アニメ「ニル・アドミラリの天秤」|梶裕貴×木村良平インタビュー 読書好きの2人が語らう、本に宿る力

お互いに「隣の芝生は青い」な関係

──「ニルアド」における演技も含めて、お互いのお芝居に対する姿勢に関してはどう評価されていますか?

木村 僕はもともと梶くんの叫び声がすごく好きなんですよ。現役の声優さんの中でもピカイチだなってずっと思っていて。それが最近どんどん音乗りがよくなって、さらにバージョンアップしてる。

 全然その自覚はないですけど(笑)。

木村 あと僕は、特にアニメの芝居は、作品の世界に存在する人間としての生々しさと、アニメーションならではのデフォルメされた人間性というものを両立させるバランスも大事だと思っているんですが、役者って、どっちかに偏りがちになることが多いと思うんです。それは別にどっちがいい、悪いっていう話ではなくて、作品によっても演じ方が変わってくるんですが、梶くんは、そのバランス感覚が抜きん出て優れてるんですよ。それも年々磨かれていってるような気がしていて……あれってどうやってやるの?

 えっ? いきなり聞かれても自分じゃわからないな……(笑)。

──役によって実写のようにリアルに演じるか、アニメのキャラクターとしてデフォルメして演じるか、みたいな話ですか?

アニメ「ニル・アドミラリの天秤」より、「帝国図書情報資産管理局」通称フクロウのメンバー。

木村 ええ。それも絶対本人の中ではイメージして演じていると思うんですけど、そもそも持ってる性質みたいなものが、どっちにも偏ってない感じがするんです。それが声の説得力につながっているというか、ベテランの声優さんが持ってるような声の説得力を元来備えていて、それがどんどん強化されているから、すごいなっていつも思ってます。

 ありがとうございます。

──梶さんは以前「子役出身の声優はなんであんなに魅力的な演技ができるんだろう?」という発言をされていました。木村さんも子役出身ですが、やはり同じような気持ちを向けてらっしゃいます?

 その最たる例と言いますか。その発言をしたとき、頭の中に思い浮かべた数人の中に良平くんも含まれていて。「隣の芝生は青い」じゃないですけど、ずっと憧れの対象であり続けていますね。こっちこそ「あれどうやってやるの?」って聞きたいくらい。でも、そう羨んでばかりいてもしょうがないし、今良平くんが言ってくれたように、もし僕がそういうバランス感覚に優れているのだとしたら、それも自分の“ひとつの武器”として受け止められるようになったというか、別の魅力で勝負しようという気持ちにはなっていますね。

「良平くんはどの現場でも小説を片手に持ってる」

──先ほど木村さんがおっしゃったように「ニルアド」は本が重要なモチーフになっていますが、おふたりとも読書家ですよね。

 良平くんはそれこそ、どの現場でも常に小説を片手に持ってる印象がありますね。

──木村さんは、去年は読書会も開かれてますし。

木村良平

木村 そうですね。やらせていただきました。

 読書会?

木村 小学館さんの企画(小学館カルチャーライブ!)で、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を事前に参加者の皆さんに読んでもらって、感想や疑問に思ったところを送ってもらい、それについて俺が話したり、「蜘蛛の糸」を朗読したりするイベントをやらせていただいたんです。

 へええ。面白いね。

木村 すごく面白かった。

──木村さんが読まれるのは、小説が中心ですか?

木村 だいたい小説ですね。

 でも、こないだ演技論みたいな本を……。

木村 やめろやめろ(笑)。真面目みたいだろ。

 いやいや(笑)。真面目な本でしょ?

──どんな本なんですか?

木村 僕もある人に勧められて読んだんですが、海外の映画監督が役者との接し方を書いてる本があって。監督サイドが役者をどう見ているかについては、普段あまり考えたことがないので、すごく面白かったんです。あとそれを細谷(佳正)さんに薦めたら、めちゃくちゃ刺さってたよね。

 俺にも刺さったよ。ただ、細谷さんへの刺さり方が尋常じゃなかった(笑)。

木村 「いやあ、これ、ホントそうなんだよなあ! いやホントに、その通りだなあ」ってずっと言ってたよね(笑)。

お風呂で本読むの、いいよね

木村 梶くんはいつ本を読むの? 読書の時間をとるのって、難しくない?

梶裕貴

 そうですねえ。僕は、集中力が削がれてしまうのが嫌なので、仕事の合間にちょっとずつ読むというような読み方ができないタイプなんです。片手間に読んでも「あれ? どこまで読んだっけ?」とわからなくなってしまったり。だからある程度まとまった時間がないと読めないので、お風呂で湯船に浸かりながら読むパターンが多いかな。

木村 いいよね。お風呂場で読むの。

──木村さんは現場にも小説を持ってきていらっしゃるとのことでしたが、割とどこでも読めてしまうタイプですか?

