設定することで、もともと小説を書いたことがなかった人も手が出しやすいのかなと感じました。
長谷川 執筆未経験の方にも挑戦しやすいコンテストになればいいなと思っています。実際にピッコマノベルズ大賞で初めて小説を執筆された方、審査を通過しデビューした方も少なくありません。応募テーマ設定については、人によっては「創作の幅が狭そう」と思われるかもしれませんが、実際に応募作品を読むと本当に多種多様な趣向を凝らした作品が毎シーズン届いています。第3回開催時には、ピッコマノベルズ大賞の運営事務局公式noteで募集テーマを詳しく解説した記事を公開したのですが、応募者からもこの記事が参考になったという声が多かったです。ピッコマがこういう作品を求めている、という点は、コンテストを開催するうえで明確にしたほうがいいという判断ですね。
──応募期間が通年に変わったのも大きな変更点ですよね。
青木 「本当は応募したかったけど間に合わなかった」といった声はこれまでも多く届いていました。先ほどの長谷川の話にもある通り、数多くの募集テーマを設けて、かつ通年で作品を募集するほうが作家の皆さんも応募しやすいのかなと。募集期間が長いので、腰を据えて書いていただけるのもポイントだと思います。
櫻井理沙 実際、連載中の作家さんからも「実は前回応募したかったけど間に合わなくて」とか、「いつも自分はこの時期が忙しいから書けなかった」というお話を聞いていて、もったいないなと思っていました。年間を通していつでも応募してくださいと言えるのは、広く作品を募集したい私たちにとっても、作家さんにとってもいいことなのかなと思います。
受賞すれば2次利用確約、新たな「シーズン賞」は旨みたっぷり
──今回新たに設けられた「シーズン賞」はどういった経緯で生まれたのでしょうか?
青木 ピッコマノベルズ大賞では審査通過からノベル連載開始まではスピーディーに進んでいくのですが、受賞作品発表までの期間やSMARTOON配信までの期間が長かったことを課題に感じていました。シーズン1を例にすると、審査結果発表から受賞作品が決まる年間大賞発表まで1年、さらにSMARTOON化し配信するまでは早くても1年かかっていまして、そのため作品によっては、SMARTOON配信時にはすでに原作が完結しているケースがあって非常に勿体無いと思っていました。SMARTOONやコミカライズ作品が配信されると原作ノベルも注目を浴び、新しいお客様の目に触れる機会が増えるので、売り上げが大きく上がります。またIPとしての価値も上がるので、この機会をノベル連載中にどうしても提供したかったのが大きな理由ですね。また執筆活動のご支援という観点で賞金をなるべく早く作家さんにお渡ししたかったのも理由になります。
──年4回のペースでそれぞれ5つの受賞作品が決まり、さらに2次利用が確約されるコンテストはなかなかないですよね?
櫻井 似たような賞があっても、大賞だけ確約というコンテストが多いのではないでしょうか。
青木 確約や積極検討と記載はされているけれど本数の記載がなかったりしますよね。また各コンテストの基準もあると思うので仕方ない部分だと思うんですが、結果的に該当作品なし、ということもあるかと思います。ピッコマノベルズ大賞では、少なくとも最優秀賞とシーズン賞を合わせた計21作品のSMARTOON化もしくはコミカライズを確約します。そして受賞作品以外にもSMARTOON化とコミカライズに向いている作品があれば、以前からこのスタンスは変わってないんですが、積極的に作家さんへ声をかけていきたいと考えています。
──作家さんにとっては夢のある話ですが、必然的に審査する皆さんの仕事量が激増することにもなりませんか?
長谷川 はい(笑)。
櫻井 いやあ、そうなんですよね(笑)。
青木 作家さんと、ノベル業界全体の活性化につながればと思い、尽力します(笑)。
長谷川 審査をする我々も大変ですが、受賞された場合は作家さんのほうもかなり慌ただしくなります。SMARTOON化やコミカライズも同時並行で進んでいくので、原作が追いつかれないように、どんどん続きを書かないといけません。審査通過後からが本当のスタートというイメージですね。
櫻井 作品の連載に向けて設定資料を送ってもらったり、物語の先の展開を詳しく教えてもらったりする必要も出てきて、実務的なやり取りが増えます。しかもその間も原稿は書き続けないといけないから大変です。そういった苦労もあるんですけど、やっぱりSMARTOON化やコミカライズされた作品がいざ配信されたときの喜びは何にも代え難いと思います。我々は実際に作家さんが喜ぶ姿を見ているので。最新話が配信されるたびにご自身のSNSで宣伝してくださる人も多いです。
長谷川 作品を執筆する中で、キャラクターや世界観のビジュアルイメージってきっと作家さんの頭の中に無限に広がっていると思うんです。身長はこれくらいで、髪型はこんな感じで、こんな場所に住んでいて、とか。そういう想像がテキストから実際にビジュアル化されたときの喜びは本当にすごいんだなと作家の皆さんを見ていて改めて感じます。きっと執筆のモチベーションにもなるんじゃないでしょうか。
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