「夏目友人帳 漆」犬の会メンバーが座談会!松山鷹志、下崎紘史、岡村明美、知桐京子に“アドリブ会議”について聞いてみた (2/2)

神谷浩史と井上和彦はいいコンビ、ゆえに現場の雰囲気も和やかに

──アニメ「夏目友人帳」の中核をなすキャストの神谷さん、井上さんには、どんな印象がありますか?

知桐 和彦さんは、常に面白いことを言って現場を和ませてくださいます。それに対して神谷さんが鋭いツッコミをして、周りがさらに盛り上がる。そんなムードをいつも感じていますね。

松山 あの2人がやりやすい現場にしてくれているよね。ゲストで来る方も輪に入りやすい空気を作ってる。

下崎 確かに。「夏目」の現場は、待ち時間もみんなでよく無駄話をしていて、すごく和やかです。

岡村 和彦さんも神谷くんも、突然「このセリフを、こんなに優しい声色で言うんだ……!?」という瞬間があるんです。「もう、腰砕けちゃうんだけど!?」「夏目、好き……」という気持ちが高まってしまいます。

知桐 わかります(笑)。いつだったか、アフレコで神谷さんはまだ収録が残っていて、女性陣何人かで先に帰るタイミングがあったんですよ。神谷さんが集中して台本を読んでいらしたので、邪魔をしちゃいけないと、遠巻きから「お疲れさまでした」とみんなで声をかけたんですけど、神谷さんがパッと顔を上げて、大きく手を振ってくださって。わかりやすく言えば、ファンサをしてくれたことに「キャー!」と声を上げたくなるような瞬間でしたね。みんな我慢してましたけど(笑)。座長がそうして挨拶をしてくれたことがすごくうれしくて、「この人あってこその『夏目友人帳』だよな」と、ホクホクした気持ちで帰路につきました。

左から下崎紘史、知桐京子。

左から下崎紘史、知桐京子。

松山 神谷さんがしっかりとした芯を持っているから、和彦さんが遊べる。いいコンビだよね。

下崎 バランスがすごくいいんですよね。

松山 僕らが本線と関係ないところで暴れてばかりいるから、神谷くんには「松山さんね、僕らの仕事は笑わせてナンボじゃないんですよ?」と、ちょいちょい怒られてるんだけどね(笑)。

スタッフ でも神谷さんと井上さんは、取材の場で毎回必ず「中級の2人が“劇団犬の会”となって、いつも面白いことをやってくれる」と話してくださるんですよ。それで私たちスタッフの中でも犬の会への注目度がどんどん高まって、今日こういった企画が実現した部分もあるんです。

下崎 ええ、そうなんだ!

松山 “劇団中級”ね。ギャグも中級なんだよ。低級じゃ笑ってもらえないし、上級だと自分たちのハードルが上がるし、ちょうどいいよね。

岡村 あはは、うまい!(笑)

最近アニメを観始めた人にオススメしたい、あの話この話

──この記事が上がる頃には第7期も最終話を迎えていますが、第7期の中で特に好きなエピソードはどれでしょうか?

下崎 やっぱり5話「ちょびの宝物」は一番印象深いですよね。

岡村 私も第7期で挙げるならやっぱり5話かな。ちょびの正体が明らかになるという。

松山 夏目の妖怪に対する思いが、第1期の初めの頃からどんどん変わっていき、妖怪たちも夏目への愛情がどんどん芽生えてきて。そんなお互いの思いが織りなす、優しいお話だよね。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期5話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期5話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期5話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期5話より。

知桐 妖怪たちが白龍を一緒に探すと申し出たとき、夏目が「ありがたいんだけど……」と遠慮するじゃないですか。あそこで一つ目が「我らをこうして動かすのも夏目様のお力でしょう」って言うのがすごく泣けるんですよね。今話しているだけで、思い出し泣きしちゃいそうなくらい。

松山 そのあとに夏目が「ありがとう」と返すのもいいんだよね。1話丸々、妖怪たちと夏目のお話を描いてくれて、スタッフの愛情を感じたな。

下崎 演じていてすごく気持ちが入りましたよね。僕は第1話「破片は愁う」も印象深いです。全シリーズ、第1話ってめちゃくちゃ緊張するんですよ。一つ目と牛顔のやり取りのテンポ感やテンションがうまくいくかなと不安で。テストでうまく合ったときは「ああよかった」ってすごく安心します。それゆえに、第1話は毎回すごく印象に残りますね。

──ありがとうございます。では、「夏目友人帳」のことを最近好きになった方々に向けて、これまでの全シリーズの中で特に観てほしいエピソードをぜひ教えてください。

知桐 たくさんあるんですが、第2期1話の「奪われた友人帳」は、猫好きの方にぜひ観てほしいです! 私は猫を飼っていて、登場キャラクターの中ではニャンコ先生がフォルムを含めて大好きなんですけど、「奪われた友人帳」には黒ニャンコが出てきて、本当にかわいいんです! お話も感動的です。「夏目」はどのエピソードも自然とほろりとしてしまうし、1話完結型だからどこからでも入っていけると思います。そういえばこの間、第2期を観返していて、オープニングの構成にびっくりしたんですよ。「音楽の転調と同時に、映像にこんな工夫が凝らされていたとは!」と。ぜひ第2期を全話見てから、オープニングを観返してみてほしいですね。

岡村 私はさっきもお話しした第2期5話の「約束の樹」です。ヒノエとレイコの出会いが描かれるんですが、ヒノエがなぜレイコのことを大好きになったのか、レイコがいかに素敵な女性だったかを、ぜひ知っていただきたいですね。