木村 そうですね。学生時代は実家から学校までの通学時間が長かったので、電車の中でじっくり読むことが多かったのですが、今は隙間時間を利用して読むことが多くなりました。

──それ、超わかります。僕も実家から大学まで電車で片道1時間半くらいかけて通っていたので、めちゃくちゃ読書がはかどりました。

木村 そうそうそう。当時はすごくいいペースで読めてたなあって僕も思います。家で読めればいいんですけど、家だとどうしてもほかのことをしてしまって、なかなか読めないんですよね。それこそお風呂場に持ち込むくらいしないと。

木村良平イチオシの「朝の少女」

──ところで、過去に木村さんがオススメしていらした「朝の少女」(マイケル・ドリス著、灰谷健次郎訳)を先日図書館で借りて読んだんですけど、名著ですね。

マイケル・ドリス著、灰谷健次郎訳「朝の少女」(新潮文庫)

マイケル・ドリス著、灰谷健次郎訳「朝の少女」(新潮文庫)

木村 ホントにすごい本ですよね。うれしいです、読んでくださって。

 その本とはどうやって出会ったの?

木村 どうだったかなあ、母親にもらったような気もするなあ。たしかもう絶版のはずですが、図書館にはあるんですね?

──ありました。あるいは古本で探せば見つかるんじゃないでしょうか。

 どんな話?

木村 ネイティブアメリカンの少女とその弟が、非文明的な世界で成長していく話なんだけど、「人間になるとはどういうことか」みたいなすごく哲学的なことが親子の会話とか日常生活の中にちりばめられていて。それが平易な文体で書かれてるから、説教くささが一切ないの。もちろん単純に物語としても面白くて、描写自体は素朴なんだけど、だからこそ近くに感じられるというか、想像力を掻き立てられる感じ。もう、自分の想像力で自分が物語の中に引きずり込まれていっちゃうから、自分じゃ止められないみたいな(笑)。

 へええ、面白そう。探してみる。

木村 すぐ読めちゃうよ。児童文学でもあるから。

アニメ「ニル・アドミラリの天秤」
放送情報
  • TOKYO MX:
    2018年4月1日(日)より毎週日曜22:00~
  • サンテレビ:
    2018年4月1日(日)より毎週日曜23:30~
  • BSフジ:
    2018年4月3日(火)より毎週火曜24:00~
  • AT-X:
    2018年4月10日(火)より毎週火曜22:00~(リピート放送あり)
    ※初回は放送直前特番をオンエア
配信情報
  • dアニメストア:
    2018年4月8日(日)22:00より地上波同時配信
スタッフ
原作:「ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚」オトメイト(アイディアファクトリー)
監督:たかたまさひろ
シリーズ構成:金春智子
キャラクターデザイン・総作画監督:佐光幸恵
音楽:長谷川智樹
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:ゼロジー
キャスト

久世ツグミ:木村珠莉
尾崎隼人:梶裕貴
鴻上滉:岡本信彦
星川翡翠:逢坂良太
鵜飼昌吾:木村良平
汀紫鶴:鈴村健一
鷺澤累:櫻井孝宏

久世ヒタキ:村瀬歩
朱鷺宮栞:夏樹リオ
鴬地啓三郎:小林範雄
隠由鷹:緑川光
杙椰:宮下栄治
猿子基史:興津和幸
燕野太郎:榎木淳弥
四木沼喬:遠藤大智
四木沼薔子:眞田朱音
柾小瑠璃:高橋未奈美
葦切拓真:利根健太朗
笹乞藤一郎:石井真
雉子谷新:西田雅一
百舌山識郎:荻野晴朗
尾鷲英樹:桜木章人
ナレーション:下野紘

「ニル・アドミラリの天秤」壱巻
2018年6月29日発売 / DMM pictures
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梶裕貴(カジユウキ)
梶裕貴
1985年9月3日生まれ、東京都出身。主な出演作は「進撃の巨人」(エレン・イェーガー役)、「七つの大罪」(メリオダス役)、「僕のヒーローアカデミア」(轟焦凍役)など。
木村良平(キムラリョウヘイ)
木村良平
1984年7月30日生まれ。主な出演作は「東のエデン」(滝沢朗役)、「デビルズライン」(李ハンス役)、「イナズマイレブン アレスの天秤」(道成達巳役)など。