下崎 僕は第5期11話の「儚き者へ」をオススメします。中級たちのせいで夏目が風邪を引いてしまい、中級たちが熱冷ましの薬草を探して奔走するんです。結局中級たちが集めてきた薬は意味をなさないんですけど(笑)、最後に白霧花が画面いっぱいに散る映像もすごくキレイだし、最後の一つ目のセリフも素晴らしくて。大好きですね。

TVアニメ「夏目友人帳」第5期11話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第5期11話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第5期11話より。

TVアニメ「夏目友人帳」第5期11話より。

松山 僕は、音楽朗読劇「SOUND THEATRE x 夏目友人帳~集い 音劇の章~」でもやった、第1期8話の「儚い光」。男性が年齢を重ねても結婚もせずに妖怪のホタルを思い続けるという、切なくていいお話なんですよね。「サウンドシアター」での桑島法子ちゃんと浜田賢二さんの演技も素晴らしくよかった。いまだに現場で浜田さんに会うと、「あのエピソードは本当に最高だったね」と話すんです。

「夏目友人帳」には詰め込まない優しさがある

──知桐さんはニャンコ先生がお好きだと話していましたが、ほかの皆さんは自分が演じているキャラクター以外に、特に好きなキャラはいますか?

松山 俺は塔子さん。「おはよう、貴志くん」と言うだけで、ちょっと色っぽいんだよねえ。

岡村 私も塔子さん! 塔子さんと滋さんが登場すると、すごく安心するんです。

下崎 僕は子狐です。めちゃくちゃかわいいですよね! 最近は全然出てこないので、また登場してほしいな。そんなふうに、少ししか出ていないのに印象に残るキャラクターが多いのも、「夏目」のよさですよね。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期1話より、塔子。

TVアニメ「夏目友人帳」第7期1話より、塔子。

TVアニメ「夏目友人帳」第1期7話より、子狐。

TVアニメ「夏目友人帳」第1期7話より、子狐。

松山 「夏目友人帳」はいい隙間がある気がする。観る人がスッと入っていきやすい間というのか……それは緑川先生のお力なんだろうなと思うけど、それを確実にいいアニメにしていくスタッフたちも、非常に優秀ですよね。第7期の今も第1期から変わらず、詰め込まない優しさを一貫して感じます。

──最後に、「夏目友人帳」とはご自身にとってどんな存在かを教えてください。

松山 本線ではないところで輝ける代表作……かな。

下崎 長くやっている作品なので、我が家のような存在です。毎回「ただいま」と言える、安心できる場所。その中の一員に入れていただけたことを、僕はずっと感謝しているんです。今後もずっと携わっていきたいですし、これからも末長く続いてほしいですね。

岡村 私にとっては、優しい気持ちに戻れる場所。色彩も含め、木漏れ日を浴びているような気持ちになるんです。台本を読むといつも心がほっとして、温かくなって。それは緑川先生のお人柄だと思います。

松山 すごく愛情深い作品だよね。先日、鳥取県の水木しげる記念館に行ってきたんです。水木先生も妖怪を通して、小さいものに対する愛情や、生きるということについてずっと描いてきた方。緑川先生と、万物への愛情のかけ方が似ている気がしました。「夏目」のそういう部分も、多くの人を惹きつけているんだろうと思います。

知桐 最初に「夏目」に関わり始めた頃、私はまだ声優を始めて1、2年目だったんです。なので同志というか、声優人生を一緒に歩ませてもらっている感覚があるんですよね。「夏目友人帳」という作品を通して学ばせてもらっていることがたくさんあるし、参加するたびに心が浄化されている気がします。私も夏目くんのように、いろいろなものに優しい気持ちを持てるようにしよう、と思わせてくれる作品です。

左から松山鷹志、岡村明美、知桐京子、下崎紘史。

左から松山鷹志、岡村明美、知桐京子、下崎紘史。

プロフィール

松山鷹志(マツヤマタカシ)

4月2日生まれ、東京都出身の声優、俳優。2017年にRIKIプロジェクトから青二プロダクションに移籍。声優としての出演作に「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(絵崎コロ助役)、「夏目友人帳」シリーズ(一つ目の中級妖怪役)、「鬼灯の冷徹」(ルリオ役)、「テニスの王子様」(越前南次郎役)など。

下崎紘史(シモザキヒロシ)

9月25日生まれ、富山県出身の声優、舞台俳優。尾木プロ THE NEXT所属。声優としての出演作に「夏目友人帳」シリーズ(牛顔の中級妖怪役)、「ヘタリア」(デンマーク役)、「魔入りました!入間くん」(カムカムさん役)、「来世は他人がいい」(稲盛颯太役)など。

岡村明美(オカムラアケミ)

3月12日生まれ、東京都出身の声優。マウスプロモーション所属。主な出演作に「ONE PIECE」シリーズ(ナミ役)、「夏目友人帳」シリーズ(ヒノエ役)、「ラブ★コン」(小泉リサ役)、映画「紅の豚」(フィオ・ピッコロ役)など。

知桐京子(チキリキョウコ)

9月13日生まれ、東京都出身の声優、舞台女優。尾木プロ THE NEXT、BQMAPに所属。声優としての主な代表作に「夏目友人帳」シリーズ(河童役)、「人造昆虫カブトボーグV×V」(天野河流星役)など。

取材協力

「夏目友人帳カフェ ニャンコ先生とある日のピクニック」
場所:東京・MAGNET by SHIBUYA109

コラボカフェ第2弾は、2025年1月よりMAGNET by SHIBUYA109ほかにて開催予定!